祝福の効果
風呂から上がった後、部屋に戻った俺は、優夢に祝福を与えることにした。
内容は、装備の変更だ。
俺はパソコンのマウスとキーボードを操作し、以下の通りに装備を変更した。
武器:空き瓶 → ハンドガン
防具:ローブ → 緑光のローブ
靴 :皮のブーツ → 妖精のブーツ
下着:白いパンティ → 白いパンティ
下着を変えなかったのは、単純に俺の趣味である。
だがこれで、パラメーターは大分上昇したはずだ。
「つーか、初期装備が貧弱過ぎるだろ」
「モンスターのパラメーターをきちんと管理すれば、こんなことにはならなかったんですけど」
「……ナヴィ、何気にツッコミがキツくなってない?」
「これに懲りたら、次から気をつけてくださいね?」
ナヴィが悪戯っぽく微笑む。
……畜生め、可愛いから許してやろうじゃないか。
装備の変更が終了すると、パソコンの画面から光が溢れ出した。
バスタオルを巻いた優夢が、新たな装備を纏った姿になる。
俺が課金して作った緑光のローブは高性能ながらも露出度が高く、たわわに実ったおっぱいの上部と谷間が見えるように設計した。
更にスカートとニーソックスを採用し、絶対領域の確保もされた、理想の装備である。
「おおっ! 成功だ!」
「何、これ……凄くエッチな感じがするんだけど……これ、戦ってたら脱げたりしないの? おっぱいなんて、ちょっとずらせば丸見えじゃない」
優夢は試しにピョンピョンと跳んでみるが、豊かな膨らみがブルン、タプンと揺れるだけで、それ以上露出することはなかった。
「そのローブはナヴィの天衣と同じく、神の力で装備されている。自分で脱ごうとした時か、余程大きなダメージを受けない限り、見えることはないぞ」
「神の力、どんだけ無駄遣いしてるの……」
優夢は呆れてジト目になっているが、見た目がエロい装備は男の夢だ。
これは譲れないし、譲らない。
「それに、これ……鉄砲?」
「拳銃だ。腰のホルスターに2丁入ってるぞ」
男の夢、2丁拳銃。
これも俺が課金して新たに作った武器だ。
「あまり回復役らしくないが、戦いに慣れてない優夢でもこれなら扱えるはずだ。スライムは動きが遅いから、遠距離からこいつで撃てば、一方的に倒せるぞ」
「ちゃんと優夢のことも考えて作ってくれたんだ。ありがとう、お兄ちゃん」
優夢も調子が戻ってきたようだ。
親しい人といる時は、優夢は自分のことを名前で呼ぶ。
準備は整った。
取り敢えず当面やるべきことの指示は出し、俺は優夢を送り出した。
画面の中に、サイドポニーテールの少女が現れる。
スライムと対峙し、手はず通り、中~遠距離からハンドガンの引き金を引く。
ガゥンッ!
独特の発射音とともに、銃口に魔法陣が発生する。
弾丸はスライムに命中すると、炎を噴き出し燃え上がった。
「よっしゃ、成功だ!」
ハンドガンに装填される弾丸は、消費されるアイテムとして優夢に渡した。
アイテムにせず、自動装填式にすれば楽になるのだろうが、祝福の上限に引っ掛かってしまい、武器の性能が落ちてしまう。
そこで、敢えて消費式という面倒な仕組みを採用した。
制限付きにした方が、祝福の上限に引っ掛かりにくいと考えてのことだ。
すると思惑通り、攻撃力を落とさずに済んだ。
しかも、弾丸を変更することで、様々な局面に対応できるようになる。
今回、優夢に渡したのは火炎弾だ。
火属性が弱点のスライムには、効果は抜群だった。
「やったー! 倒せたぁっ!」
スピーカーから優夢の喜ぶ声が聞こえる。
ショッパナ平原のスライムを狩りつくした優夢は、大量の経験値とゴールド、それにドロップアイテムを手に入れ、意気揚々と近くの街に向かうのだった。
街についた優夢は、暗くなる前に道具屋で消費した弾丸を補充し、宿屋にチェックインする。
どうやら夜になると、街中でも盗賊といったモンスター?とエンカウントする、厄介な設定らしい。
「良いぞ、予定通りだ……ん?」
宿屋の娘と話をする優夢を見て、俺はあることに気づいた。
「ゼオン様、どうしました?」
「宿屋の娘のコレット……可愛い上に、優夢よりおっぱいが大きいぞ!」
「はぁ……そうですか」
ナヴィは心底呆れた顔でため息をついたが、笑顔の俺を見て、苦笑しながらこう言った。
「まあ、ゼオン様が楽しいのなら、私が来た甲斐がありました」