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穀潰しと言われた聖女は自給自足する   作者: ハバネロあんこ
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ボッチの一歩(旅立ちの準備)

城下町をノロノロと歩いた、なるべく壁際の端っこを選んで。

街は活気に溢れて人々も足早に通り過ぎて行く、しばらく歩くと香ばしい香りが鼻を掠めた。

途端に腹が鳴った、空腹を思い出した途端情けないほどグーグー鳴る。


ここは王子達とお忍びで来たことがある商店街だと気が付いた。

流行りのカフェとか、ファンシーショップばかりだったけど。


(恥ずかしい・・・)

鳴るオナカを押さえキョロキョロと長く続く屋台を探す、何でもいい胃になにか納めたかった。

ジュウジュウと肉を焼く店が目に留まる「お嬢ちゃん、1本どうだい?」

頭にタオルを巻いたおじさんが声をかけてきた。


「1本ください」

「はいよ!銅貨5枚だよ」


それは香ばしくてちょっと硬くて王城で食べたことがない肉質。

美味しいのか不味いのか、今はどうでも良くて味もわからないがとにかく飢えを凌ぐ。


人混みを避け道端で、もそもそと食みながら商店街を見まわした。


一人で生きるに何が必要か模索する。

(まず衣食住の確保よね、必要最低限の備えはしておかなきゃ)

己の持ち物を再確認する、ショルダーバッグ(亜空間収納付与済)には突き返された金貨銀貨銅貨、化粧ポーチ、装飾品が数点その他。


胃が満たされ持ち物をチェックしたら随分冷静になった。

「そうよ、自由になれたんだし、王から褒章はもぎ取ったわ!」


褒章品はこの世界で誰も欲しがらないような【ゴミ同然】のものだったけど私は満足だ。

『あんなものどこの国も放棄しとる好きにしろ』と言質と所有権利書は頂いた、誰にも文句は言わせない。


先ほどまでの焦燥と悲しみは消えていた。

「そうよ、好きにさせていただくわ!」

マナーや所作がどうたらと小煩い侍従や付きまとう護衛もいない。

目つきが悪いとか、愛想が無いとか嫌味をいう妹も王子もいない。

なんて素晴らしい!

この世は美しくも汚く、そしてなんて愛しいのか。


少々大袈裟に感動した自分が痛々しいと思いつつ―――。

とりあえず町のゴロツキやスリに遭遇しないよう、自分に防衛魔法を2重掛けし、地味な服色へ変化させとある店を探す。



数十分後―-

【山野草園芸店】の看板をようやく見つけた。

小さく古びれた佇まいだが、手入れの行き届いた店内で、楓蜜のような優しい匂いがした。

店主の丸眼鏡のおじいさんがロッキングチェアで舟を漕いでいる。


「ごめんください!種が欲しいんですが」

「ぅお!?・・・あーいらっしゃい」


おっこらしょと、気怠そうに店主が薬草と種子のカタログを広げて見せてきた。

「御入り用のものを番号横へ数量を書いとくれ」黄ばんだ注文書を差し出された。

「あのう、温暖地用の植物はありますか?」

「はてな?ちょっと待っとくれな」


奥の埃まみれた台帳らしきを出し、咳き込みながら店主はページ繰り唸っている。

「私が見ましょうか?」

「そうか?すまんね細かい字が見え辛くてねえ」


台帳には研究用世界珍種百選と書かれていた。

珍種扱い・・・美味しいのに・・・気候があわなければ栽培できないけどね。

「嬢ちゃん、畑仕事しそうもないけどなにもんかね?」

「・・・えとあの色々入用になりまして、色々とオホホホホ」苦しい言い訳をした。


日焼けなどほとんどしない肌色だ、不審に思われても仕方ない。

なぜだか哀れみの視線が刺さる・・・(若いのに気の毒に)とか聞こえたが無視しとこう。



目当ての種子を数種を購入した、代金は思ったよりやや高め、王室や大学研究室しか使わない為だろう。


「かわったもんを欲しがるね、そこのも持ってくかい?ただでかまわん」

「え?」

店主が指差したのは赤茶色の寸胴な実だった、見たことがないそれは棚影の隅に山と積まれていた。


「仕入れたはいいが、栽培方法がわからないらしくてね。邪魔だから貰っておくれ」

かつて王家が貧困層に広めようと取り寄せた植物らしい。

痩せた土地でも育つ穀物だが栽培に失敗したとのこと、有難く頂戴いたします!


貧困層でもってのがちょっと気にかかるが、私はそう見られたのかな?

無職で天涯孤独で先が見えないし貧困には違いない。


私はそれから書店へ赴き分厚い専門書をいくつか購入した、こちらも良いお値段だった・・・。

生きるための初期投資だ、仕方ない。


それから保存食と日用品を買い漁り、一段落した頃には陽が落ちていた。

安宿に一泊したが、緊張と逸る気持ちで早朝の出立まで眠ることが出来なかった。

書き貯めてるので一気に更新します。

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