友人の心
不思議なこともあるものだとリモネルは首を捻る。
すると三体も「ぷもも」と首をちょこりと捻る。
「ふふふっまた真似をして、ふふ、あはははっ」
邪魔だ役立たずと罵られ追い出された元聖女。
孤独に砂漠で生きるはずの小娘が、大笑いして愉快に過ごしてるなんて誰が想像できただろう。
干乾びて哀れな屍にとなら容易く想像は出来るだろうが。
「メイドさんが出来ました、そうするとマールとゴッツは騎士様かな?」冗談のつもりで言う。
するとマールとゴッツが片膝をついて頭を垂れた。
「ええ!?ちょっと待って待って。あのね、あなた達は従者でも護衛でもないのよ、
お友達なのよ?サンディもメイドなんてしなくて良いのよ」
理解が出来ないのか3体はじっと私を見るばかりだ。
「そもそも無機質な物体なはずなのよね、そりゃ大切な友達なんだけど」
まるで心を宿したかのような3人に戸惑いを隠せない。
遠い異国の書物に、長く使い込んだ道具や人形には心が宿るのだという夢物語を読んだが、あくまで架空だろう。
物を大切に使えという戒めを込めた作品だった。
(この子達とは2日しか一緒にいないのだし無理があるわ)
「狼狽えてもしかたないわねぇ試してみましょうか」リモネルはため息をついた。
「んんっ、呼んだら手を上げてね、マール!」
クイッと丸い頭のマールが嬉しそうに手を上げた。
「ゴッツ!」
一番大きく厳つい体型のゴッツが天を突くかのように手を上げた。
「サンディ!」
ふわりと女性らしい所作で手を上げた。
「なんてことかしら!まるで自我があるようだわ。名前をちゃんと認識してるし・・・」
喜怒哀楽が彼らにあるのかは甚だ疑わしいが、そう思わずにいられない。
(笑う表情に関しては真似ていると思うのよね、仕草も真似てるし)
うんうん、悩みつつサンディの作ったサンドイッチを味わってみた。
城で出された味にソックリ再現されてる気がする。
「ひょっとして私の思考や記憶が繁栄されてるのかしらね?」
この考えがシックリした、細かい所を突っ込まなければ・・・・
この子達を創造したのは自分なのだから、私という人間に連動しているのかもしれない。
リモネルはそう片づけるしかなかった。
「クスッ、友達というより子供のようね
私の魔力と想像で具現化した彼らが家族のように思えてきたわ」
クスクス笑う私を真似てか、3人も笑うそぶりを見せた。
なんて幸せな朝なのだろうと、リモネルは心が温かくなった。