臼砲の梨地の砲身海睨む
平成十五年十二月
この俳句は解説を付けなければ理解されない。
だから俳句としては駄作!
仕事でフィリピン、マニラ沖、コレヒドール島に行った。
悲劇の将軍本間中将と将軍マッカーサーが死闘を演じた島なのだ。日本軍に追われて「アイシャルリターン」と名言を残して遁走した。
無数の、赤く錆びた大砲が海を睨んでいる。私は、鋳造工学を専門としている。
だから、この旧日本軍の大砲が気に懸かったのだ。居並ぶ大砲の総ての表面が梨地模様になっていて、裏側になるほど梨地がなくなる。
こんな表面処理をする意味があったのだろうか? そこでハッと思い到った。
米軍は再上陸の前哨戦として、空から弾丸を、まさに雨、霰と撃ち込んだ。その弾痕がこんな風に模様を付けたのだ。
この鉄の雨には鼠、いやミミズだって死に絶えたと言われている。勿論、日本軍は全員玉砕した。
金属材料や表面工学の世界では割と「梨地」という表現は使ったりします。
似たような表現では「オレンジピール」なんて言葉もあります。
この俳句、エピソードと合わせてよむと心に来るものがある。俳句としては駄作ということですが、自分がお気に入りの一句です。
(山鳥はむ)