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逃げ水に浮ぶ蘇州の街を抜け
平成二十年四月
蘇州夜曲でお馴染みの街スーチョウは上海から列車で約一時間。太湖の畔に位置している。
あの雅な胡弓の調べから風光明媚な観光地と思い込んでいた。
しかし実際は黒い水の運河に、薄汚れた船が溢れ、それが縦横無尽に往来する工業都市のひとつであった。
それはともあれ、中国いたる所、霞が掛かったように潤んで見える。
最初に訪れたときは、春霞と思ったが、季節が違っても同じだった。これは黄砂のせいだと合点した。
中国人に聞くとそうだという。
三度目辺りから、いや、スモッグ。煙害と判った。
中国人は公害と認めたくないようだ。
工場の排煙、家庭の竈、石炭の暖房等々。
それに西風に煽られた正真正銘な黄砂が混じってくる。
しかし、北京オリンピックを契機に、環境改善の取り組み方とか、公衆道徳等、随分変ってきた……と思っている。