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ファースト・コンタクト

 転生した優夢(ゆむ)の魂が、ユラユラと上空で揺れる。

どうやら転生させる場所を神様(おれ)が選ぶらしい。


 「ゼオン様、どの辺りに転生させましょうか? おすすめだと、ゴブリンの洞窟の前ですが」


 「待てナヴィ、人の妹を殺す気か!?」


 「……はい?」


 ナヴィがキョトンとした顔になる。

俺は知っているのだ。

……ゴブリンが如何に凶暴で、凶悪な存在なのかを。


 「奴らは残忍で狡猾だ。しかも、女は自分たちの性欲の捌け口にするらしい」


 「流石、神様ですね。異世界の知識を既にお持ちだなんて」


 「まあ、な。小説が原作の深夜アニメから学んだのだ」


 威張れるようなことではないが。


 「では、何処に転生させれば……?」


 「ふむ……スライム辺りが妥当だな。平野に出現するし、街からも近いだろう」


 「わかりました。では、ショッパナ平原に転生させますね」


 「……何だ、その適当な名前の平原は?」


 「言いにくいですが……お任せで異世界創造したからだと思いますよ?」


 自分の責任だった。


 「異世界の設定変更は、課金しないとできませんが……」


 「いや、まだ良い。どうしても我慢できなくなったら課金する」


 預貯金に限りがあるため、切り札は最後まで取っておきたい。


 そんなこんなしているうちに、優夢の転生は完了した。

ショッパナ平原で、ゆっくりと目を覚ます優夢。

そして、周囲の光景を見た時、彼女はこう叫んだ。


 「な……何じゃこりゃあああ!!!」


 パニックを起こした優夢は、頭を抱えてその場に蹲る。


 「お、落ち着け、優夢!」


 「私たちの声は聞こえませんよ?」


 「どうすれば聞こえるようになるんだ!?」


 「1回につき1000円になります(ニッコリ)」


 「……くっ! (た、高い……ボッタクリだろ!)」


 翔平(しょうへい)は泣く泣く財布からクレジットカードを取り出した。


 混乱して泣きそうになっている優夢の上に、光が差す。

そして、創造神ゼオン――翔平の声が降ってきた。


 「迷える少女よ……我が声に耳を傾けよ」


 「な、何? 誰なの!?」


 「我はゼオン。この世界の神である」


 「神様!?」


 優夢は驚きの声を上げる。


 「神様、私は何が何だかわからなくて……」


 「君の魂は転生し、この世界に生まれたのだ。今日からこの世界が、君の居場所だ」


 「私、この世界じゃなくて、元の世界が良いです……帰してもらえませんか?」


 妹からの切なる願いに、翔平は少し言葉に詰まる。


 「君の魂は、事故で死んだのだ。すまないが、元の世界へは帰れない」


 「そんな……私、死んだの?」


 どうやら交通事故で死んだ記憶がないらしい。


 (無理もない、一瞬の出来事だったからな……)


 優夢はしばらく俯いていたが、決心したように顔を上げた。


 「……わかりました。私はこの世界で何をすれば良いんですか?」


 「それはだな……その……(しまった! 全く考えてなかった!)」


 翔平はナヴィに助けを求めるが、ナヴィは申し訳なさそうに首を振った。


 「……その辺りでスライムを倒して、お金と経験値を稼ぎなさい。その後、追って任務を伝えよう」


 完全にグダグダだった。

優夢もどこか訝し気な顔で空を見上げている。

しかし……


 「ヘコんでいても仕方ないよね……やれるだけ、やってみよう!」


 トレードマークのサイドポニーテールを揺らし、優夢は立ち上がる。

少女が見つめる先には、水色のスライムたちが蠢いていた。


 (取り敢えず、これで大丈夫かな……優夢がポジティブで良かった)


 妹の素直な性格に安堵しつつも、こんな調子でこの先大丈夫か不安になる翔平だった。

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