表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
9/25

 ぼくと平先輩は無言になって、とりあえず頼んでいたコーラを飲んだ。平先輩はコーラを口に含んだ瞬間顔をしかめた。

「やっぱり、コーラはきついわ」

「なんで頼んだんですか?」

「最近飲んでなかったから」

 もう一口飲み、さらに顔をしかめる。

「うあー、無理。黒木くん、飲む?」

「遠慮します」

 平先輩は先輩という威厳を捨ててぶーぶー文句を言った。

 …………。こんなに態度の方まで子供じみた先輩を見たことがない。どうしたのだろうか? 嫌なことでもあったのかな?

「うちのクラスで盗難があったこと、君は知ってる?」

 恨めしそうにストローでコーラを掻き混ぜながら先輩は言った。

「盗難があったのは知ってますけど、それって、先輩のクラスであったんですか?」

 先輩は頷く。

「お札だけ盗まれていたわ。友達ってほどの人じゃないんだけど、やっぱりクラスメイトが盗難にあったのは気分が良くないのよ」

 だから今日は様子がおかしかったのか。

「君、犯人を知ってたりしないかしら」

 それは質問ではなく、詰問だった。少し前にも似たような問い掛けを他の誰かにされた場面を瞬間思い出した。だが、それは現実逃避。ぼくは、その良くわからない加減に狼狽していた。

「知ってるわけ、ないじゃないですか」

「そう。ならいいんだけど」

 先輩の目は険しかった。同級生の國寺くんでも、ここまで辛辣な目付きはしないだろう。

 ――“怪人”。

 そんな言葉が浮かんだ。誰が先輩の何を見てそんな諢名をつけたのかは知らないが、なるほど、そのまんまだ。

「なんで、そんなことを?」

 場所や姿勢が違えば談笑用のネタなのかもしれないが、違えばの話。平先輩は絶対世間話の類のつもりでないはずだ。

 先輩はコーラを掻き混ぜる手を止めていた。くるくると氷がカップの中を回り、かしゃんといってコーラに全体を一瞬水没させた。

「それは知らなくてもいいこと」

 怖っ。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