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昭和転生  作者: 佐藤謙羊
12/24

12 わくわくモンスターダンジョン3

「うおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーっ!!!!」



 打ち切り漫画のラストのような雄叫びをあげながら、自分の倍以上もの体格のオークに突っ込んでいくショーマ。


 雑魚のゴブリンは、頭にひとつ紙風船を付けているだけだが、オークはボスだけあって、冒険者側と同じ数だけの紙風船を付けていた。


 まずは景気付けに、頭にあるのを叩き割るべく、ジャンプ一番……!



「もらったぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーっ!!!!」



 しかし、



 ……ぺんっ!



 とあっさりはね除けられてしまった。



「ぐわぁぁぁぁぁぁぁぁーーーーーーーーーーーーっ!?!?」



「ショーマっ!?」「ショーマさんっ!?」



 母娘の悲鳴を聞きながら、ゴロゴロと転がって、来た道を戻らされてしまうショーマ。

 余裕のオークは太鼓腹を抱えて笑っていた。



「ブヒヒヒヒ……! 軽く払っただけで、紙クズみたいに吹っ飛ぶとは……! しかもほとんどの『生命の源』は失われ、瀕死寸前……! もうあきらめて、大人しくリタイヤするがいい……! リタイヤしたら、世界の半分をお前にやろう……! それに、次回挑戦が半額になるチケットもやるぞぉ……! ブヒヒヒヒ……!」



 『生命の源』とは、身体につけている紙風船のことである。

 ショーマは地面を転がってしまったせいで、肩にあるひとつを残して、すべての紙風船がボロボロに……!


 いわばこれは『残りHP1』の状態である。

 芝居がかった動きで、ヨロヨロと起き上がるショーマ。



「負けたら承知しないわよ、ショーマっ!」「もうおやめになってください、ショーマさん!」



 真逆の声援を受けつつ、少年は考える。



 ――トンデモ能力のある異世界人と一緒だったから、つい勘違いしちまったが……。

 よく考えたら、俺自身はただの小学1年生じゃねぇか……!


 剣技も魔法もなにもねぇ、ただのガキ……!

 身体は子供、頭脳は大人の……!



 脳内でそこまでつぶやいて、あることに気付いた。



 ――そうだ!


 おいっ『ルールル』! スポーツアシストモードだっ!



『イエス。スポーツアシストモードを起動します』



 スポーツアシストモードとは、あらゆるスポーツのアクティビティ管理と、競技で勝利するためのサポートをしてくれる、スマートグラスの機能のひとつである。


 たとえばフルマラソンなどの場合は、自分の心拍数や疲労度、残り距離、補給所までの距離などから、1位を取るために最適なペースを教えてくれる。

 視界内に、他の競技者がいようものなら……。



 ……ピピッ!



 とロックオンして、その状態を表示してくれるのだ。


 ロックオンを示す赤いカーソルが、オークの頭上でアニメーションする。

 ショーマは再び、地を蹴っていた。



「ブヒヒヒヒ! 何度向かってきても、同じこと……!」



 迎え撃つオークが構えをとった途端、



 ……ピピッ!



 ショーマの視界に、未来を先取りしたようなオークのホログラフ映像が表示される。


 スポーツアシストモードでは、ボクシングなどの格闘技の場合、相手の身体の動きを見極め、攻撃の予兆や狙っている場所を可視化して教えてくれるのだ。


 なのでそれに従って、身体を動かすだけで……。



 ……スカッ!



 とオークの攻撃は、空を切る。



「ブヒッ!? おっとっと……」



 勢いあまって、たたらを踏んでいた。

 スキだらけで、弱点が丸出しになった所を、攻撃してやれば……。



 ……パアンッ!!



 あっさりと肩の紙風船を、叩き割れた……!

 それだけで、



「「やったぁーーーーーーーーーーーーーっ!!」」



 スライム風呂の母娘は、大盛り上がり……!



「ブヒイッ!? ラッキーパンチを受けてしまったようだ! でも奇跡は、二度起きないから奇跡……!」



 ……スパァーーーーンッ!!



 ショーマは返す刀で、反対側の肩の風船も叩き割った。



「ぶっ……ブヒィィーーーーーーーーーーーーーーーッ!?」



 半狂乱になって暴れ回るオーク。

 しかし予知能力があるも同然の相手に、敵うはずもない。


 ちょこまかと動き回るちびっ子勇者に、攻撃は空を切るばかり。

 かたや勇者の剣撃は、



 スパン! スパン! スパァァァァァーーーーーーーーーーンッ!!



 気持ちが良いほどに、全弾ヒット……!



「すごいすごいすごいっ! すごーーーーーーーーいっ!! やれやれっ! ショーマっ!!」



「ショーマさん! とっても素敵ですっ! とっても格好いいですーっ!!」



 母娘の応援に、Vサインを返すだけの余裕をも見せる、少年勇者ショーマ。

 頭の風船だけになってしまったオークは、ついに奥の手を出した。



「ブヒィィィィーーーッ! こうなったら最後の手段! ゴブリン弓矢隊、であえい、であえーいっ!!」



 するとボス部屋の入り口から、弓矢を持ったゴブリンたちが乱入。

 その数、10匹……!



「ブヒヒヒヒ! いまだかつてここまで俺様を追い詰めたゲストは、お前が初めてだ! でも、賞金は渡すわけにはいかんっ!」



「ちょっとぉ、飛び道具なんてずるいわよっ!?」



 アーネストの抗議空しく、矢は一斉につがえられる。


 矢の先はスポンジなので、当たってもたいして痛くはないが、大ピンチ……!


 しかしショーマの視界では、



『ロックオンアラート。10の飛翔体が狙っています。今から5秒後に発射、0.5秒で着弾します。弾道予測を表示します』



 これから飛んでくるであろう矢の軌跡が、矢印で表示されていた……!

 これがある以上は、



 ……ビシュンッ! ビシュンッ! ビシュンッ!



 矢が雨あられのように降り注いでも、へっちゃら……!


 身体をスウェーさせて、必要最低限の動きでかわしまくるショーマに、母娘は呆気に取られていた。



「す、すごい……。いくらオモチャとはいえ、飛んでくる矢をよけるだなんて……」



「ショーマさんが、あんなすごい特技をお持ちだったなんて……!」



 これには、オークもビックリ。



「ぶ……ブヒイッ!? 矢に加えて俺様も攻撃しているのに!? なんで、なんでかすりもしないんだっ!?」



 まるで残像のような動きのショーマ。

 ボスのスキを伺い、背後に素早く回り込むと、耳元でささやきかける。



「安月給なのに、悪いな……!」



 ……スパァァァァァァァァァァァァァァァァーーーーーーーーーーーーーーーーーーンッ!!



 最後の一撃を、脳天に叩き込んだっ……!!

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