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お金を盗む人は、いったいどうしてそんなことをするのだろうか?
一・お金がなくて困っているから。
二・お金が欲しいから。
三・緊急事態で突然お金が必要だから。
四・盗めてしまうから。
五・出来心で。
あまり誰かの立場に立ってものを考えることが苦手なぼくは、そんなことぐらいしか思い浮かばなかった。果たして現実はどうなのだろう? もっともっと理由はあるのだろうか?
とはいえ、おそらく動機が二つに絞られることはなんとなくわかる。それは、
一・お金が必要だから。
二・巧みに盗むことが出来るから。
では、今回校内を騒がす連続窃盗犯の動機は、どちらなのであろうか? それとも、やはりぼくがまだ知りえないだけで、盗みを働く動機があるのかもしれない。そして多分そうなのだろう。きっと、ぼくには理解出来ない、想像の及ばない動機だってあるはずだ。
まあ、どんな動機であれ許すわけにはいかないが。
「小阪くんの財布から、お札だけ盗まれた」
「なんでだよ? だって、財布は貴重品袋に入れてたんだろう? 盗まれるわけないじゃん!」
「でも、実際盗まれてるし……」
「おい、貴重品袋管理してたの誰だよ?」
「……私、だけど」
金川さんがおそるおそる手を挙げた。クラスみんなの視線が彼女に向けられる。きっと金川さんのようなクラスの中心人物たる人ならば、人の視線を浴びても普段は物怖じしないのだろうけど、今は違っていた。
「……どこかに、置いてたりした?」
クラスメイトの質問に、金川さんは恐々答える。
「したけど、常に自分の傍には置いてたよ。誰も触れなかったし、盗む余裕なんて……えっ?」
クラスメイトたちの視線がちょっと冷たくなった。金川さんも含めてみんな、彼女のセリフで脳内に二文浮かんだのだろう。
金川さんしか貴重品袋には触れていない。
ならば、犯人は彼女しかありえない。