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昭和転生  作者: 佐藤謙羊
14/24

14 元手づくり1

「はぁ、楽しかったぁ! そうだ! 宝箱のなかにシェイクのタダ券があったから、せっかくだからシェイクを飲みましょうよ!」



 アーネストの提案でショーマたちは再び『モンスターバーガー』に行き、3人分のシェイクを貰った。

 そしていま、それをチュウチュウ吸いながら帰りの電車に揺られている。


 アーネストは宝箱に入っていた、ぬいぐるみやらティッシュやらの粗品を抱えてホクホク顔。

 ママリアは賞金の1万円を預かり、これまたホクホク顔。



「まさか遊びに行って、こんなに色々貰えるなんて思わなかったわね! しかも1万円まで付いてくるなんて!」



「はい。これも、お姉ちゃんとショーマさんのおかげです」



「そういえばショーマ、まさかあんたがあれほど剣術が上手だなんて知らなかったわ!」



 アーネストが珍しくほめてくれたが、ショーマはうわの空。

 「ああ」と生返事をしながら、姉を見つめる。



「なぁ、冒険者って儲かるのか?」



「なによ急に。なんたって危険な仕事なんだから、儲かるに決まってるでしょ。それに、子供のなりたい職業のナンバーワンでもあるのよ。あ、わかった、今日のことで味をしめて、大人になったら冒険者になりたくなったのね?」



「ああ、その通りだ。でも大人になったらじゃなくて、今すぐにだ」



「はあっ!? まだ6歳のクセして、何言ってるのよ!?」



「冒険者になるのに、年齢制限とかあるのか?」



「冒険するだけだったら年齢制限なんてないけど、それすら無理ね。だって地下迷宮(ダンジョン)に入るための『復活(リバイブ)』と、『離脱(エスケープ)』の宝玉がないと」



「それって、どうやったら手に入るんだ?」



「街の冒険者用品店とかで売ってるけど、高いわよ。どっちも使用時の成功率が100%のやつじゃないとダメだから。それでも、『離脱(エスケープ)』の宝玉のほうは1万円くらいだけど、『復活(リバイブ)』の宝玉は、ひとつ200万はするわね」



「に、200万!?」



 ショーマが『かつていた世界』の価値に換算すると、だいだい800万円くらいだろうか。

 でも、生命が助かると思えば妥当……むしろ安いくらいともいえる。



「ギルドに所属していればもっと安くなるみたいだけど、どっちにしたってそんなお金、子供のショーマじゃ逆立ちしたって出せないでしょう? それに今日の『わくわくモンスター地下迷宮(ダンジョン)』と違ってモンスターはゴブリンとオークだけじゃないし、罠もいっぱいあるから、ショーマなんてすぐ死んじゃうわよ」



 ――3人分ともなると、600万円か……。



 と心の中でつぶやくショーマ。



 ――冒険者になるためには、元手を稼がなくちゃならないってわけか……。


 小1を雇ってくれるアルバイトなんて、どこにもなさそうだし……。

 今日の『わくわくモンスター地下迷宮(ダンジョン)』を繰り返して賞金稼ぎするという手もあるけど、効率が悪すぎる。


 それにあそこのスタッフは1万円出すにも相当渋って、ずっとトボけまくってたから、また行ったら入場を断られるかもしれねぇな。


 アーネストの攻撃力と、ママリアの魅了(チャーム)と治癒があれば、やっていけるかと思ったんだが……。

 その前の段階で躓くとはなぁ……。


 あ~あ、なんかいい金儲け、ねぇかなぁ……。

 結果のわかってる競馬くらい確実で、楽ちんで、それもいちどに大儲けできるような……。



 ショーマは心の中でぼやきながら、ふと姉をチラ見。

 黙っていればビスクドールのように可愛らしく、絵になる横顔の彼女は、シェイクを吸っていた。


 が、突然パッと口を離して、すべてを台無しにするようなしかめっ面を浮かべる。



「このシェイクってヤツ、不味くないんだけど、何か物足りないのよねぇ……? ショーマもそう思わない?」



 なんの気なしに話題を振ってみた姉は、弟が目をまん丸にして、瞬きも忘れていることを不思議に思った。



「……? どうしたのよショーマ? 急に、晴天のへきへきみたいな顔して」



「……そ……それだぁぁぁぁぁぁーーーーーっ!!!!」



 ショーマがいきなり大声を出したので、その車両にいた乗客みんながらびっくりして、カーブでもないのに大きく揺れていた。



 ◆  ◇  ◆  ◇  ◆



 ショーマは地元の商店街に着くと、ママリアを拝み倒して、あるものをねだる。

 馬券には猛反対した彼女だったが、ソレに関しては、微笑ましいものを見るような笑顔を浮かべて買ってくれた。


 帰宅したショーマはちゃぶ台を占領して、ハサミやカッターを使って工作をはじめる。

 それは1日がかりで、ようやく完成。



「で……できたっ!」



「ずっと熱心に作ってると思ってたら、なにそれ。そんなものいくらでもあるでしょうに」



 いかにもつまらないモノを見るかのような姉に、ショーマは不敵に笑う。



「いいや……! これは『わらしべ長者』の藁……! 俺たちに大金を運んできてくれる、()、なんだ……!」



 そして台所で朝食の片付けをしていたママリアに飛びつくと、エプロンを引っ張った。



「おいっ、ママリア! 今から出かけるぞ! 支度しろ!」



「ええっ!? どちらにですか!?」



 ショーマがエプロンをぐいと引っ張ると、オモチャみたいに連動して、母の困り眉と胸が動く。



「プレゼンだ! それにはお前がいなきゃダメなんだ! だから付いてきてくれ!」



「ぷ、ぷれぜんっ!? よ、よくわからないのですが、ショーマさんが、ママを必要としてくださるなら……!」



 ◆  ◇  ◆  ◇  ◆



 ここは、都内某所にある『モンスターバーガー』本社。

 1号店を出店してそれほど日は経っておらず、まだ都内に数店舗しかないので、その本拠地も雑居ビルの一角と、こぢんまりしている。


 しかし今や一大ブームを巻き起こしているだけあって、受付は取材や商談を求める人でごったがえしていた。



 そこに、



 ……ズバァァァァァァァァァァァーーーーーーーーーーーーーーーンッ!!



 ドア蹴破るような勢いで、現れたのは……!



「たのもぉーーーーーーーーーーっ!!」



 金髪ツインテールの、小学生……!?



「おっ、お姉ちゃん、乱暴になさらないでくださいっ。あっ、あの、すみません皆様、お騒がせしてしまって……」



 大きな胸を上下に揺らしながら頭をぺこぺこ下げる、エプロン姿の女子高生……!?


 そして、彼女たちの間から、ひょっこりと顔を出したのは……!



「ちょいと、邪魔するぜ」



 まだ小学校にあがったばかりのような、メガネをかけた小学生であった……!

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