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残照 ~俳句と人生、老いの旅~  作者: 松涛/編集:山鳥はむ
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冬の月山重なりて海に落つ

平成十五年二月



 妻の初美が七十歳になり魚群探知機のメーカーの社長の席から身を引いた。

 相談役というか参謀役の内田さんが癌で亡くなり、それでなくとも、毎週一回豊橋に出かけていくのは、すでに重荷になっていた。



 古希という区切りもよく引退したのだ。

 わたしは、永年の労をねぎらう意味もあって熱海の「ホテル百万石」に招待し、二人だけの宴を設けた。



 新しく購入したジャガーの初ドライブも兼ねていた。熱海の夜景は、かねてより好きだった。列車に乗るとガラス窓に額を押し付けて見惚れていたものだ。



 それが最近、あまり冴えないものに感じ始めたのはあながち私が歳をとっただけではない。広い床の間の一輪挿しに「侘助」がひっそりと生けてあった。



 風邪を引いて咳き込む妻の背を擦り、加えて引退と言う事由もあったためか、ことの外、淋しい夜だったことを思い出す。

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