skill resource
「おめでとう!10歳!」
「そうか、もう10歳になったのか!」
母上が誕生日を祝ってくれて、父上が感慨深く、懐古の念に浸っている。
「お坊ちゃんも大きくなりましたね」
専属のメイドも祝辞を述べてくれる。
そう。今日、僕は10歳になった。言い換えると、成人の儀を迎えるということだ。成人の儀では「天からの贈り物」が貰えるのだ。それは強さだったり賢さだったり色々種類がある。これによって将来が決まるといっても過言ではない。
「じゃあ、一緒に行こうか」
半ば期待の込められた目を向けられる。何故ならば、ここら辺を仕切ってるのは僕だからだ。悪い奴を倒したらそうなった。良い人を守ったらそうなった。ただ、ただそれだけなのに皆んな期待したような目で見てくる。悪い気持ちじゃないけど、胸騒ぎがする。
木枯らしが吹いている。森が自分の行く末をひそひそ話で嗤っているように感じる。神殿があるのは森の中。父に手を引かれ、コツンコツンと音の鳴る石の道を進む。未来のことなんて分かるはずないのに心臓が目一杯の警鐘を鳴らしている。どうしてだろう。
「ブレド様みたいな剣士になるのかな?マジク様みたいな魔術師にもなるのかな?」
ブレド様もマジク様も生ける伝説として名を馳せる偉人だ。双方、それぞれの界隈に多大なる影響を与えたのだ。そんな方達の名前を出す程父上は期待している。まるでスキップでもしている様な音を奏でている。その陰で僕は乱され、不整調な歩きをしていることには気付いていないのだろう。
決して悪いことだとは思っていない。先程の父上の言葉も自分に向かって言ってない。誰も悪くない。誰も悪くないんだ。
神殿に着くと、神父の人が出迎えてくれた。
「こちらです、コレジ子爵様」
「ああ」
コレジ子爵というのは父上の別名だ。父上はキングダム王国の爵位は子の貴族。家名はコレジと言う。だから、僕の名前にはもちろんコレジが入っている。
「よくお越しくださいました!期待の新星とされるコレジ子爵の御令息様が行う成人の儀に立ち会えて、私光栄だと思っております!」
父上が僅かに顔を顰めた……気がする。
「おや?流石、御令息様!洞察力は凄まじいモノがありますな!バイロジカル子爵様も良い息子様を持ったものですな!」
この目の前の男は何者なのだろうか?父上と知り合いなのだろうが、父上は明らかに嫌がっている。
「御託は良いから、早く始めてくれ」
「私はもうちょっとお話ししたいところではありますが!かしこまりました!それではへーロ様は私についてきてくださいませ!」
へーロというのは僕の名前だ。
僕の名前を呼んだ神父の男は祭壇の上に登る。僕も続いて登る。
「それでは始めます!」
周りの雰囲気がガラッと変わる。森閑とした礼堂がまるで何かが住み着いているような騒々しさを醸し出す。
「セルフ・ルーインが神名を持ってへーロ・コレジの成人の儀を取り成す!ゴッド様!世に立つ彼に祝福のブレスを!」
神父が力強く言葉を紡ぐと共に呼応するように僕の周りが光り始める……!
◆
「結局どこの会社もブラックなんだぁ……」
「おい!216番!手が止まってるぞ!」
「はいぃぃ!」
ここは天界。労働者に法の加護はない無法地帯。こんな現状ならば下界のブラック企業に勤める方がまだマシだと思える。
「182番!お前ミス三回目だぞ!罰として二十四時間労働だ!」
天使に睡眠は必要ない。天使に寿命は関係ない。よってこのような惨劇となる。南無阿弥陀仏。天使が神を祈るとはこれいかに。
鞭を持った監査官が叩きたそうにこちらを見ている。
「後二十時間だから頑張れ!」
監査官が檄を飛ばす。この世界では百時間キッカリ働くと三時間の休息が支給される。改めて、なんてブラックなんだっ……!
