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今日の放課後も、部活へは行かずにクラスの手伝いをした。準備をはじめる前に赤い貴重品袋にみんな財布を入れる。ぼくも小阪くんも入れることにした。
「あっ、でもちょっと待って。飲み物買ってからにしようかな?」
文化祭実行委員の金川さんがやって来たとき、小阪くんはちょっとタンマした。そういえばぼくも喉が渇いていた。だから、ぼくと小阪くんは校内にある自販機で飲み物を買ってから出すことにした。
「じゃあ、戻って来たら出してね」
金川さんは崇城さんばりの笑顔で言った。
自動販売機は入り口付近にある。小阪くんと一緒に教室を出て、人でごった返す廊下を進んだ。自動販売機の前も人がいて、しばらく並ぶことになった。すぐに買えるように財布から百円玉を出しておくことにした。学校内にあるためか、ここの自動販売機の商品はほとんど百円だ。ペットボトルはちっと高いが。
「あっ、百円玉がない……」
小阪くんが言った。
「えっ? 貸そうか?」
思わずそう言っていた。まだ親しくなって数日しか経っていないが、どうにも小阪くんには男子のぼくでも庇護欲に似たものを覚えさせる。そのため、らしくもなくお金を貸そうとしてしまった。だが、小阪くんはそれを断った。
「うん、ありがとう。でも、千円札があったから大丈夫そう……そうだった。これ、ちょっと使えないんだ」
財布には縦に折れ目が二つある千円札と五千円札が一枚ずつ入っていた。だが、小阪くんはそれを使わなかった。理由を聞いてみると、これから必要になるらしい。
百円玉はなさそうだったが、十円玉や一円玉は多かった。それでも百円未満だが。
結局小阪くんだけ何も買わずに教室へ戻ることにした。途中小阪くんはトイレによることにした。まさかトイレ内に飲み物を持って行くわけにいかないので、ぼくはトイレの外で待つことにした。
間もなく小阪くんはトイレから出てきた。
教室へ戻って金川さんに財布を預け、作業に参加した。縁日というものが良くわからないまま、作業した。