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最後の宴を  作者: 櫻坂暖依留
1章   学園時代編
8/10

始まりの卒業を


目を覚ますと病室にいた。


 「いった…。」


 起き上がろうとすると、身体が痛かった。


 横を見ると祈祷がいた。

 

 その後看護師さんから話を聞くと、俺は一週間ほど意識がなかったそうだ。


 主な原因は魔の大量消費だそうだ。

 まあそうだろうとは思っていたが。


 祈祷は3日、カエラは2日意識がなかった。

 

 


「いやあ〜、ほんと怖かったよ。中々目を覚まさないからさ。死んだかと思った。」


 「心配かけてごめん。祈祷は大丈夫なのか?」


 「うん。まあ一応?病院にいる身だから完全に縦に首を振れないけど。」


 「大丈夫そうならいいけど。」


 「ああ。」


 「失礼します。」


 高い声が響いた。


 「おお!カエラー!」


 「何よ、物珍しそうに。」


 「何気に意外だよな、そう思わないか?ソルト。」


 「多少は意外だよ。()()()と比べると。」


 「なんなの、2人して。酷くない?」


 カエラは頬を膨らませた。


 「ごめんって」


 「まあ、そんだけ憎まれ口叩けるんなら元気ね。」


 「ツッコミできるカエラも元気だな。」


 「氷漬けにするわよ。」


 「ひぃ!ソルトぉ!」


 「自業自得だ。」

 

 そんな楽しい時間が過ぎていった。


 

 

 

 ︎   ◇◇◇

 

 

 


 あの騒動から2週間。

 すっかり元気になった俺達は、校長先生に呼ばれた。


 「話したいことがあるん。」


 見た目は60歳、語尾は6歳な校長先生はそう言った。

 ……男性だ。


 「今回の騒動では第一線に立ち学園と生徒を護り、奮闘してくれたことに感謝するん。」


 敬意を表す、と言ってくれた。


 「「「有り難きお言葉です。」」」


 「しかし、今回の1件で卒業試験を行う事が難しくなったん。」


 そうだろうな、とは思っていたが現実に言われるとくるものがある。

 卒業長引くな……。


 「しかし、魔法兵士の数が少なくなっているのに卒業者を出さない訳には行かないん。」


 「「「え。」」」


 俺達は話の流れに混乱した。


 「今までの成績。そして今回活躍してくれたという証言。何より死者を出さず、けが人を最低限に留めた事実よりん。」


 「カエラ・アトリエ」


 「はい」


 「祈祷」


 「はい」


 「ソルト」


 「はい」


 「以上3名を卒業とし、魔法兵士とし戦う資格を与えるん。」


 「「「…………!!!」」」


 「「「あっ、ありがとうございます!!!!」」」


 「子供らしく喜ぶといいん……。」


 そう言われた瞬間、


 「やったああああああぁああああああああああああああああああああ!!!!」


 祈祷が叫ぶ。


 「私たち、そ、卒業??!?」


 いつもはクールなカエラもこの驚きよう。


 「ああ!!!」


 俺も興奮が隠せない。


 「頑張れよん。」


 俺達は晴れて卒業することが決まった。


 

 

 

    ◇◇◇

 

  

 

 

○月○日。

 俺はシルド学園の校門前にいる。


 卒業と言われてから俺はルドーさんに手紙でその旨を伝えた。


 そして3ヶ月に1度帰れなくなることも。


 3ヶ月に1度帰っていた理由は検査の為だ。


 多分あの日拾われてから何処か異常かないか心配してくれていたのだろう。


 そういえば、検査くらいなら学園でもできるのだがそれをルドーさんは頑なに断っていたな……。


 何でだろう。


 まあルドーさんの家までは少し距離があるが、魔法を使えば大したことないのでいいんだけど。


 学園も許可してくれているし。


 「クルッポー!」


 伝書鳩の鳴き声が聞こえた。


 「おお、よしよし。持ってきてくれたんだな!ありがとう。」


 「ポー!」


 足に括り付けられた手紙を受け取ると飛んでいった。


 「なになに……。」


 『ソルトへ

 

