第五フロアは救いが少ない件について 〜 100億の鍵 〜
【キャンドルシティ】
「まじかよ」
念願の『謎の鍵』に繋がるであろうヒントを目の前にしたドラゴンは愕然とした。
それは【スキル:鷹の目】などの俯瞰出来るものか、圧倒的にな飛翔または跳躍【スキル】がない限り決して見つけることがないヒント。
キャンドルシティ上空に浮かぶ気球の頂点に貼り付けられた一枚の紙片。
そこには1つの記号と数字が記載されていた。
記号は鍵のマーク。
数字は10000000000。
「100億。まさか違うよな」
おもむろに『所持項目』から100G取り出し、紙片に近づける。
嫌な予感は的中。
数字は99億9999万9900に変化した。
あまりの状況にドラゴンはもう一度同じセリフを吐いてしまう
「まじかよ」
クエスト報酬やアイテムを売却して得た金額を合わせたとしても1千万が精々で明らかに足りていない。
実質的なソロでの攻略不可能クエスト。
最前線で闘っていたドラゴンであっても、所持金は足りない。
「そうだ!レインの【スキル】なら、」
(アホか)
いつの間にかまた親友に頼ってしまったことに愚痴を漏らす。
その積み重ねによってどうなったかを先程見たばかりだった。
ドラゴンは1人の強さを知っている。
だが同時に弱さも知っている。
だからこそ、誰かに頼ることを恥とは思わない。
そしてそれが実を結ぶ。
「ドラゴン!待たせた!」
「待ってたぜ!」
ドラゴンがメールを送った人物の1人、ヒデヨシの参戦。
正確にはヒデヨシは1人ではなかった。
引き連れてきた凄まじい数の女性NPC。
そう。ドラゴンが求めたのはNPCの持つ情報。ヒデヨシの【スキル:結城梨斗】は好感度を操作するだけでなく会話の補正がかかるため、情報収集という面ではトップクラス。
「単刀直入に聞くがいくら持ってる?」
「いきなりカツアゲってワケではないな。察するに高額で売っているか?いま持ち合わせは彼女達と合わせても700万くらい」
「全然足らねぇな」
「いくら必要なんだ?」
「100億」
「・・・は?」
答え合わせをするようにドラゴンは紙片を取り出す。
「ROLAND商会の捺印じゃねぇか。そりゃ高い。『キャンドルシティ』ほぼ全域を取り仕切ってるとこだぞ」
「店のトップと交渉したら安くなるか?」
「確か、ヒムロってプレイヤーがそんな話をしてたが興味なくて。知ってるか?」
「第4フロアではかなり世話になったからな。まだ生き残っててくれればいいが」
アイコンを操作してメール。
さすがに即答とまではいかない。
「にしてもこの金額やばいだろ。桁2つくらいおかしい」
(たしかに《BOSS》討伐でも複数回こなさないと届かないぞ?ここまで手が込んでるってことは偽物ってこともないだろ)
「ん?」
発動し続けていた【スキル:鷹の目】に複数のプレイヤーが映る。
「ドラゴーン!」
「どこだー!」
「ドラゴンさーん!」
「ん??」
おそらく自分を探しているであろう声が近づいてくる。
徐々に近づいてくる声の主達の表情が見えてきたドラゴンは不思議に思う。どこか安心したような顔と焦燥に駆られた表情ともう1つ。
ーーー後ろめたさを感じさせる表情。
得体の知れない悪寒が走るドラゴン。
「あ、あの人じゃないか!?」
人々の目標が自分に向く。
「ドラゴンさんですか?」
「あ、あぁ」
「よかったです。私達『プラットホーム』でシノブさんに助けてもらって。ドラゴンってプレイヤーが『キャンドルシティ』にいるからこれを渡してくれって言われて」
女性プレイヤーが渡してきたのは1枚の紹介状。
「これってROLAND商会の紹介状じゃねぇか。たしかROLAND社のモノなら100分の1で買えるってレアアイテムだぞ。これがあれば、、、ドラゴン?」
「なぁ、1つ聞いていいか?」
「・・・はい」
その女性も今から自分が何を聞かれるか理解していた。
だからこそ、振り絞るようにドラゴンの質問に答える。
「シノブはどこにいる」
「・・・まだ『プラットホーム』に」
答え合わせをするように第3フロア『キャンドルシティ』の街灯が崩壊を始める。
悪寒の正体は薄々分かっていたドラゴンだが、どこか否定できる部分を必死に探していた。まだ彼女が持ってきた紹介状を持っていたのが自分達の知るシノブとは違うシノブかもしれないという微かな奇跡があるかもしれないと。
だが奇跡は二度起きない。
ドラゴンの心を破壊するように女性プレイヤーはもう1つアイテムを手渡す。
「あぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!!!!」
ーーーそれはシノブの愛刀【特殊武器:春雷】だった。




