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平先輩はまず、今回起こっている連続盗難事件の情報整理を行なった。
最初に起こったのは一昨日。場所は二年五組。つまり平先輩のクラス。被害者はクラスメイトの女子生徒。放課後文化祭の準備をしていたところ、鞄にしまっていた財布を狙われた。お札だけが盗まれていた。被害額六千円。犯人は不明。
次に起きたのは今日。場所は一年三組。つまりぼくのクラス。被害者はクラスメイトの小阪くん。放課後文化祭の準備をしているところ、貴重品袋に入っていた財布からお札だけを盗まれていた。被害額六千円。容疑者は金川さん。理由は金川さんしか貴重品袋に触れていないから。
「まずはなんだけど、形式上連続って言ってるけど、君はこの二つの事件が同一犯の犯行だと思ってる?」
平先輩は聞いてきた。それはあまり考えていなかった。ぼくは漠然と同一犯によるものと思っていたが、考えてみるとそうではないかもしれない。なぜなら、同学年のあいだだけで起こっているわけではないからだ。わざわざ他学年のクラスまで行くと、どうしても目立つ。しかも盗むためには教室内へ入らないといけない。
となると、最初の事件と次の事件の犯人はべつなのか?
「もしかして、事件と事件には関連性はないんですかね?」
そう答えてみるが、平先輩は不満げな表情を浮かべた。
「……確認のために聞いただけなんだけど、聞き方が悪かったなら謝るわ。私は君が同一犯であると考えていると思って、同意を求めただけなの。
私は二つの事件の犯人は同一だと思っているわ。その理由は説明しにくいんだけどね」
「なんですか、それ? 説明出来ないのはまずくないですか?」
ちょっと反抗した。だが、先輩はそれをするりと返した。とんでもない言で。
「この場合他学年云々は考えなくていいわ。どうせ考えていたんでしょう?
この文化祭準備の時期に、廊下を他学年が歩いてたって気にする人はいないわよ」
言われてみれば、そうかもしれない……?
「君らだって二階へ来たりしたじゃない」