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リトライチケット  作者: アクイラ(((・・;)
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第二フロアは人間関係が複雑すぎる件について ~指名手配~


 第一フロア《BOSS》シャドウウォーカーを討伐し、いよいよやってきた第二フロア。

 噴水広場がまさしく駆け出しプレイヤー向けだったのに対して、第二フロアは東京駅でもモチーフにしている出で立ち。ショップの質も高くなっており、売っているポーションの値段も少し割高。

 そこに降り立ったレインは周囲からの視線を感じていた。

 

「あ、あの」


 戸惑っていたレインに駆け寄る少女。

 

「えっと、フレンドになってもらえませんか?」

「い、いいですけど」


 フレンドに新しく【プレイヤー:ユーリ】が加わった。

 

「もしかしなくても、俺って目立ってる?」

「そうですね。イベントクエスト初クリア、第一フロア《BOSS》にラストアタックしたプレイヤーとして有名になってますよ。色んな人がフレンドやパーティーに入れないかって待ってましたから」

「さっきからの視線はそれたったのか」

「昨日の事件を見たら誰だって生き残れる可能性のある人といたいですもんね」


 今日9時42分。

 世界全土に震撼が走った。

 全プレイヤーが『エンペラーオンライン』のログインから24時間経ったその時、実に243人の不審死が各地で起こった。偶然が重なったとしては数が多く、『ブロッサム』望月潤の配信を見ていた視聴者の告発があったものの、あまりに突拍子のない話からまだ信じきられていない状態。

 だが、実際に巻き込めれたプレイヤーは気が気ではない。

 HPゲージが0になった瞬間、現実でも同様の死が待っていることからログインしてすぐ抜けるピンポンダッシュならぬログインダッシュが多発した。

 

(警察が動いたところで制作者不明のゲームに未知の技術。下手に触れば死者を増やすだけ。その責任の押し付けあいで動けないんだろうなぁ)


 文字通り円満(ハッピーエンド)に終わらせるためには、『全クリ』。

 

「せめて参加プレイヤーの【スキル】が把握できればな」


 今後の方針として《BOSS》攻略が鍵になる。

 そうなればおのずと戦闘系の【スキル】持ちが前に出ければいけない場面が多くなり、それを回避するために自分の【スキル】を隠すプレイヤーも比例して多くなってくる。

 レインはそんな中でなお、『全クリ』を目指しているため稀有なプレイヤーと言えよう。


「ある程度【スキル】で何でも出来ちゃうから面白味がないと思ってたけど、あーいう遊び方が普通なんだよなぁ」


 未知の技術とはいえ、ゲームの中。【スキル】次第で何でもできるため、自分の望む世界を体験できるというのが謳い文句だった。

 NPCであっても、高い技術のAIが組み込まれておりプレイヤーとの区別はもうつかないレベル。

 感触や匂い、五感に訴えてくるものもリアルと何ら遜色はないため、ついついゲームの中だということを忘れさせてしまう没入感は、ある種の恐怖を抱かせる。


「でも、あれは」


 隣にいたユーリもやや引き気味の言葉を漏らす。

 1人の男性プレイヤーが女性を侍らせて街中を闊歩している。

 それもとんでもない数をだ。


「多分【スキル:結城梨斗(ハーレム)】だな、登録時にそんなのがあったし」


(使い方は間違ってない、間違ってないんだけど、ゲームの中とはいえマジでやるとは)


 あぁいうことを平然とやってのける、そこに痺れはしないが憧れはしていた周囲の男性プレイヤーから羨望の眼差しと、反対に女性プレイヤーからの汚物を見るような視線を独り占めしているプレイヤー。

 他には早々に複数のプレイヤーてショップを開拓して営業をし始めるプレイヤー。

 ショッピングでお洒落を楽しむプレイヤー。

 漫画やアニメの【スキル】を存分に発揮するため、『一騎討(タイマン)ち』と呼ばれる仮のHPゲージを削り合う勝負でどちらか強いか競い合うプレイヤーなど、多種多様な遊び方が広がっていた。


