俺の部屋=転生の神殿?
「……え? ここは……どこ?」
スライムの粘液で装備を全て溶かされた優夢が、一糸纏わぬ姿で俺の部屋に召喚された。
色々と言い訳ができそうにない状況に、俺は混乱する。
(転生の神殿が俺の部屋!? いや、どう見てもただのアパートの部屋だよ! どう考えてもおかしいだろ! どう説明すりゃ良いんだ!?)
「じぃーっ……」
顔を赤らめつつ、俺を警戒する優夢。
……そりゃそうだ。
異世界転生した後に元の世界に戻ってたら、俺だって色々疑いたくなる。
「あー、コホン。えっと……取り敢えず、何か飲む?」
「ゼオン様。最初に何かお召し物を授けた方がよろしいのでは?」
「あ、ああ。そうだな」
ナヴィの冷静なツッコミに、俺は頷く。
取り敢えず俺のYシャツを渡すことにした。
俺が渡そうとすると叫ばれそうなので、ナヴィに渡してもらう。
「どうぞ。神様からの施しです」
「あ、どうも……」
優夢は素直に受け取ると、俺の方を訝しげに睨む。
「あなたが神様……なんですか?」
「い、如何にも。我が創造神ゼオンだ」
意外にも兄だとばれてはいないようだ。
14年も経っているから、わからないのかもしれない。
複雑な心境だが、ここは誤魔化して――
「……お兄ちゃんじゃないの?」
「……いや、そんなことないよ?」
とっくにバレていた。
気まずいけど、ちょっと嬉しい。
「嘘つく時、目が右に泳ぐ癖があるよね」
「マジで!?」
思わず鏡を見て確認する。
「やっぱり、お兄ちゃんじゃない」
完全に優夢の掌の上だった。
かくかくしかじか、これまでの経緯を説明する。
「何だか信じられないけど……お兄ちゃんは年をとってるし、部屋に天使がいるし、私も胸が大きくなってるし……信じるしかないか」
優夢がため息をつく。
俺はYシャツから若干透けて見えるモノが気になったが、どうにか平静を保つことができた。
「でも、これからはまたこっちの世界で暮らせるの?」
「えーと……どうなんだ、ナヴィ?」
「転生者を神殿に召喚できるのは1日につき6時間までです。超過しようとすると、運営からペナルティを受けます」
「運営って……全く、妙なところがアプリゲームっぽいな。因みに、ペナルティの内容は?」
「問答無用でアカウント停止です。そうなった場合、妹様の魂は輪廻の輪から消滅し、永遠に転生できなくなりますので注意してください」
「そういうことは早く言えよ!」
「……規約に全て書いてありますよ?」
ナヴィはニッコリと微笑む。
その無理やり貼り付けたような笑顔で見て俺は確信した。
……ナヴィを怒らせてはいけない。
「……じゃあ、私はどうすれば良いのかな?」
「異世界へ戻った時に、このままだとまた裸でスライムの粘液を浴びることになります。そうならないために、ゼオン様から啓示を受けたり、祝福を受けたりします」
「啓示が攻略法を教えるってのはなんとなく察しが付くけど、祝福はどういうものなんだ?」
「祝福は、神様1人1人の裁量に委ねられた施しです。新しい装備やアイテムの入手、魔法やスキルの習得の他、パラメーター上昇などが主ですね」
「装備! じゃあお兄ちゃん、服と下着買ってきてよ!」
「どこの世界に神様をパシリにする冒険者がいるんだよ……って言うか、兄に女物の服や下着を買わせるな! 下手すれば捕まるわ!」
「えー、役に立たない神様だなぁ……」
さらっと酷いことを言う妹様。
そのでかいメロンを揉みしだいてやろうか。
「最初から最強装備を渡せばいいだろ。これで問題解決だ」
「それはダメですね。規約違反です」
ナヴィがマウスをクリックし、規約のページを開く。
「何々? ……チート行為防止のため、転生者のレベルにそぐわない祝福は与えてはならない?」
「ゼオン様は今、妹様相手だからこそ親身になっていますが、気に入らない相手にも同じ施しを与えようと思いますか?」
「……いや、思わないな」
「転生者によって施しに大きな差があるとバランスブレイカーになるのはもちろん、妬みから暴動が起きて異世界に混乱が起きてしまいます」
「なるほど…場合によっては神様を狙う輩も出てくるかもな」
「そうです。なので、チートは禁止です。スマートフォンもダメですよ? ……まあ、例外はありますが」
「例外?」
「神様へ奉仕の心を見せた者には、ワンランク上の祝福を施すことができます。奉仕の内容は、神様に一任されます」
「奉仕の心、ねぇ……」
俺はYシャツ1枚の優夢をチラリと一瞥する。
「お兄ちゃん、目がやらしいんだけど……」
両腕で抱えるように隠したおっぱいは、上乳と谷間が強調されて寧ろエロい。
そして、今の優夢は何も履いていない……
そんな状態の女の子に奉仕させることなど、1つしかない。
だが、転生したとはいえ、元妹にそんなことをお願いして良いものか……
「優夢、頼みがある……」
「な、何? お兄ちゃん……」
「せ、せ、せ、せ……」
「え、エッチなことはダメだからね?」
「規約には違反していません。今の妹様は転生後の身体ですから、性行為も問題ないかと」
「あるよ! 私はまだ14歳なんだからっ! ナヴィさん、お兄ちゃんを煽らないで!」
ナヴィの一言で、俺の心が一気に揺らぐ。
「せ……セック……」
「お兄ちゃんの……バカ」
優夢は頬を赤らめ、涙目の上目遣いで俺を見る。
ダメだ、その目は反則だろ……
「せ……背中を流してもらおうかな!」
妹相手に、無慈悲になりきれない俺だった。