第一フロアが優しくない件について ~ ボスイベント① ~
メールが届いた翌日。
《エンペラーオンライン》内では大きな盛り上がりと一抹の不安が渦巻いていた。
昨日のメールで解禁された『ダンジョン』。
プレイヤーのレベルを上げると同時に《BOSS》を倒せば、【特殊スキル】や【特殊武器】が手に入る。
「難易度は跳ね上がるだろうがそれでも魅力的だ」
証拠に8時ちょうどに現れるとされるダンジョンの入り口前には既に大勢のプレイヤーが集まっていた。
「武器はオレとナツキちゃんが作るし、アラクネちゃんとシノブが前衛、レインはバランスを見て動いてく感じでどうだ」
「「「異議なし」」」
「・・・分かった」
やや遅れたシノブの反応以外は問題なく陣形が固まる。
5人目のパーティーメンバー、シノブ。
既にアイテムショップから短刀や投擲武器を調達し、万全な準備を済ませているのか、雨宮達のパーティーでは一番やる気のあるように見えてしまう出で立ち。
「・・・レインとバカドラはいつものことだけど、2人はそんな軽装備で大丈夫?なんならこれ使って」
アイコンを操作して予備の防具を出現させるシノブ。
無口なように見えて、他のプレイヤーに対して配慮を忘れない優しさを持ち合わせているが敵には一切の容赦を見せない《雪鬼姫》として、一部のネットユーザーから恐れられている。
「ありがとうございます」
「助かるわ。でも、シノブさんも装備あんまりしてないんじゃ」
「・・・私の場合は邪魔になるから」
「おい、来るぞ」
ドラゴンの呼び掛けで、プレイヤー達の目の前に光る渦が出現する。
その上部にメッセージが浮かぶ。
《BOSSイベント:シャドウウォーカー討伐》
『沼の城』に君臨するシャドウウォーカーを倒せ!
※参加人数 無制限
※支給物資 体力ポーション(少)
MPポーション(少)
※ボスのいるフロア内以外での転移系の【スキル】や
アイテムは発動しません。
※シャドウウォーカー or プレイヤーの全滅以外で
ボスのいるフロアは開きません。
クエストを受注しますか?
はい or いいえ
もはや聞くまでもなく、雨宮は『はい』を選択。
この場にいるプレイヤーは漏れなく参加するだろう。そういった人間の集まりだ。
すると、光る渦の前に双子ナビゲーターが現れる。
《この場にいる1652名の参加を確認しました》
《それでは皆様、『沼の城』の主を倒してください》
《《ご武運を》》
光の渦がプレイヤーを飲み込んだ。