  卒業おめでとう。 

  新たな1歩を踏み出してくれたこと、

  とても嬉しい。

  3ヶ月に1度会えなくなるのは残念だが、

  もう検査も大丈夫だろう。

  ……実を言うと寂しかったのもあるんじゃが。

  いい大人がみっともない事書いたな。

  しかし身体に異常を感じたら

  すぐに来るんじゃぞ。

  それは約束してくれ。

  お前の本当の親ではないが、

  お前を本当の息子のように思っている。

  いつでも心配しているんじゃからな。

  これから大変なことが沢山あると思うが

  挫けず頑張れよ。

  いつでもお前を思っとるからな。

   ルドー』



 なんだか珍しかった。


 そして本当に喜んでくれている事を感じて胸が熱くなった。


 ありがとう、ルドーさん。


 俺も本当の親のように思っているよ。


 

 

 

    ◇◇◇


 

 

 

 私、カエラ・アトリエは職員室前にいる。

 最後に会っておきたい人に会うために。

 私はドアを叩く。


 「失礼します。ミネルバ先生。」


 職員室にはミネルバ先生だけだった。


 「カエラ!来てくれて嬉しいわ!あ、職員室すっからかんでしょ?みーんな外に出てるのよ。瓦礫掃除。あ、私?カエラが来てくれるかもと思って待ってたの。ほんとよ?」


 なんだか安心する。


 「ミネルバっわっ先生。」


 たどたどしくなった。


 「ミネルバでいいわよ。そういえば学生になったら私の事ミネルバって呼ばなくなったわねぇ。」


 「さすがに先生とつけた方がいいと思ったから……。」


「いい心構えね。」


 「改めて。ミネルバ、私卒業します。今まで本当にありがとう。この恩一生忘れないわ。」


 「本当、立派になったわね。あーんなにちっちゃかったのに。」


 「成長しましたから。」


 「そうよね……。ねぇ、少し気になっていること聞いてもいいかしら。」


 「何?」


 「本当に、()()するの……?」


 「……はい。」


 「……意志は堅いようね。もうこれ以上は何も言わないわ。ドーンと頑張りなさい。」


 「はい。ミネルバ。」


 私はもう少し雑談をした後職員室をあとにした。


 

 

 

    ◇◇◇


 

 

 

 「おーい!!!」


 祈祷が手を振りながら歩いてきた。


 「待たせてごめーん!」


 「いいよ。カエラは?」


 「見てないけど。俺よりも遅いのか。」


 「なんだか珍しいな。」


 「うん。珍しい……って酷くないか?」


 「ごめんごめん笑」


 「遅くなってごめんなさい。」


 「やっと来たかカエラ!」


 「何?威張ってる?まあ祈祷が私より早いの珍しいけど。」


 「カエラまで!」


 「まあまあまあ。」


 俺は祈祷をなだめた。


 「これから頑張らなきゃなぁ。ほんと。」


 「そうだね。」


 「うん。」


 「祈祷とカエラは目標、なんかあるのか?」


 「うーん。私は偉大な騎士(トップナイツ)になりたいな。女性初の。」


 「俺はまだ目標はないかな。でもみんなを護れるよう強くなるよ。ソルトは?」


 「やっぱり記憶取り戻すことが大きな目標かなぁ。」


 2人は俺の記憶のことは知っている。


 「スタートラインにたったばかりだもんね。」


 「頑張るよ。ほんと。」


 「さーてと!行きますか!」


 「祈祷張り切ってる?」


 「多少は?結構緊張してるけど。」


 「まあ無理もない。うん。行こうか!」

 

 俺達は、成長し強くなった。

 そして今。

 2年前とは逆向きに校門を通った。

 


 

 

    ◇◇◇


 

 

 

 時はダウトを倒した時に遡る。

 

 「ボス……。役目果たしましたぜぇ……ケケっ……。あいつを()()させましたぁ…………。」


 そう言い残し消滅した。

 

第1章これにて完!

まだまだ続きますのでよろしくお願いします!


豆知識!

偉大な騎士トップナイツについて。

魔法兵士でも特に優れた人に与えられる称号。なることにも試験がいる。

今は4人いる。女性は今までなったことがない。

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