「安心なのはプレイヤー同士で闘わなくていいところですよね。こういうデスゲームでは定番じゃないですか」

「たしかにな」

「ルールで他者の【スキル】を奪ったりコピーできないっていうのは、いいですよね。自分だけの世界を楽しめるのに最適ですもんね。かくいう私も【スキル:全魔法使用可能】ですし」

「ーーーーーっ!」


 レインは一瞬にして彼女への視線を変えた。

 あらゆる魔法が使用可能の彼女はこのゲームにおいて最強の部類に入るチート級プレイヤーの1人。


「ただ、MPの消費が早くて2回くらいしか使えないんですよ。だからせっかくの第2フロアの《BOSS》クエストが出てるのに足踏みしちゃって」


 ユーリの言葉通り既に次の《BOSS》討伐クエストが出現していた。

 


  《BOSSイベント:ネビュラスマーメイド討伐》


 『黒渦の海』で唄うネビュラスマーメイドを倒せ!


  ※参加人数  無制限

  ※支給物資  体力ポーション(中)

         MPポーション(中)

  ※ボスのいるフロア内以外での転移系の【スキル】や

   アイテムは発動しません。

  ※ネビュラスマーメイド or プレイヤーの全滅以外で

   ボスのいるフロアは開きません。

  

「フィールドは水中の可能性が高いんだよな。額面通りの属性なら雷系の魔法が使える人がいてほしいんだけど」

「レインさんのパーティーにはいないんですか?」

「みんな、身体能力や生産特化なんだよな。シャドウウォーカーみたいな純粋なプレイヤースキルだけならまだしも、属性縛りだと厳しいかも」

「あれ?でもこの【スキル】って」


 目の前のユーリが言葉を発するより先に、人差し指で口を止めるレイン。

 そして、もう片方の指を自身の口に当てて黙っててくれ、と苦笑いしながらジェスチャー。


「俺の【スキル】は内緒にしてくれ」

「分かりました。これ随分チートじゃないですか」

「ユーリだって色んな【スキル】持ってるじゃないか」

「実はレインさんのおかげでイベントクエストクリアできまして、その時の報酬が【スキル:鑑定眼】だったんです」

「俺のおかげ?・・・もしかして」

「はい。【クエスト:ドレスコード】でレインさんに攻略方法を教えてもらったおかげで助かったんです。それによく分かりましたね、あんな初見殺し。どっかに攻略記事でもあれば楽なんですけどね」


(たしかにそんなものがあればいいけどな)


 レインはどこか後ろめたさを感じながらユーリの言葉を反芻していた。

 目の前で殺されたプレイヤー。

 もっと早く声をかけていれば救えたはずの命。

 

「あ、」

「どうしました?」

「俺も【特殊スキル】もらってたのにすっかり使う機会なかったなって」


 『スキル一覧』から【特殊スキル:王家の威光】を発動させる。

 すると手元に短剣が握られる。

 短剣の鍔の部分は《エンペラーオンライン》のロゴである六芒星に渦巻く竜の紋章が刻まれていた。

 

「これってPVで出てた『EXA(エグザ)』ですよね」


 《エンペラーオンライン》のYouTube映像には理想の世界を描けるコンテンツとして、様々なジャンルがあり、その1つのバトルコンテンツでは王道の闘うことをメインとしたものがある。

 他にはデートできる萌えコンテンツ。

 釣りや建築を楽しめるスローライフコンテンツなどなど。

 そして紋章が刻まれたアイテムが映像の中に現れたが、詳細などは全くなく、ネットではエクストラアイテムを縮めて『EXA』と呼称されていた。


「・・・レイン?」

「うわっ!!!」


 後ろから聞こえる声に狼狽え、飛び退く。


「・・・そちらの方は?」

「ユーリだ。さっき知り合ったんだよ」

「・・・そう。ドラ達が探してたから呼びに来たんだけど」

「《雪鬼姫》のシノブさん、ですよね?」

「・・・私を知ってるの?」

「知ってるも何も、数々の格闘ゲームで見かけないことはないとされるランキング上位。他にも皆さんの名前で検索かけると、様々な推理ゲームRTA保持者《探偵レイン》さんやFPSトップランカーの《殲滅のドラゴン》って出てきたんですけど本人ですか?」

