砂漠の夜は寒かった
1話抜けておりました(自分にガッカリ)
部屋空間はがらんどうだった、当然なのだがリモネルは落胆した。
調度品などを作りたいところだが流石に疲労と空腹で限界に来ていた。
なにより魔力がつきかけて眠くて仕方がない。
埃を払い浄化魔法をかけると床にへたり込んだ。
「も・・・無理~・・・眠いよ」
ショルダーバッグを枕にスヤスヤと寝落ちてしまう。
3体の友人たちは彼女を護るかのように囲み、立ったまま動きを止めた。
砂漠に夜の帳が掛かる、やがて無風になり静寂が広がった。
なにもかも闇一色になった頃、リモネルは盛大なクシャミをして目を覚ました。
「さ、寒い!暗い!え?どうして・・・あんなに暑かったのに」
眠い目を擦り覚束ない足取りで外に出た。
「うわぁ・・・」
満天の星空がそこにあった、濁った砂嵐を想像していたので酷く驚いた。
空気が澄んだのは寒さのせいでもあるのだが、リモネルは砂漠の寒暖差に恐れ慄く。
慌てて家へ戻り、蝋燭に火を灯し辞典を開く。
「あぁ・・迂闊だったわ、ここの非常識さを忘れるなんて」
雨がまったく降らいない悪魔の鍋は、放射冷却で寒暖差がすごいのだ。
「世界中から見放されるわけよねぇ・・・王が所有国がないって言ってたもの」
広大なこの地を何とか利用すべく、各国が研究し魔導士たちが挑んだが成す術なく放置されてきた。
資源もなく旨味のない地獄なだけの大地に利権が発生しなかった。
「おかげで私は所有権が貰えたわけだけど・・・
からっぽの悪魔の鍋に匙を投げた・・・まさに何も掬える(救える)もの無しということね」
リモネルは震えながら文献をなぞる、途中で根をあげ、湯と茶器を創造して紅茶で暖を取った。
温かい毛布と敷物を創造したが少し失敗してゴワゴワな肌触りに顔を顰めた。
よく見ればカップも歪でザラザラしている。
魔力が回復してない上に疲労で集中できないせいだ。
体が温もりを感じたリモネルは船を漕ぎ始める、なにか硬質な存在がそっと抱え込んだ気がした。
「オナカスイタ・・・メイドサン・・・サンドイッチツクッテ」
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何かの香が鼻をくすぐった。
「・・・うーん・・・朝ご飯ですかぁ?」
起き上がろうとしたが体が強張って痛みが走った、硬い床と質の悪い毛布で寝ざめは最悪だ。
薄っすら目を開ければ白い空間が見える、細長の窓から陽が射しこめている。
「あぁーそっか砂漠に越してきたんだわ」
白くてキラキラ美しい部屋を再確認すると笑みが零れた。
「ふふっ素敵、この部屋に合う箪笥やソファを作らなきゃね」
ググーーッ
お腹の音にハッとした、移動中林檎と硬いパンを食べて以来は水しか飲んでない。
「衣 食 住、食が一番じゃないの・・・馬鹿ね、それにしてもこの匂いなに?」
キョロキョロと見渡すと歪んだ茶器に湯気が昇っている、ソーサーには白いものが乗っていた。
「こんなもの寝る前用意したかしら?淹れたての紅茶も変よね」
ふいに背中を何かが触れた、若干ごついメイドが恭しくお辞儀をしている。
「あ、あなたサンディ!?」
想像力が悪くて、3体はカクカクとした厳つい体型の傀儡人形なのだ。
目の前のサンディもカクカクしているがちゃんとお仕着せを着ていた。
(こんな服着せた覚えがないんだけど)
サンディは口らしきをニッと上げ、皿を此方へ差し出した。
「サンドイッチ!?あなたが作ったの?材料もなんにもないはずよね」
するとサンディはジェスチャーをした、頭部をトントン、お皿をトントンと叩くような素振りを繰り返す。
「創造したの!なんて器用なのサンディあなたスゴイのね!」
彼女が歓喜の声を上げ賛辞をすると、サンディは得意気にニッコリ笑い、恭しいお辞儀を披露して応えた。