第五フロアは救いが少ない件について 〜 余命20時間 〜
【ドリームエデン】
「扉が無くなってやがる」
《BOSS》がいる場所へと通じる扉が鍵を回した途端に消滅。
あまりの事に軽く慌てるドラゴン。
(《BOSS》がいないなんてことはありえねぇ。ってことはアシッドアサシンみたいにフィールドに放たれてるタイプか?)
銃を両手に構えて周囲を見渡すが何も気配がない。
いるのは崩壊を免れてこのフロアまで辿り着いた19名のプレイヤーのみ。
その光景にドラゴンは頭を抱える。
(2000人以上いたプレイヤーが50人近くになってんのかよ)
あれだけいた有力候補。
《十傑》と呼ばれるトッププレイヤー達も生き残っているのは半数にも満たないが、ドラゴンは理解している。
《魔王》、《影狼》、《賢者》、《愚者》、《神姫》、《魔弾》、《星霊》、《天魔》、《剣聖》、《堕天》。
この10名の動向が運命を左右する。
そして、篩い落としが始まる。
上空に浮かぶ文字が変化し始める。
《BOSSイベント:無限の蠱毒》
『ドリームエデン』に君臨する《星霊》を倒せ!
※参加人数 無制限
※支給物資 なし
※ボスのいるフロア内以外での転移系の【スキル】や
アイテムは発動しません。
※このフロアにいるプレイヤーが1人になるまで続きます。
※《BOSS》討伐後、第6フロアへの入場券1枚がドロップ。
クエストを解放しますか?
はい or いいえ
それは地獄の始まりだった。
不意に振り返ると、見知ったプレイヤーであるドラゴンに声をかけようと近づいていたカチュアがいた。
だが不幸なことに彼女はこのような事態に巻き込まれすぎた。
第4フロアでの《国王》として。
《災厄》を納めるための生贄として。
そして今回は生き残りのための標的として。
「ーーー」
その場から走り去ろうとするカチュアは一言だけ告げた。
「【スキル:元素乃王 麻痺】」
周囲からバタバタとプレイヤーが倒れる音がする。
唐突な麻痺状態の誘発により、体勢の悪かったプレイヤーが容赦なく顔を地面に打ち続けていく。
「ドラゴンさんは状態異常耐性持ちだったか」
「安心してくれ。アンタを殺すつもりはない」
「分かってる。シノブさんが助けてくれたようにこんな状況でも冷静に対処しようとしてくれる人がいることは分かってるの。でも分かったの。アリアさんをあれだけの人数をかけて救出しようとしたのにどうにもならなかったでしょ?もうこのフロアだって崩れ始めてる。1人しか次に進めないのにどうやって相手を信じろって?」
カチュアの指摘は尤もだった。
ドラゴンが不用意に放ってしまったこの場を宥めるための言葉はカチュアの不安を拭えず疑心暗鬼に拍車をかけてしまった。
「なら信用させてやるよ」
ドラゴンは両手に武器を生成する。
それは小型爆弾とリモコン。ドラゴンは爆弾を飲み込みリモコンをカチュアに向かって放り投げる。
「これで俺はアンタに命を握られた状態だ」
「なんで」
「どんなに信頼してても、このクエストは1人になるまで殺し合いを強制させられる。でも外道に落ちるつもりはないから話し合いの場を設けたかったんだ」
「話し合いなんて意味なくない?」
「あるさ。《熾天使》の映像見たろ?なら少しでも勝算があるやつを第6フロアに届ける必要がある。そのためなら諦めて身を引くさ。でも全員が全員、そんな冷静じゃない。冷静だったとしても誰かのために死ぬなんて普通は嫌だろ」
だけど、と言葉を区切って銃を構えたドラゴン。
乾いた銃声が響き、弾丸がカチュアの横を抜け。
振り返るとそこにはカチュアに攻撃を加えようと離れた距離なら狙撃をしようとしていたプレイヤーの眉間に着弾し『☠GAMEOVER☠』の文字が浮かんだ。
「この程度の殺気も読めねぇ奴より俺が生き残った方がいいだろ」
残り18名となった第5フロアプレイヤー。
崩壊していくフロアのせいで逃げることは許されない。
圧倒的な実力で認めさせ不戦勝にてこの場を治める。
「約束する。ログインダッシュで24時間の命の保証がされてる間に全てを終わらせる。だからどうか俺に、俺達に任せてくれ」
「そんなこと言ってお前らだけ生き残る気だろ」
「そ、そうよ。あなた達がわざと時間を引き延ばしたら」
「俺の仲間はログインダッシュで後20時間くらいで死ぬ。こんなところで時間くってる場合じゃねぇんだよ。10秒だ。それまでにログアウトしなければ戦闘の意思ありってことで殺す。だけどイレギュラーってのは起きる。オレに任せられず自分で闘いたいやつは掛かってこいよ」
ドラゴンの呼びかけに残ったのはたった1人だった。
「意外だった」
「私が残っちゃおかしい?」
残ったのは《十傑》同士。
《魔弾》ドラゴンと《星霊》カチュア。
カチュアとてドラゴンが信用できなかったわけではない。、だが自分の命を誰かに任せてしまうのが嫌だっただけ。
「言っとくけど恨みっこなしよ」
「そのほうが後悔しなくて済む」
どこかありがたい思いのドラゴン。
それを理解できたカチュアもまた相手のことを慮ってのセリフだった。
銃と槍が互いに敵を殺そうと向けられる。
だが。
攻撃が当たることはなかった。
「え?」
事実として残ったのは、第5フロア最後の1人となったそのプレイヤーに参加券が与えられた事。
そして、第6フロアに転送される直前確かに彼女の瞳に映ったのは見慣れたプレイヤーの【スキル】。
ーーー立方体の枠組みだった。




