遅すぎた高校デビュー
変わるのはまず外見からだ。
いきなり中身を変えるのは難しいし…。
そしてこのタイミングでドラッグストア。
そうだ。ヘアカラー剤を買って、髪を染めよう。
僕の学校は基本自由だ。
染髪やピアス、私服登校も認められている。
まずはお洒落になろう。
髪もバッサリ切ってパーマもかけたい。
中学の時の服なんて捨てて、お洒落な服を着て登校したい。
変われるところなんていくらでもあるじゃないか。
―――いつもは直帰するはずが、僕は初めて寄り道をした。
なんだか心が踊った。
神様がチャンスをくれてる気がして。
よし。そうと決まれば、まずはカラーリング剤だ。
このドラッグストアは、地元にしては大きな店で、
カラーリング剤だけでも沢山の種類が置かれてある。
……どれにすれば良いのだろうか。当然髪を染めたことなんてないので、よく分からない。
逆に種類が多すぎて決められない。
茶色が無難だろうか。
いやでも変化をハッキリさせるには金髪なのかもしれない。
いやでも金髪にしたら、なんか調子に乗ってると思われそうだし、
怖い先輩とかに目を付けられそうだ。
そうやって四苦八苦しながら、数十分考え続けた結果。
結局茶色を買いました。
よし。次は美容室に行こう。
でもどんな髪型にしようか…。
かっこいいと思った芸能人の雑誌の切り抜きでも持っていき、
「この人みたいにして下さい!」
というべきだろうか
いや…でもそんなことやったことないよ…。
なんか勇気いるよなぁ…。
ヘアカタログの人はイケメンだから似合ってるわけだし。
あっそうだパーマはどうすれば
でも天パーみたいになったらどうしよう。
そもそも染髪も美容院でやるべきだったか?でも美容院代を少しでも安くしたいし。
でもなぁ―――それに――――これだと――――
――――――――――
四苦八苦しながらも、なんとかやることは全部やった。
全てを終えた頃には、夜の8時を回っていた。
髪も切り、パーマをかけて、服も購入。
そして、今髪を染め終わったところだ。
今月の小遣いはパーになったけど…。
自宅の洗面台の鏡に映った、自分の変わった姿を見る
あれ…?変わった…よな?
焦げ茶になった髪色
ミディアムに切り揃えた微妙にうねった髪。
ま、まぁ確かに大きな変化は無かったが、
ちゃんと変わっているはずだ。
「なに自分の顔真剣に鏡で見てんの。気持ちわる」
よそ行きでは決して出さないような、冷めた声が背後から聞こえた。
この口の悪いちっこいやつは、渡部 咲
中学2年。今年14歳
肩に付かない程度のショートヘアーに、凛とした水晶のような瞳。
その大きな瞳を更に際立てるのが、その小さな、顔と他の顔のパーツだ。
発展途上ゆえにあからさまな膨らみのない、ただ流麗な曲線の姿。
頭も良く、どんどん成績を伸ばしているが、身長は伸びなやんでいる。
顔は良いが、性格に難あり。
そして、意外にも僕の実の妹だ。
だが、悔しいが僕とあらゆる点で真逆のものを持っていて、
僕以外には社交的だし、明るいし、友達も多く、
人間の典型的な成功例と言える。
もちろん…僕は失敗例…だ。
「べ、別に…なんでもないから」
僕はそっぽを向く。
「あっそ。じゃあ早くどいてよ。歯磨くから」
咲は冷たい目線を僕に送りながら言う。
可愛くない奴だまったく。お兄ちゃん悲しい。
まぁ現実の妹はアニメのように甘くない。
これが良い例だ。
そうだ。咲に聞いてみるってのはどうだろう?
変わった僕を。
まぁ咲のことだから辛口なことしか言ってこない気がするが…
まぁ客観的な意見は大切だ。
むしろ辛口な方が、自分に役立つはずだ。
「……咲。」
『……なに。』
面倒臭そうに答えてはいるが歯ブラシの動きを止めない咲。
「俺……どうかな…!?」
「はぁ……?」
「いやだからどうかな?この髪型。」
ようやく歯を磨く手を止め、口の周りを泡だらけにしてる咲は約3秒間だけ兄の顔を見る。
久々に顔を見合わせた気がする。
「いや…別にいつもどおりじゃん…。なんなの急に…きもちわる」
き、気付いてないだと……!?
どんな辛口な言葉を貰おうと、挫けるつもりはなかったが……。
まさかの客観的にみたらほとんど変わってない宣言をされた。
これが一番辛い…。
やはり主観的に見たときよりも、客観的に見たときの方が変化の違いに気付き難いらしい。
まぁ自分で見たときもあまり変化は感じられなかったが…。
口元をタオルで拭ったた咲が僕を引き気味に見て言う。
「なに1人でぶつぶつ言ってんの。きっしょ。ドラマ始まるから部屋戻るわ。きもちわる。」
最近、妹の語尾に『きもちわる。』が付くようになった。
まったく……ドラマとかの影響だろうか?
僕も自分の部屋に戻るか。
高校入学祝いに買ってもらった新しいベッドにダイブする。
今までの布団じゃ危なくてできない行為だ。
部屋は雑誌やマンガ、テレビゲームや脱ぎ捨てた服などで散らかっている。
天井の交換したたばかりの蛍光灯が眩しく、思わず腕で目を隠す。
「はあぁぁぁぁ……。大丈夫かな……」
自然と溜め息と不安がこぼれた。
明日は僕の変化に誰か気付いてくれるだろうか?
明日も今日までみたいな学校生活なのだろうか?
そんなの嫌だ…。
なんでこんな誰も気づかないような小さな変化にしたのだろう?
この答えは簡単。
僕は臆病者だからだ。
―――――今日は疲れた…。
――――もう寝よう…。
―――きっと明日は…。
――
―
電気も消さずに早めに寝てしまった。




