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暴君、来たりて

第2章のこのエピソードから、声優ネタやパロディが増えていきます。

最初に言っておきます。

某女性声優ファンの方々、大変申し訳ございません。

この物語はフィクションで、実際の人物、団体とは一切関係がありません。


 パソコン画面内の転生の塔に、西島(にしじま)奈緒(なお)の3Dモデルが現れる。

外見の変更を設定しようとすると、いつの間にか隣に優夢(ゆむ)が立っていた。


 「へぇ……こうやって転生させるんだ」


 優夢が屈んで画面を覗き込むと、俺の顔のすぐ横でたわわな膨らみがプルンと揺れる。

俺はなるべく横を見ないようにして作業を進めた。


 「お兄ちゃんのことだから、またおっぱいを大きくするんでしょ?」


 「いや……なおすけは地声がロリボイスだから、敢えて貧乳にしようと思ってる」


 「珍しいね、おっぱい星人のお兄ちゃんが貧乳を推すなんて」


 「勘違いしてもらっちゃ困るな。俺は確かに巨乳が好きだが、貧乳が嫌いというわけじゃない。元がツルペタの優夢だって、今と変わらず愛してみせるさ」


 「…え? そこ、ドヤ顔で言うところ?」


 優夢は感動するどころか、むしろ呆れ顔になった。

おかしい…何故兄の愛が理解できぬのか。


 俺は画面に向き直り、3Dモデルの編集作業へ戻る。

なおすけは元々身長が低い。

中学2年生の優夢が154cmだが、高校3年生のなおすけは150cmだ。

この設定は活かすべきだろう。


 「胸をツルペタまで減らして……髪型はツインテールで、色はピンク…っと」


 「おお。何か可愛い感じだね」


 「職業は……補助役(バッファー)で」


 「ばっふぁー? …って何?」


 「仲間のパラメーターを向上させたり、敵のパラメーターを下げたり……戦闘を補助してくれる職業だ」


 「前から思ってたけど、職業って4つしかないよね? 何でもっと作らないの?」


 「それは、ゼオン様がお任せで異世界創造したからです」


 背後からナヴィが口を挟む。


 …そうなのだ。

お任せ設定でお手軽に作ったがために、異世界は非常にバランスが悪い。

世界の名前は「異世界」。

職業は「攻撃役(アタッカー)」「防御役(タンク)」「回復役(ヒーラー)」「補助役(バッファー)」の4つのみ。

装備の強さやアイテムの効果・レア度・価格、モンスターの強さまで素人が作ったような適当なバランス。

更には俺自身がこの異世界のことを良く知らないというおまけ付き。


 設定し直したいのだが、再設定には膨大な課金が必要となる。

無茶すればできなくはないが、俺の生活が立ち行かなくなってしまう。


 「まあ、それは後で考えるとして……なおすけを転生させるぞ!」


 意気揚々と決定ボタンをクリックする。

画面が輝きだし、光となったなおすけの魂は、風に運ばれて異世界の大地に降り立った。


 「はい! ここで、すかさずCtrl+E!」


 「ちょっ! 何をしてるんですか、ゼオン様!」


 なおすけが起きる前に転生の神殿(俺の部屋)に召喚したことに、ナヴィが焦りを見せる。


 「俺は前回と同じ轍は踏まん。最初に伝えるべき情報は、最初に伝えておく」


 「なるほど、お兄ちゃん優しい!」


 前回は優夢がピンチに陥ってから慌てて召喚したが、これで問題はクリアだ。

異世界にいる転生者と話をするには課金が必要なため、この方が財布にも優しい。


 「くっ……! 気づいてしまわれましたか……」


 悔しそうに俯くナヴィ。

そんなに課金して欲しいのかよ。


 画面から光が溢れ出す。

輝きの中から、ピンク色の髪の少女が現れた。

少女はゆっくりと目を開く。


 「うわぁ……この娘、すごく可愛い……まるでアイドルみたい!」


 「当然だ。アイドル声優だからな」


 「どうしてゼオン様が自慢げなんですか……」


 「え? 何? ここ、どこ?」


 見慣れぬアパートの一室で俺たち3人に囲まれて、なおすけは周囲を見回す。


 「あ、わかった、寝起きドッキリでしょ。マネージャー、どこにいるの? 急にやられるとマジ困るんだけど」


 なおすけは頭をボリボリと掻きながら欠伸をする。


 「アイドル……なんだよね?」


 「アイドル声優……の筈だ」


 疑問形の優夢に、俺は微妙な顔で答える。

いかん、いかん……アイドル声優だって、寝起きは調子が出ないだろう。


 「コホン……なおすけ、ここは転生の神殿だ」


 「そういう設定? 何? なりたい系の転生ヒロインの役が決まったの?」


 「いや……マジの話です……」


 ナヴィが手鏡をなおすけに渡す。


 「何、これ……髪の毛がピンクで、胸もツルペタなんだけど……あたしのCカップ、どこへ行ったのよ!?」


 ブンッ!


 なおすけが俺にぶん投げた手鏡を、優夢がキャッチする。

流石、冒険者として鍛えているだけのことはある……じゃなくて。


 「何、このなおすけ……超怖いんですけどっ!」


 「だから言ったじゃないですか……備考欄に、性格に難ありって書かれてたって」


 「そんなことないやいっ! なおすけは優しいんだ!」


 理解が追いつかない事態に、俺の言語が幼児化する。


 「……もしかして、あたしのファン?」


 「そうだよ、なおすけ……待ちガイルとか、銀モザとか、リアルタイムで見てました! サインください!」


 「「うわぁ……」」


 ちゃっかりサイン色紙を用意していた俺に、優夢とナヴィがドン引きする。


 なおすけは色紙を受け取ると、ポイッと宙に放り投げた。


 「キモオタ、マジウザい」


 「そこは翔平(しょうへい)マジキモーイでお願いします!」


 最早いたたまれない表情で俺を見る優夢。

ナヴィは深くため息をつく。

そしてなおすけは、訝しげに俺を睨むのだった。


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