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 適当に誤魔化して松前先輩から逃げ出し、ぼくは一階へと下りていった。一階へ下り、階段下の開けたスペースへと入った。そこには、平先輩と小阪くんが手を繋いでいた。

「はい、現行犯」

 平先輩は無表情で言った。小阪くんはわけがわからないという呈をしている。ぼくを見て何やら問おうとして、やめた。

 ぼくは二人の傍まで行き、辺りに聞かれないような声で先輩に話し掛けた。

「先輩。本当に、間違いなく、正しいんですか?」

 先輩は子供っぽく頷く。

「ばっちし。ちゃんと見たよ、この子が万永さんの鞄に入っていた財布をいじってるの。それから、お札だけ抜いたのも、その他諸々も」

 先輩は小阪くんの右手首を握っていた。小阪くんの右手は堅く握られていた。

「小阪くん。その手の中、見せてくれないかな?」

 小阪くんの表情が歪む。今朝の崇城さんのように歪む。

「……これは、黒木くんが仕掛けたの?」

 小阪くんはぼくの問いには答えず質問を投げ掛けた。ぼくはそれに答えた。

「まあ、そうかな」

 すると小阪くんは苦笑した。

「ってことは、黒木くんは僕を疑っていたんだね?」

「そういう、こと、なのかな? あんまり、信じたくはなかったけど。というより、さっきまでは信じてなかった。平先輩の見間違いかと思っていた。というよりも、願ってた」

 小阪くんは呆れたように溜息をつく。あくまでも諦めたようなではなく呆れたように。

「ということは、見てたんですか?」

 小阪くんは自分の腕を握る麗人に問い掛けた。麗人は頷く。

「一瞬だったけどね。手鏡に映ったんだよ。君が被害者の子の鞄に何かをしまっているところを。最初はその意味がわからなかったんだけど、その日のうちにわかったわ。その子が盗難にあったことを知ったと同時に」

 小阪くんはそれを聞いて小さく笑声を漏らした。そんな彼に問い掛けた。

「……ねえ、小阪くん。なんで、盗んだりしたの?」

 小阪くんは答えなかった。

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