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この作品は『ティーンルーティーントゥラブル〜ラッカセイトゥラブル〜』の続編になります。ですが、『ラッカセイトゥラブル』の方から読まないと内容がわからない、ということはないと思われます。
これはこれで1つの物語として読んでいただければ幸いです。
文化祭が一週間後に近付く。学校の雰囲気はそういつもとは変わらないが、移動教室などで他のクラスへ入ると、教室の後ろにあるロッカーの上に張りぼての看板や小道具が散乱していて、内のクラスでもそういった文化祭道具は徐々に増えている。クラスのみんなも、当日盛り上がるために努力をしているようだ。
かくいうぼくは、その作業が面倒なため、部活の方の作業を理由に手伝いは避けている。文芸部は部誌を作ればいいだけ、と思っていたのだが、実際は全然違う。いや、部誌を作るだけということにおいては間違いはない。だが、その部誌を作るのに信じられないほどの労力を費やした。
ぼくや唯一の文芸部同級生國寺くんも小説を書かされた。小説なんて書いたことのないぼくは途方に暮れ掛けた。それは國寺くんも同じらしく、三年生の山気先輩のもと、一緒に頭を捻くり回しながら小説を書いた。夏休みのほとんどは創作に費やした。
國寺くんは原稿用紙三〇枚ほどのミステリ小説、ぼくは二〇枚ほどのミステリもどき。内容は、少し前にぼくが関わったちょっとした出来事をネタにしたもの。
「脈絡ない」
二年生の松前先輩にはそう言われた。
それでも部誌には入れることとなり、ぼくは生き恥を曝すことに決定した。
「黒木くんの書いた小説、今読めない?」
「今は、無理ですよ」
朝の教室。ぼくはいつもと同じ時間に登校して、いつもと同じようにクラスに一人でいた崇城さんと話していた。崇城さんは部活の様子を聞いてきた。だからぼくは素直に答えたのだ。小説書いた、と。
崇城さんは微笑しながら小首をかしげた。彼女の特徴であるポニーテールが揺れた。
「じゃあ、いつなら読める?」
「いつって……」
そんなことを聞かれても見せたくはない。いっそ小説を書いたなんて言わなければ良かった、と後悔。
返答に窮していると、崇城さんはさらに言う。
「いつか読ませてね。きっとね」
嫌だって。