「バシッ!」
「はうぅぅ!」
何もしていないのに叩かれた。こんな理不尽な事があるか!!
そんな思いが目線に乗っていたのか、監査官は一言応える。
「なにか、不埒なことを考えている気がした」
いや!その通りだけど!考えることは許してよ!思想の自由!思想の自由を自分に下さい!
けど、文句は言わない。その上、余り不満を考えない。読まれていてはたまらない。今回は我慢するのだ。なんとしてでも。
「おい、お前気をつけろよ」
自分と連番の215番が監査官の目を盗んで話しかけてくる。
「この先に待っているのは天国なんだからよ」
いやここが天界の筈だが……?というツッコミを無理矢理押し込める。ここで大きな声を出してしまえば地球担当が剥奪されてしまう。
地球はこの天使達にとって極楽浄土である。何しろ手が全くかからないのだ。こちらから干渉することは滅多にないので暇になるのだ。全ての世界に科学を適応させて欲しい。
その後、三回程叩かれたが、大事はなく時間は過ぎていった。
そして、残り五時間を切った頃。事件は起こった。
スキルリソースがないっ……!
あの源が無ければ今担当する世界に技能を与えることができない。目の前の成人の儀を行う男子にスキルを与えられないのだ。この男子はレベル8。とても高い水準を誇っている。この男子に与えなければならないスキルの名前は英雄。だがしかし、そのスキルリソースは手元にない……。
このままでは、天国に逝けない!
こちらの発注ミスなのか、運送業者のミスなのか分からないがこのままではまずいのだ。
一回時間稼ぎの為に光るエフェクトを出す。この効果は神聖な雰囲気を醸し出してくれる。時間稼ぎにはうってつけの演出だ。
一回考えてみよう。今英雄のスキルリソースはない。英雄はレベル8のスキルである。そして、上司からバレてはいけない。
上司はその子が何のスキルが必要なのか、それが正しく与えられているのかをチェックする。だが、一から十まで確認するわけではない筈だ。例えばスキルレベルだけを確認するのだろう。では、ここにある有り合わせのものでどうにかすればいい。
ふとその時、天国で拾って持ってきた「標的1900」が目に入る。目の前にいる男子が手に入れるスキルレベルは8。ある程度珍しいものでないとその水準には達しないだろう。ここに珍しいものはそれしかない。
そう考えた自分はヤケクソ気味に技能製造機に「標的1900」を入れた。もうどうにでもなれ!
瞬間。まるで当然かの如くスキルとなって目の前のへーロに吸い込まれた。
《単語集》
・英単語 読み方 意味(一つ)
概要
・blade ブレード 刃
剣聖ブレドの由来
・magic マジック 魔法
大魔道士マジクの由来
・courage カレッジ 勇気
主人公のファミリーネーム
・biological バイオロジカル 生物学の
主人公の父の名前
・hero へーロ 英雄
主人公の名前 日本ではヒーローと読む
・self セルフ 自分、本質(自身で)
あの儀式をした人のファミリーネーム
・ruin ルーイン 破滅させる、台無しにする
あの儀式をした人の名前
・God ゴッド 神
一神教ではGod、多神教ではgods
・bless ブレス (神が)祝福する、加護する
ゴッドブレスはこれが由来なのか!
・black ブラック 黒い 悪い
ブラック企業の語源だと思ってる
・skill スキル 技能
ラノベの中で最多使用説
・resource リソース 資源
リソースを割くって使うよね
・level レベル 水準 程度
え?ゲームのLv.はLoveの略じゃないの?
・effect エフェクト 効果 影響
affectの方は影響する……まるで将棋だな
・check チェック 調べる 小切手
上二つネタを使ってないかをcheckし忘れました
・make メイク 作る 製造する
YouTuberのメイキング動画は推しのだと永遠見る
・machine マシン 機械
これらは綴り分を書けなくてごめん