砂漠の友人
水が溢れ落ち着くと穴を中心に水溜りが出来た。
とても小さいけれどコンコンと冷たい水は湧いている。
「干上がることはなさそうかな?これでヤシかサテツが生えてたらオアシスぽいよね」
(でも変ね、井戸って汲み上げないと水は出ないはずよ?)
「なにか失敗したかしら?それにしても随分涼しくなったわ」
日傘代わりの雲遮光とドーム型に展開した結界に水を流し続ける、これの効果で過ごしやすくなっていた。
干物にならずに済みそうだ。
本の知識ばかりなのが悲しいけど、城で引き籠り生活してきたのだから当然だ。
さすがに樹木は想像では生えない、少し寂しい景色だ。
「・・・・・」
ふいに寂しいという感情が湧いて今更ながら心細くなった。
「不思議なものね王城に住んでいた時は一人になりたくて仕方なかったのに」
人はコミュニケーションをとる生き物だ、当たり前のことだったのに。
昔、幽閉された罪人が孤独に耐え切れず、心を病んでしまった話を思い出しゾッとするリモネル。
「誰に聞いた話だったかしら?・・・」
リモネルは目を眇め、おかれた状況と虚無と不毛の世界を改めて実感した。
周りは白い砂ばかり・・・砂・・・ん?
「そーよ、砂はいくらでもある!使い放題よ!」
―――30分後
「えーと、お前は丸っぽいからマール」
「それからゴッツ」
「お前はサンディ」
無機質な砂人形たちへ言葉をかける様は人の目には奇妙かしら?
そう思いつつ、ここには誰もいないのだからどうでもいいことだとリモネルは自嘲した。
「私の名はリモネル、今日から私達は友達よ、よろしくね」
砂の友人にカーテシーをした、創造した人形達がそれに倣って応えた。
「まぁ!貴方達は覚えるのが早いわ。とても賢いのね、でもゴッツとマールは男の子だからちょっと変よ?」
所謂ゴーレムという2mほどの大きな友人、その出来にご満悦なリモネルだ。
「次は家を建てましょう、どんなのにしましょうか」
分厚い辞典を広げ思案する、人形達も真似て本を見つめる。
四方1キロほど結界を張る家屋を創造した。
音もなく白い砂が固まり白くキラキラした全長20メートルほどの宮殿が出現した。
しばらくはアクアウォール仕様。
「んーなんか違うけど綺麗だからいいかしら?」
もっと小さくて可愛いのを考えたはずなのにと、独り言ちる。
砂がガラス質なのか表面がツヤツヤでとても美しいので良しとした。
「ねぇ、どう思って?」友人たちに声をかけると3体とも首を「ぷも」っと傾げこちらを見た。
動く度に「ぷも」「むぷ」と珍妙な音がする。
「ぷふっ可愛い、それ私の真似?ふふふふっ可笑しい」
すると3体の口らしき箇所が弧を描いた「まぁ!笑ったのねスゴイわ!」
「お喋りもできると良いけど、ごめんね今の私のチカラではダメみたい」
魔法の鍛錬もしなきゃいけないとリモネルは張り切る、いつか会話してみたいと強く願った。
「じゃあ出来立てほやほやの御家に入りましょう!」
一人と三体の奇妙で楽しい生活が始まった。