ロビンとの仕事
「デビッドの紹介で今日始めて会ったんだけど
かなり優秀なハッカーらしい」
「へえ、じゃあ彼に学生名簿を出してもらうのね」
「はい」
亮はパティの側を離れ店の奥に有るパソコンを
数分間いじってパティのところに戻ってきた。
「パティ、ここはカードで買えますか?」
「うふふ、アメリカではカードを使えないのは教会の献金くらいよ」
「良かった、100ドルしか持っていなかったので」
亮がカードで支払いをするとパティが亮の顔をジッと見ていた。
「亮、どうしてディスカバーカードを持っているの?」
「えっ、どうしてですか?」
「だって亮は日本人の学生だからアメリカの
クレジットカードは作られないと思って」
「あはは、そうなんです。ディスカバー銀行口座に
ヒストリーが無いので担保金を預けて作ってもらいました。
一年くらい使えば本物のカードが作れると思います」
「そうか、こっちへ来る日本人は日本の
クレジットカードを使っているものね。
こないだ、田舎のガソリンスタンドで
使えなかったと言っていたわ」
パティは亮が本気でアメリカに馴染もうとしていることを感じた。
「それより驚いたのは、カード会社から請求が来て
支払う分の小切手を郵送するんですね」
「そうよ」
パティは首を傾げた。
「日本の会社は給料が25日で銀行振り込みです。
クレジット代は銀行引き落としなんです」
「えっ?給料は月1回なの?」
「ええ、お陰で月末に銀行に行列ができるんです」
「うふふ、面白い」
PCを車に積み終えた店員が亮に合図を送ると
二人は笑いながら車に乗った。
「亮、お金大丈夫?」
「はい、アルバイトでたっぷり稼いできました」
「どれくらい?」
「4万ドルくらいかな」
「4万ドルってそんなに・・・!」
~~~~~
「亮、ロビンとはどうなった?」
そこへデビッドが心配して電話をかけてきた。
「ええ、やってくれるそうなので今、パソコンを10台買って
ロビンの部屋の届けるところです」
「そうか、今からみんなで食事をしないか?」
「はい」
「僕からロビンに電話をかけて呼び出しておく、トムの店で会おう」
「はい」
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亮とパティがトムの店に入ると店主のトムが明るく亮を向かえた。
「やあ、アキラ元気か」
「はい、おかげさまで」
店で食事をしている連中も亮に挨拶をした。
「亮、相変わらず人気者ね」
パティは亮を笑顔で見た。
そこにデビッドとローラが入ってきた。
「パティ」
「ローラお久しぶり」
そう言ってパティとローラがハグをした後に
四人は円卓に座った。
「デビッド、ロビンは?」
「今来る」
「彼は家を出るのを嫌がっていませんでしたか?」
亮はロビンが引きこもりのパソコンオタクのような
気がしていた。
「あいつは大学の寮の後輩でその時からいつも
腹を空かしているから必ず来るさ」
「いつも?」
「うん、あいつの支出は電気料、コンピューター、
家賃そして最後に食費だ」
デビッドが言うとパティとローラが笑った。
「ロビンは何の仕事をしているんですか?」
亮はデビッドに聞いた。
「彼は大学の時から天才と言われていたが
変わり者で就職ができないんだ。 亮が気に入ればバイオ燃料の
プログラムを頼もうと思っている」
「別に、気に入らないわけではないですけど
ロビンは僕を気に入らないようです」
「なぜだ?」
デビッドはロビンと亮の関係があまり
うまく行っていないような気がした。
「とにかく努力してみます」
そこへロビンが入ってきた。
「やあ、デビッド」
「ロビン、元気か?」
二人が握りこぶしをぶつけ合うと
ロビンはローラに挨拶をした。
「ロビン、こちらが私の友達のパトリシア」
ローラに紹介されたロビンとパトリシアは握手をして自己紹介をした。
「ロビン、改めて紹介する僕のビジネスパートナーのアキラ・ダンだ」
デビッドが亮を紹介した。
「ビジネスパートナー?」
ロビンが不思議そうな顔をして聞きなおした。
「ああ、バイオ燃料の会社を作るのに
資金を集めてくれたんだ」
デビッドは亮の紹介をするとロビンはあまりにも
デビッドが亮を褒めるので不機嫌な顔をしていた。
「そうか、君はやっぱりいい人だ」
またその嫌味を亮に向かって言った。
「ロビン、パソコンを買ってきました」
亮がロビンに報告するとロビンは困ったような顔をした。
「そうだ、いい忘れたんだが
ファイヤーウォール用に後2台欲しかった」
「そうだろうと思って、2台余分に買っておきました」
亮は明るく言うとロビンは待っていたかのように
難題を押し付けた。
「ああ、そうか。ありがとう。
ケーブルを頼むのを忘れていたよ」
「大丈夫です。買って来てあります」
「ああ、そうか」
ロビンの声が落ちた。
そこにステーキが運ばれると
ロビンは嬉しそうに食べ始めた。
亮たちがサラダを頼んだのにも関わらず
ロビンはステーキだけを食べていた。
「ロビンは野菜を食べないんですか?」
「うん、俺は野菜は嫌いだ」
亮が聞くとロビンは美味しそうにステーキを食べていた。
「ロビン、それはいけないわ、野菜も食べないと体に悪いわ」
パティがロビンを心配して言った。
「うん、でも野菜は味が無いから嫌いなんだ」
亮は黙ってその会話を聞いていて思いついたように
立ち上がってトムの所へ行った。
「あれ、亮どこへ行ったの?」
パティが回りを見渡してローラに聞くとローラは気に留めず答えた。
「トイレじゃない?」
それを確認したロビンはパティに聞いた。
「パティ、亮と付き合っているのか?」
「ううん、亮は私には興味が無いみたいよ。でも凄くいい友だち」
パティは亮の女性に対する冷めた態度に自分で言い訳をした。
「やっぱり、あいつ変だよな、ローラ」
デビッドがローラに同意を求めるとローラが首を傾げた。
「そうね、彼大学の中でも女子学生と話をした事が無いらしいわ」
「やっぱりあれか?」
デビッドは大声で笑った。
「それは失礼よ、亮はアメリカの女性に馴れていないだけよ」
ローラは立ち上がってデビッドを叱った。
「ローラ、冗談だよ。亮は内気なんだよ、女性に対して」
「そうならいいんだけど・・・」
パティは自分の誘いに一向に乗ってこない亮が
内気だと聞いてちょっとホッとして独り言を言った。
デビッドのたちのやり取りを聞いていたロビンはなぜか嬉しかった。
「お待たせしました」
亮はトレーにグラスを載せて来た。
「なんだ、これ?」
デビッドはオレンジ色のグラスを指差した。
「一日分の野菜ジュースです。ロビン飲んでください」
「これをか?」
ロビンはグラスを指差して気持ち悪そうな顔をした。
「美味しそうじゃない」
パティとローラはそれを飲んでにっこりと笑い
ロビンとデビッドに進めた。
嫌そうに飲んだロビンは声を上げた。
「美味い、これいけるぞ!」
「これはいい、Natural Grillの新しいメニューになる」
デビッドがうなずいた
「Natural Grill?」
ロビンが首を傾げた。
「ああ、Big Grillの売り上げが落ちたので亮たちと
新メニューを開発して店名を変えているんだ、
味はそのままでカロリーを30%から50%ダウンさせた。
亮は日本の大学にいた時、人間が健康になる植物の研究をしていて
それを父の会社が取り入れたんだ。今は農場と契約して
日本の野菜や中国野菜も作っている」
デビッドは目を輝かせて話をした。




