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リトライチケット  作者: アクイラ(((・・;)
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第六フロアは未確定について   〜 真打見参 〜




    【無月】



「手数が違いすぎる」


 《堕天》《愚者》《剣聖》の共同戦線。

 その中で実質的な指示を飛ばしながら闘っていたソラは苦虫を噛み潰したような顔をしていた。

 先程【虹彩障壁】を1枚の割ったことで勢いをつけたかった彼らだがフードの人物の手数の多さが行く手を阻む。


「せめて後1人でいれば」

「ソラさん危ない!」


 ソラの死角からの攻撃。

 シルファの呼びかけに反応するが間に合わず、ダメージを覚悟したソラを意外にも《熾天使》が抱えて回避する。


「礼は言わないぞ」

〈勝手にしろ。貴様が欠ければその分余に攻撃が回ってくる〉

「何か手はあるか?」

〈貴様達が肉壁となっている間に攻撃すればいい〉

「意見を求めた僕が間違いだった」


 ソラ達を苦しめている要因。

 それは地面を走り回る黒い蕾に目をやる。黒い蕾が僅かに伸びた根で走り回り、意識が逸れた瞬間に種子を弾丸のように飛ばしてくる。


「【特殊武器:黒背種刺ブラックロータス】。私のお気に入りのアイテムなんですよ」

〈【スキル:銃焔】〉


 フードの人物の言葉を遮るように指先から放たれた焔が黒い蕾を打ち抜く。

 だが、燃えた灰から再び形を整え動き出してしまう。


「ソラさん、何かではないんですか」

「無いわけじゃないけど隙がないんだ。3人で何とかなっている均衡を崩せない。誰かもう1人でも来てくれれば」


 言っている間にもフードの人物の袖から【黒背種刺】が数匹出てくるのを燃費の悪さを度外視して【スキル:座標移動】で別次元へと消滅させる攻防が続く。


「それに急がないといけない理由がいくつかある。もう下のフロアの崩壊は大分進んでいるはずだ。有力プレイヤーであっても些細なもので巻き込まれてもおかしくない。僕達が対処しなければいけない問題は4つ。ポーションを始めとした補給限界、増え続ける【黒背種刺】の完全対処、手数の増加、敵の撹乱」

「それって」

「そうだ。その1つでも解決できれば形勢はかなり好転する」


 シルファの頭に4人の姿が浮かぶ。

 レイン。

 YAIBA。

 ドラゴン。

 シノブ。

 このゲームの中でも最上位の実力者達の彼らの姿はシルファだけでなくとも連想できる。

 だがシルファも気づいている。

 参加券は残り3枚。誰かはここに辿り着けないことを。

 

「いつまでそんな弱気なんですか?」


 不意に出た言葉。

 それはソラだけでなく《熾天使》も目を丸くしていた。

 もちろんシルファ自身も驚いたが、口は自然と動いていた。


「彼らにばかり重荷を背負わせて、自分の命すらも誰かの頼りにしなくちゃいけない。そんなんじゃまた失ってしまう」


 今は亡き2人の姉の面影が宿るその声は震えながらも闘う意思を示していた。


「絶対にこのゲームを終わらせる。私が、この手で」


 【聖剣ヴェルダンディ】が輝く。

 新たな主を見定めた【聖剣】は《熾天使》が使用していた時と異なる形へと変貌を始めた。

 光の玉へと戻り再構成されたその姿は両腕を覆う手甲ガントレットになっていた。

 誰も成し得なかったために頭から消えていたルール。

 《称号》持ちを倒すと《称号》を奪うことのできるシステム。

 それに呼応したようにシルファは3つの《称号》を所有している。


「今回はバグが多すぎますね」


 手甲ガントレットに集まる暴風。

 それは『修正』の力を微量に有し、煌めく旋風となって【黒背種刺】ごと巻き上げ、


「【聖拳】!」


 極大の暴風が叩きつけられ、【虹彩障壁】に激突。

 しかしフードの人物は避ける素振りすら見せずに立ち尽くす。

 ガリガリと障壁を削るその音に思わず眉根が寄ってしまうフードの人物だったが障壁の摩耗具合を確認し、暴風の威力を値踏みし思わず安堵の息を漏らす。

 その一瞬にも満たない時間に3人が動き出した。


〈【スキル:天上焔陣】〉

「目眩まし?となれば」


 フードの人物はソラの【重力銃】を警戒し空を見上げるが、そこに待ち構えていたかのように【天鏡剣】に切り替えたシルファによる落雷が落ちる。障壁のせいでダメージは入らないが狙いは別。雷による一時的な視力の低下。

