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リトライチケット  作者: アクイラ(((・・;)
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第五フロアは救いが少ない件について    〜カウントダウン〜



 第5フロア《BOSS》第1戦。

 圧倒的火力で一方的に《呪珠樹》を倒した《熾天使》の活躍によりJUNを含めた39人というプレイヤーが命を落とした。

 元々ゲーム内のNPCである《熾天使》が6つしかない席を取ってしまった為、残りの5つを257人で奪い合う形になっている。


「《熾天使》がイレギュラーだとしても、」


 次の言葉をドラゴンは吐けなかった。

 レイン、ドラゴン、シノブ、アラクネ、YAIBA、シルファ。

 いまこの場にいる6人の中で第6フロアに挑めない人物が出てきてしまう。


「俺達『暁月』全員が、あ?」


(何言ってんだ俺)


 ドラゴンは自身に起きている状況を理解できていなかった。

 何故か記憶が抜け落ちたように、ある人物の存在が無いことに今更ながら気が付いたのだ。


「ナツキちゃんは?」


 第4フロア初期以降、彼女の姿を見ていない。

 それどころか、今の今まで『いない』ことにすら気がついていなかった。

 

(は?嘘だろ?一般のプレイヤーならまだしも、『暁月』メンバーを忘れるなんておかしいだろ)


 気が動転しているドラゴンにそっと手が置かれる。


「・・・ドラ?」


(シノブですらこの反応。もしかして気づいているのは俺だけなのか?逆に考えろ。『何で忘れてた』じゃなくて『何で今思い出したのか』。最後にナツキちゃんに会ったのはいつだ?少なくとも第4フロア《混沌黒龍》との闘いにはいなかった。涼真の話じゃ『卵』破壊には絡んでた。ってことはその間のどこかだ)


 いや、と考え方を更に変えるドラゴン。


(誰がやった?この犯行を行うことでメリットになるプレイヤーがいるとすれば、ナツキちゃん本人だ。でもどんなメリットだ?ソラ達が狙ってたのが関係するなら繋がる答えは何だ)


 ドラゴンは思考を更に巡らせる。

 頭脳担当を普段レインに任せているように見えるが、ドラゴンも馬鹿ではない。YAIBAにも劣らない状況判断能力を持ち、レインに届き得る推理力を持つ彼は1つの仮説を立てた。


「悪いシノブ、少しここ任せるぞ」


 それだけ言ってドラゴンは急いでログアウトした。




「・・・ドラ、何か分かったのかな」


 返答を待たずにログアウトしたドラゴンに一瞬驚いたシノブだが、次の瞬間には目の前の事態に向き直る。


「ドラゴンさんはどうしたんですか?」

「ドラ殿はどちらへ」

「・・・安心して。・・・多分何か考えがあるんだと思う。・・・それに焦る必要はないよ。・・・私達には他にはないアドバンテージがあるでしょ?」

「???」

「『謎の鍵』を2本所有していていることでござるな」

「・・・そう。・・・『謎の鍵』が手元にある以上2つの『扉クエスト』開放のタイミングはこちらが握ってる。・・・でも逆に言えば残りの入場券を奪い取ろうとしてくる奴もいるかもしれない」


 全員の脳裏に【クエスト∶リンクアップ】や《天使》騒動の光景が浮かぶ。

 当時は指輪の押し付け合い、強大な《天使》よりも《十傑》が狙われる事態だった。つまりプレイヤーは自身の命が危険に晒されれば簡単に他者を傷つける。

 第6フロアへの入場券がドロップアイテムであること。

 そしてドロップが1枚という点も拍車をかけている。

 それが1人に対して1枚なのか、それとも《BOSS》を倒したラストアタック報酬なのか明確ではないため、この場にいる全員は最低枚数で予想を立てる。

 レイン達には伏せているが、シノブは自分の中で既に生き残りの選定を済ませていた。

 最優先がレインこと雨宮。次に同列としてドラゴン、YAIBAと続き自身の4人。彼女にとって残り1枠はどうでも良い。最初から2枠を餌に生き残るための算段をしていたのだ。


「・・・私達がしなくちゃいけないことは残りの『謎の鍵』は在処を調べて回収すること。・・・そして独占すること」

「ーーーッ!」


 シノブの発言にシルファは驚いたが、YAIBAは静かに目を閉じる。

 彼女達もここに至るまでに千を超える屍を越えてきた。

 肉親も仲間も戦友も。

 自分達を生かすために、自らの命を犠牲にしてくれた者達の為にも、甘いことを言ってはいられない。

 

「では残り3本を早く見つけに行きましょう」

「問題はそれだけではござらん」

「???」

「『扉クエスト』が終了した瞬間に扉が消えた。ここから1つ恐ろしい可能性があるでござるよ」

「えっと?」

「『扉クエスト』は入ったらラストアタックを決めた者以外は出れないかもしれないのでござる」

「え、」

「《熾天使》が他のプレイヤーを殺してしまったから分からんでござる。プレイヤーがいなくなったから扉が消えたのか、扉ごとプレイヤーが消えるのかはこれ以降に分かるでござるが、仮説が正しかった場合、同じ《BOSS》に全員で挑んだとしても、1人しか生き残れなければ《十傑》がまとめて死ぬ」

「・・・しかもそれを理解したプレイヤーは協力なんてしてくれない。・・・ラストアタックをした1人しかクリアできないならそもそもやろうなんて思う?」


 今まで背中を預けていた相手が、背後から刃を突きつけるかもしれない状況。

 ここまで来てシルファはようやく事態を理解した。

 そして彼女達が飲み込んだ言葉があることも分かってしまった。

 自分達が『謎の鍵』を所有していていることを周囲にバレてはいけないこと。バレた瞬間に周囲から狙われてしまうこと。

 もう1つが関係を築いた仲間との連携ができなくなってしまうこと。ラストアタックが入場券の取得条件だった場合、最後の最後で裏切りがあるかもしれないからだ。


「さて、では誰からクリアさせるでござるか?」

「???」


 自分の辿り着いた答えは些末事と言わんばかりにYAIBAが提案。

 

「シルファ殿、ここから拙者達が考えなくてはいけないことは1つでござるよ。第6フロアに誰を送り届けるかでござるよ。既に《熾天使》がいることから、それを止めるために師匠の悪魔の力は必須。残り4枠をどう割り振るかを先に考えるでござるよ」


 今度こそシルファは目を見開いた。

 最悪の中で最善の行動を瞬時に導き出せる彼女達に感嘆を通り越して恐怖すら覚えたシルファだが、そうでなければここまで生き残れないのだろうと飲み込んだ。

 言外に彼女達は『全クリ』に向けて有能な人員を第6フロアへ届けるに足る力を有している。


「・・・シルファの言う通り残りの『謎の鍵』を探すのは変わらない。・・・でも現実問題として3本全て回収できるとは思ってないよ。・・・だから他のプレイヤーが鍵を手に入れてしまったらそこに全員で便乗してラストアタックだけ掠め取る」


 他者を押しのけて生き残る。

 シノブもYAIBAも強い意志を持ってそれを行おうとしている。

 シルファも姉達の想いを胸に生き残りを目指すが、その競争相手は早くからこの世界を席巻する《十傑》達。

 同列とされている彼女は《十傑》で新参者。

 《剣聖》の能力が知られていない唯一のアドバンテージをどう活かすかが鍵になる。


「お、おい」


 そんななか、1人のプレイヤーが声を上げていた。

 

「第1フロアが崩壊してるらしいぞ」


 それは《エンペラーオンライン》崩壊までのカウントダウンが始まった瞬間だった。



 


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