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老いという未知なる旅路秋夕焼
平成二十一年十月
最近、ワイフはベッドから離れなくなった。
友人との接触は、もっぱら携帯でのお喋りとメールとなり、テレビはサスペンス物を次々に、これも寝ながら見ていた。
こんな生活は東京でも同じだったが、此処では訪問客が無いので余計にこのスタイルが通常化した。
昼食と夕食は施設が用意してくれ、二人だけに開放してくれているホームの食堂に運んでくれる。その時だけベッドを離れた。
息子親子が来てくれた時は大いに張り切ってはしゃいだ。
誕生日、夏の旅行、お正月はかなり嬉しく、楽しかったと思う。無論、私自身も楽しかった。
そんな一ト時が終りに近づき、別れの手を振ることは、ことのほか辛かった。帰路は助手席にひっそり座り、黙りがちなワイフの侘びしさ哀しさが強く伝わってくる。
山稜に沈む秋の夕日は美しいというよりも辛く悲しい景色となる。