異世界創造
「ではゼオン様、早速世界を創造しましょう」
ナヴィに手を掴まれ、翔平は焦る。
「いやいやいやいや、いきなり神になったって、どういうことだってばよ!?」
混乱し過ぎて、某忍者の口調になってしまった。
「ですから……異世界転生アプリをダウンロードしたので、あなたは神様になったのです」
「そんなお手軽に神になってたまるかっ!」
翔平が手を振りほどくと、ナヴィは「きゃっ」と短く悲鳴を上げ、ベッドへと倒れ込んだ。
「あ……わ、悪い……」
「い、いえ……私も説明を急ぎ過ぎました」
その時だった。
ナヴィの眩しい太腿の間から、チラリと白い布が見える。
薄い布で隠されたたわわなおっぱいも、プルプルと揺れて……
(ふおおおおっ!? ど、童貞には刺激が強すぎるっ!)
「ゼオン様? どうかなさいましたか?」
「い、いや……何でもない。それよりナヴィ、説明をしてくれ」
翔平は前屈みになりながら、必死に股間を隠すのだった。
それから5分後。
「なるほど…神様は彷徨える魂を異世界に転生させ、第2の人生を歩ませる……か。ナヴィはそのサポート役で、それ以上のことは知らない、と」
「あまりお役に立てなくて申し訳ありません。ですが、思ったよりゼオン様は状況の呑み込みが早くて、助かりました」
「伊達に30年オタクはやってないからな。けど、俺はどうやって異世界転生をさせれば良いんだ?」
「それは、そこにあるパソコンで行います」
「えぇ……」
「どうかしましたか?」
「いや、何でもない(何か、急に胡散臭くなったな)」
ナヴィから一通りの説明を聞くと、どうやら転生先の異世界を作る必要があるらしい。
「異世界転生アプリから異世界創造をクリックして……はい、そこです」
言われた通りにクリックすると、昔のRPGのマップのようなものが出てきた。
「そのアイコンを開くと、色々できますよ」
(クリックとかアイコンとか、パソコン用語が出てくる天使って何か凄えな……)
「ああ、そこは違います、こっちですよ」
ナヴィの手がマウスを操作する翔平の手に重なる。
柔らかな掌の感触に、翔平の心臓が飛び跳ねた。
「ここを開くと……はい、これでOKです。あの……ゼオン様、聞いてます?」
(う、うおおおぉぉぉ!?)
ナヴィが身体を寄せてくる。
背中に2つの柔らかな感触が伝わり、翔平は思わず前屈みになった。
「ゼオン様、どこかお加減が悪いのですか?」
ナヴィが身体を動かすたびにムニュムニュと押し付けられるおっぱいと、耳元で囁く優しい声に、翔平の理性が飛びそうになる。
「異世界創造は……ナヴィに任せる」
「え!? 良いのですか!?」
「……ああ、俺の身が持たん」
「わかりました、お任せモードで作成しますね」
異世界創造は、翔平が考えていたものよりもずっとお手軽なようだった。
「完成しました」
ファーストフード並みの速さで創造された世界は、見る限り普通のファンタジー世界だった。
「次は、転生者ですが……」
「ナヴィ、ちょっと待った……それは、明日からでも良いかな?」
「? 構いませんが……」
「ちょっと今日はもう無理だ、その……体調的に」
最後の方はゴニョゴニョと口籠りながら話す。
「わかりました。お大事になさってください」
パソコンの画面から光が差し込み、ナヴィの姿が消えていった。
原理は不明だが、とんでもない技術だ。
「ふぅ……さて」
ため息をつくと、翔平はベッドへとダイブした。
ボフッと布団に顔を埋めると、微かに良い香りが漂ってくる。
「ナヴィの匂い……凄く良い匂いだ」
布団に鼻を押し付けながら、背中に感じた柔らかな感触を思い出す。
最早翔平には、彼の中の昂った気持ちを抑える手段がなかった。