「3人とも本人だよ。最近は組んでる事が多いね」


 得意ジャンルが異なるレイン、ドラゴン、シノブの3名を繋ぐことになった共通点もゲームなのだから、彼らの生粋のゲーマーであることがうかがえる。

 

「そうだ!ユーリの【スキル】でこれ見れるか?」

「やってみますね」


 『EXA』の短剣を凝視し、詳細を鑑定してもらう。

 

(どこまで解析できるかは分からないけど、ゲーム攻略が早まるならそれに越したことはない)


「メッセージ?なんか六芒星のところに視点を合わせると『鍵と門番』って書かれてますけど、それ以外は『12』って数字だけですね」

「・・・鍵が12本あるってことなのかな?」


 シノブとユーリがそれぞれ思考を巡らせている中、レインは意外にも早く結論を出していた。


「多分、鍵は全部で6本だな」

「どうしてです?」

「紋章が六芒星だからだよ。それに12って数字は六芒星の上の点を表してるんじゃないかな?現段階で鍵、、、あるな」


 『所持項目(ストレージ)』から《BOSS》を倒した際の戦利品を出現させる。謎の鍵と表記されるそれは確かにレインが持つ物の中で『鍵』と呼ばれる情報に合致するものたった。

 レインの推測が正しければ残り5本の鍵を入手するためのイベントが存在する。

 

「・・・ネビュラスマーメイドを倒せば鍵が手に入るの?」

「あとはこの鍵の使い方だ。どこの錠を開けるための鍵なのか分からないとガラクタのままだ」

「よし!決めました!私は情報屋を始めます!皆さんの情報を集めて共有する場になります。そうすれば皆生き残れますよ」


 願ってもない申し出だった。

 レイン達が集まれる場として、またプレイヤー達が情報という武器を預ける場として信用できる相手が必要だった。

 そして、その人物は決して『☠️GAMEOVER☠️』にはなってはいけないという条件をクリアできることが前提。彼女の【スキル:全魔法使用可能】は2回と制限はあるものの【スキル】以外の魔法を使用でき、【スキル:鑑定眼】と組み合わせれば情報戦で負けることはないだろう。 


「ユーリの店を構えるなら資金集め協力するよ」

「ありがとうございます。皆さんはパーティー名あるんてすか?望月潤はネットで『SAKURA』って名前で仲間を募集してましたけど」

「俺達はシノブやドラと組んでたときに使ってた『暁月(あかつき)』だよ」

「ではお得意さんにしますね。それにレベル上げもしとかないといけないからフロア情報も欲しいし、やっぱり私も少しは闘わないとダメですね。『鮮血(ブラッド)盗賊(ギャング)』の情報もありますし」


 噴水広場でのクエストでプレイヤーを殺したバンダナの人物はゲーム内におけるランダムエンカウントの敵キャラクター。

 クエストで失敗したプレイヤーに向かってくるだけでなく、一定確率で出現し、襲いかかったり『所持項目』からアイテムを盗んでしまう厄介極まりない。

 それもこれも噴水広場同様に、この『プラットホーム』と呼ばれるフロアにある掲示板によるもの。噴水広場が憩いの場だとすれば、プラットホームは流通が栄えているためアイテムが豊富だ。その分だけ値段はするが。


「指名手配の敵キャラを倒せばアイテムやお金、さらには【スキル】まで手に入る可能性がありますからね」

「・・・レイン、話が進んでるところ悪いけどそろそろ」

「あ、そうだな。じゃあなユーリ」

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