始まりの宴を 2
ここに住むことになって2日目。
俺はルドーさんに身体を調べられた。
ルドーさんは、この村の医者らしい。
「ソルトお前まだ9歳じゃないか。」
そうらしい。
なんと言ってもルドーさんは魔を持っているそうで、
「わしは、人体の魔をもっているんじゃ。この力を使えば推定年齢や何かの病を調べることができる。」
「そうなんですね。」
黙々とルドーさんは俺の身体を調べていく。
「しっかしお前大人っぽいな。まだ9なのに…。記憶を失ったことで性格に影響を及ぼしたんだろうか……っ!?」
ルドーさんは目を見開いた。
「?。どうしたんですか?」
「よく聞け…。ソルトお前魔持ってるぞ。」
「魔ってルドーさんのそれですか?」
「 そうだ。魔というのは500人に一人にしか宿らない。お前は 貴重な存在なんだよ。」
「へー。」
実感が湧かなかった。
魔というものが何かまだよくわかってないせいでもある。
「ははっ、なんだ?その阿呆面は?」
そう言って笑う。
「すみません。まだよくわかってなくて……。」
「まぁ仕方ないだろうな。いいか、魔というのは魔法の源だ。それを宿していれば魔法がつかえるってことだ。」
「ふえー。」
魔法かー。と俺は思うだけだった。
「そしてソルト。お前は風の魔を宿している。今は使えないだろうが訓練さえすれば使いこなせるようになる。記憶を取り戻すこともできるかもしれない。」
「!?ほんとうですか、それは!」
多分な。とルドーさんは言った。
「お前の記憶を奪ったのは『もののけ』じゃ。頭に傷は見られず、異常も見当たらなかったが、首には噛まれた跡がある。」
「その『もののけ』というのはなんなんですか!?」
感情的になってしまった。
「まぁまぁ落ち着け。説明してやるから。」
そう言って俺をなだめた。
「……はい。」
「よし。『もののけ』というのは物の怪ではない。妖怪とも違うが人間とは種類が違ういきものだ。そいつらは人を殺しその人の魂を食らう。」
……ごくり。
「そのもののけに対抗する手段。それは魔で攻撃すること。魔をかえした攻撃でないと傷ひとつつかない。」
「だから記憶を取り戻すことができるかもしれないんですね…。」
もののけか……。
「あぁ。だからソルト。お前は魔法兵士になれ。」
「魔法兵士とはなんですか……?」
「魔法でもののけを倒す者たちのことじゃ。そこでソルト。お前も魔法兵士になれ。そうしたらお前の記憶を奪ったもののけに会うことができるかもしれん。」
「魔法兵士にはどうやってなるんでしょうか……?」
「シルド学園という所で魔法兵士になるための訓練を受けられる。」
「ルドーさん詳しいですね。」
「まぁな。わしは一応魔法を使えるし、ここらへんのことは基礎知識じゃ。みんな大体知っておる。」
「ヘェ〜」
ルドーさんの話してくれる内容はとてもわかり易かった。
「まぁ学園に入れるのは12歳からだ。あと3年ここでいろんなことを学べばいい。」
「はい。本当にありがとうございます。」
◇◇◇
それから俺はルドーさんの仕事の手伝いをしながら自分の魔法を扱えるように特訓をしていった。
俺は疾風の魔を持っていることが後々わかった。
多少の攻撃魔法を使えるようになったがどのようにもののけを倒すのかよくわかっていない状況だ。
もののけの撃退方法は巷には出回っていない。
なぜ出回っていないのか、みんなも不思議に思っている。
まぁそれも仕方のないことかもしれないけど。
とにかく俺は自分の記憶を取り戻すために一生懸命であった。
ーー3年後ーー
シルド学園の門の前。
俺は12歳になった。
今日からここで学び記憶を取り戻すために戦う訓練を受ける。
今ここから始まる。
俺ともののけとこれから出会う仲間たちと……。
記憶の物語が。