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本格的に文化祭のクラス準備が忙しくなってきた。クラスの多忙さを見ていると、部活を理由に抜け出すことに罪悪感を覚えてしまう。うちのクラスは縁日をするらしい。縁日って何?
部活の準備はすでにすることがなくなっていた。印刷は業者に頼んでいるので、今は完成を待つのみ。だが、何もしていないというわけではない。部室内の飾りつけを申し訳程度にしたり、終わったはずの飾りつけをしたりする。……まあ、つまり、面倒だから逃げていたわけだけど。
――出ないとまずいよな。
ということで、今日はクラスに残って手伝いをすることにした。
「あれ? 黒木くん、部活の方はいいの?」
手持ち無沙汰の男子の群れに隠れていると、それに気付いた崇城さんが、まあという風に言った。辺りにいた男子生徒たちがきょとんとした。まあ、ぼくなんかに崇城さんがなんで話しかけるのか不思議なのであろう。ぼくだって不思議っちゃ不思議なのだが。
「部活は一段落したので」
「じゃあ、今日から手伝ってくれるんだ!」
失言だった。崇城さん嬉しそうだし。そりゃあ、男手が増えた方が楽だろうし使えるだろうけど、こんな貧弱に力仕事での楽さを追求をされても応えられないのだが。
崇城さんは「それじゃあ、ダンボール貰って来てくれる?」などとお願いしてきた。傍にいたクラスメイトも巻き添えを食らった。名前は確か小阪くんといっただろうか? 背が低く、大人しい人だ。優等生キャラ。
「じゃあ、行こうか」
「うん」
ぼくと小阪くんは近くにあるスーパーまで向かうことにした。
「ねえ、黒木くん。崇城さんと仲いいの?」
小阪くんが聞いてきた。
「うん? いや、あんまり。どうして?」
「いや、黒木くんってあんまりクラスの人とかと話してるとこ見たことないのに、珍しいなって」
純朴そうな笑みを浮かべる。うわー、中学生みたいで頬笑ましい、なんて思ってしまう。
「きっと、余計に目についたんだよ」
適当なことを言ったのだが、小阪くんは納得したらしい。