 

「少し頼むぞ」

「任されよ」


 その一瞬で白銀の一閃が戦況を変えた。

 ヒビの入っていた【虹彩障壁】がまた1枚砕ける。

 

「真打ち登場でござるな」


 シルファは安堵の涙を流し。

 ソラは笑みを零し。

 《熾天使》は何かを含んだように口角を上げる。

 3人が共通して感じたのは勝利への一筋が太くなったこと。


「さぁ反撃開始でござる!」


 《適応獅子》との戦闘を経てアドレナリンの多量分泌している彼女は高揚していた。普段以上のポテンシャルを引き出せるに至る彼女はゾーンと呼ばれる極限状態。

 

「【捌の型  銀嶺朱雀】」


 繰り出された剣戟は直線上の地面を凍結させながら【虹彩障壁】に激突。

 

「いかに《魔王》と言えどもこの程度」

「なわけないでしょう」


 皮肉めいた言葉を吐きながらYAIBAは次の攻撃の動作に移り終わっていた。


「【捌の型  銀嶺朱雀】八連」


 氷の斬撃があらゆる角度から障壁を叩き、フードの人物の障壁より外側は完全に凍結世界へと変わる。

 地面は凍りつき、地面から突き出た氷柱は障害物としてプレイヤーの姿を隠す盾になったのと同時に【特殊武器:黒背種刺】全て の動きを完全凍結させてしまった。

 数分のうちに態勢を立て直したYAIBAは近くにいたシルファに目線を合わせて集結する。


「あれ?ソラさんは?」

「姿を消す【スキル】を持っているはずでござるから機会を伺っているのでござろう。それより今のうちにこれを」


 差し出されたポーション。

 飲む暇さえなかった先程に比べ、YAIBAの参戦は心理的負担の軽減にも役立っていた。


「状況を簡潔にお願いします。あの障壁は」


 YAIBAの問いにシルファは端的に答える。

 《熾天使》の《称号》獲得。

 7枚の【虹彩障壁】。

 【聖剣】の変化。

 掻い摘んだ情報の断片を繋ぎ合わせてYAIBAは刀を握り直す。


「拙者らは残りの2人が来るまでに障壁を壊しきれればベスト。最低でも誰も欠けないように立ち回る必要があるでござるな」

「でもソラさんと《熾天使》の攻撃を合わせてようやく破壊できました。さっきも私とYAIBAさん。複数人で攻撃を当てて破壊できる強度です」

「それよりも不気味な点があるでござろう?」

「え?」

「先の話が本当なら、あのフードの人物自体は攻撃してきてないです。あんな刀を腰にしてるのに」


 たしかにシルファも気にはなっていた。

 敵からの直接的な攻撃がまだ来ていないことに。

 

「明らかに【特殊武器】ですよね?」

「師匠やシノブのように蓄積するタイプかもしれません」

「この【神刀】が気になりますか?」


 油断など微塵もなかった。

 にも関わらず会話をしていた2人の背後に突如現れたフードの人物は、今にも抜刀しそうな構えを取っていた。

 それを視界の端で捉えた瞬間に走り出した2人に満足したように口角が上げ、刀から手を離す。

 

「ここまで来るプレイヤーは一筋縄ではないですね。本来なら揃い切るまえに倒しておきたかったんですけど不確定要素が多すぎて。《熾天使》の参戦に加え、新たな《称号》の獲得。さらに【聖剣】が思いもよらない進化。しかもまだ何か仕込んでる様子」


 フードの人物が思案し始めたのと同時に、YAIBAとシルファに一通のメールが届く。

 その内容を目にした彼女らは即座に意図を理解し、《熾天使》の元へと走る。


「なにを?」

〈なにを?〉


 フードの人物と《熾天使》は意図が理解できるはずもなく頭に?を浮かべているが、どこか確信めいていた彼女達は迷いがなかった。


〈何か企んでいるな〉

「はい。全力で生き残ることに専念してください。ここからは命懸けの時間稼ぎです!」


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