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「昨日の放課後、二年生の教室で盗難がありました。みんなも気をつけてね」
朝のホームルーム。担任の浜谷先生はそう言った。
「それでさ、放課後文化祭の準備するときに、この貴重品袋にみんなの財布入れてくれないかな? それで誰かが管理するの。文化祭実行委員がいいかな?」
先生は赤い袋を取り出して言う。その目は文化祭実行委員である金川さんを見ていた。特に異議は出なかったので決定された。
「先生。犯人って、見付かったんですか?」
女子の一人がそう聞いた。先生は首を振る。
「まだだよ。でも、ここは学校だよね。だからさ、あんまり言いたくないし思いたくないんだけどさ……この学校の関係者に絞られちゃうんだよね」
普段から先生という職種とは掛け離れたおちゃらけぶりを発揮している浜谷先生ではあるが、今はその表情を暗くしていた。そりゃまあ、関係者とは言ったけど、結局のところ生徒にしかそんなことは出来ないだろうから。
生徒の中に財布を盗んだ犯人がいる。
――盗まれた生徒は疑心暗鬼に陥るかもな。
「犯人は退学ですか?」
同じ女子が聞いた。先生は苦笑した。犯人が生徒であることは隠しようがない。
「場合によるかな。早い内に名乗り出れば謹慎位だろうけど……」
言葉を濁した。誰もそれ以上何も言わなかった。
「黒木くん。盗難のこと、どう思う?」
小阪くんはダンボールを運びながらぼくに聞いた。
今は放課後。教室で文化祭の準備をしている、のはぼくら以外。ぼくと小阪くんは崇城さんに頼まれて、昨日同様近所のスーパーにダンボールを取りに行っていた。その帰り道でそんな質問をされた。
「盗難? そうだな……」
少々思考した。
「どうかっていうより、なんでそんなことしたんだろうかなって」
「あー、なるほど」
「小阪くんはどう思う?」
そう尋ねると、ちょっと考えてから「わからないや」と答えた。