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うちのクラスは内装は小道具で飾付けをするくらいで凝るようなことはしないらしい。とはいえ、入り口ぐらいは頑張るらしく、ダンボールで大きなアーチを作るようだ。ぼくや小阪くんも今日はそれにくり出された。といっても、やることは大きなアーチを飾る小道具作り。
「面倒だな」
「頑張ろうよ。ね?」
なんて、スマイル一番小阪くんは言う。……ああ、そっか。うちのクラスにも可愛らしい男子生徒はいたのか。それに優等生だもんな、小阪くん。作業をしているときは床にべたりと胡坐をかいて座るのだが、そうなるとズボンがずれあがって靴下が見える。クラスメイトの男子のほとんどはくるぶしが見えるような短い靴下なのに、小阪くんは長い靴下をはいている。うーん、優等生。
とまあ、そんなことよりも作業作業。
「えーと、これはこう?」
「いや、きっとこうだよ」
「違うわよ! 何やってんの二人とも!」
小阪くんとダンボール相手にほそぼそ格闘していると、崇城さんに怒られた。
「じゃあ、こう?」
「うーん、ちょっと違うよ」
「えーと、じゃあ、こうですか?」
「そうそう! さすが小阪くん!」
いつもクラスでは影の薄いぼくらに崇城さんのような活動的な人が話し掛けているのを、周りのクラスメイトたちは「不可思議」と見ていた。そりゃあまあ、そうだよな。
そんなこんなで一時間、ぼくらは一生懸命一所懸命した。小阪くんのおかげでぼくらの作業も進んだ。
「じゃあ、これで終わり。みんな、ここから財布取って!」
金川さんが教室の前で貴重品袋を持って呼び掛けた。みんなが集まり、財布を各自取って行った。ぼくらも財布を手に戻した。
「盗まれてたり」
冗談のつもりでぼくは言った。小阪くんは微苦笑する。
「まさか」
小阪くんは財布を開いてみせた。その途端、彼は目を見開いた。ぼくも瞠目した。
小阪くんの財布に入っていたはずのお札が、全部なくなっていたからだ。