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グッド・ジョブ エピソード0  作者: 渡夢太郎
一章 クリスマスイブ
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図書館

「ありがとうございます」

「でも、さっき古文の勉強をしていましたよね」

沙織はセンター試験で1問しか出ない古文を熱心にしている亮を不思議に思った。

「ええ、頭休めに」

「頭休めに古文ですか?」

「はい、国語と日本史は頭休めです」

沙織はちょっと変わっている亮に躊躇したが思い直して、

ニッコリと笑ってメモを渡した。


「これ、私の携帯番号とメールアドレスとLINEです」

「ああ、分かりました。後で僕のアドレスをショートメール送ります」

北川沙織は立ち上がり長い髪をたらして亮に頭を下げて

こっそりと覗いている二人の所へ行って手を合わせてはしゃいでいた。


~~~~~~~~

「どうだった、沙織?」

中学時代のからの親友秋山良子が心配そうに聞いた。

「うん、メルアド受け取ってくれたよ」

「やった!」

同じ中学の同級生岩倉弓子は内気な沙織の代わりに亮の情報を収集していた。

「やっぱり信子の言っていた通り、東大受験するんだって」

「だって凄く頭よさそうじゃない、いつも黙々と勉強しているし」

「名前は?」

良子が聞くと沙織ははしゃいで言った。


團亮だんあきらだって」

「きゃー、團なんて凄く金持ちそう」

良子が沙織の肩を叩くと弓子は自分の情報を沙織に伝えた。

「思い出した!目白に團さんと言う、お屋敷があった」

「そこの息子だったりして」

良子がニヤニヤと笑った。


「そんなに金持ちなら、図書館に来ないで自宅の書斎で勉強しているわよ」

沙織が自分の喜びを抑えるように言った。

「そうよね」

良子も不思議に思った。

「彼、付き合っている女性がいないのかしらイケメンなのに」

「意外といないかも暗そうだし」

信子が言うと沙織が納得した。

「うん、暗そうだった・・・」


~~~~~~~~~~

亮が家に帰ると姉の千沙子が驚いて亮に聞いた。

「あら、早いわね。亮」

「うん、勉強の邪魔された」

「また、古文書の解読?」

「うん、いっぱい資料があるから図書館は便利なんだけど・・・姉さんは?」

「私はこれから着替えてモデルの友達と飲みにく

 一緒に行く?」


「受験生を誘うなよ!今日女子高生に連絡先を渡された」

「あらまた、付き合っちゃえばいいのに」

「面倒だよ、受験も近いそんな場合じゃないよ」

「亮は自信がないんだ」

「いや、この前のテストでは合格率100%」


「そっちじゃないよ、女の子の方」

「だって話題がわからないんだ」

「あなたは気を使いすぎ、女の子は話をしているから。

どう思うと聞かれた時、

答えればいいのよ」


「さてさて、クリスマスの相手探さなくちゃ」

「まだ決まっていないの?」

「それがさ、優秀な弟を持つと比べちゃうんだよね、このイケメン」

千沙子は亮の頬を叩くと二階の部屋に上がっていった。

「ああ、お帰り亮さん」

母親の久美が優しく言った。


「ただいま」

「亮さん、今夜は何を食べたい」

亮は冷蔵庫を開けて探し物をした。

「まだ5時だから僕が作るよ。今夜も二人で食事になりそうだから」

「じゃあ、また得意の薬膳料理?」

「あはは、もうパクチーは入れませんよ」

「よかったわ、私あれ苦手なの」

久美はニコニコと笑った


「じゃあ行って来ます」

ばたばたと階段から降りてきた千沙子は

まるでファッション誌のモデルのようだった。

「姉さん、綺麗だよ」

「ありがとう。亮大学生になったらモデルとの食事会、連れて行ってあげるからね」

「僕が?」


「だって、亮は私の友達のリクエストではトップなのよ」

「あはは、いってらっしゃい」

「亮。薬膳粥、私の分とっておいて」

「OK」

千沙子が出て行くと母親の久美は嬉しそうに笑った。


「どうしたの?お母さん」

「うちの家族は喧嘩もなくて幸せよね~」

久美は笑顔で話した。

「お父さんの夜遊びが無ければね」

「あら、お父さんは忙しいのよ、あれだけの会社をきりもりしているんだから

 特に今の時期は美宝堂が忙しいし、早く美佐江が留学から帰ってこないかしら」

久美は賢い美佐江が父親秀樹の跡継ぎと確信していて

亮はそれを感じ取って逆に自由に生きる事が出来た。


「亮さんはお医者さんになって頑張ってね」

「はい、良い医者になって沢山の人を救います」

「そうね、亮は優しいから患者さんが喜びそう」

「はい」

亮はニッコリと笑った。


翌日、亮の向かい側の席に座っていた沙織が

立ち上がり亮の脇の席の前に立った。

「一緒に勉強して良いですか?」

「はあ、はい」

亮は沙織が自分の勉強を邪魔さえしなければ良かった。


しばらく黙って勉強する沙織のノートをチラチラと覗き

の数学の答えが間違っているのを見つけた

亮がじっと見ていると沙織は微笑んだ。

「あの」

亮は小さな声で言うとノートを指さした。


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