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「で、犯人はその金川さんってことで話しは進んでるの?」
「少なくとも、うちのクラスで金川さんを疑っていないのは崇城さんぐらいです」
「ということは、君も金川さんを疑っているの?」
「いえ、それはなんというか……良くわからないです。だって、金川さんは盗みをするような人ではなさそうですし……」
「曖昧な言い方ね」
時刻は放課後。場所は『ラマール』。テーブルの向かいには平先輩が座っている。
まあ、なんていうか、ぼくは平先輩と三日連続で例の交差点でばったり出くわし、先輩によってこの喫茶店に引きずり込まれることになった。
そして今、ぼくは今日クラスであった盗難事件とその一部始終を平先輩に話して聞かせたところであった。
「金川さんは否定してるんでしょ?」
「そりゃあ、そうですよ」
「きっと、それ嘘じゃないわよ」
平先輩はオレンジジュースに浮かぶ氷をストローで突きながら言う。
「どういうことですか?」
ぼくはジンジャエール内に浮かぶ氷をストローで掻き回しながら尋ねる。
「それは――」
「知らなくてもいいことじゃないですよ」
先輩の言葉を遮った。先輩はおやっ? と呆気に取られたようにぼくを見る。それがなんだか“麗人”っぽいのだが、今は気に掛けていられない。
「何か知ってるなら教えてください。先輩のクラスだけじゃなくて、うちのクラスでだって盗難が起こったんです。先輩がそうだったように、ぼくだってクラスメイトが――友達が盗難にあったなんて、気分が良くないどころじゃないんですから」
平先輩は意外そうな目でぼくを見続けた。……えっ? ぼく、もしかして先輩からそういう感情が欠落した人間に思われてたのかな?
「……うん、まあ、そうか。べつに隠すつもりはなかった、というかむしろ協力してもらおうと思ってたんだけど――」
先輩はそうして話し出した。今度はぼくが呆気に取られた。