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魔装化の魔術師  作者: ななせ
一章 4代目とその身辺
1/2

プロローグ

ストーリー構成や登場人物の詳細設定で既にもう燃え尽きそう。

何とか余力で書きたいが……ランキングなんて知らない。

とりあえず完結へ!

 冒険王が500年前に開墾した新都“アヴィスフィリア”

 この地にはあらゆるものが引き寄せられる。まるでこの地を中心に引力が働いているかのようにだ。もちろん物理的に引力が働いているわけではない。開墾当時から強い魔素に覆われていたこの地には、人の領域となった今でも様々な魔物が集まる。強弱を問わず集まった魔物は自然的に出来る魔素溜まりを中心にダンジョンを生成する。こうした生態系を狙い人もまた集まる。冒険者や学者、さらにはそういった人々をターゲットに商人も集まる。500年前冒険王がこの地に開墾村を作り都市化していくまでにも墜落飛行艇や、難破商船団などある種のアクシデントでこの地に来たものもいる。当時、この地に訪れた者が好き勝手に城壁を拡張し、思い思いの区画を整備したために新都は数分歩けば街並みががらりと変わる。(副産物として迷宮都市ともいわれるが)

 そんな街だからこそ、多種多様と言えば聞こえはいいが様々な業態の商人がいる。その様はまさしく混沌というべきか、食料品や嗜好品を取り扱う商人はもちろんのこと、錬金素材の取扱商店や金融業、性産業までその幅は世界広しと云えど、この新都ならではの光景である。


 そんな商人達が集まる街の一角、通称商人街に一際大きな店舗を構える店がある。新都において、最も有名な商店の一つである“ナギノ魔具店”である。名の通り魔具を取り扱う。オリジナルの魔具からダンジョン産出品、さらにはアンティーク魔具まで取り扱う魔具の品目は膨大な数に及ぶ。そのため、30~40人のスタッフが常駐し買い取り販売を精力的に行っている。


 今日も今日とて、新都には“ナギノ魔具店”を目的に訪れる者もいる。そして、日々様変わりするこの街で唯一変わらぬ掛け声で彼の店は開店する。


 「いらっしゃいませ!ナギノ魔具店にようこそ。」



―魔装化の魔術師―



 彼にとって前世の記憶はいつも敵だった。電子工学系の大学を卒業し大学院に進学。後に一流企業にと志していたが、時代は就職氷河期。目指した企業は財務上の不届きで新卒採用枠を極端に減らし、跳ね上がった倍率を突破することは中堅大学院生の彼には到底不可能だった。大学時代の先輩に誘われるがままベンチャー企業を興したはいい物の、連日連夜の激務から体調を崩し長期療養の必要に迫られた。医者の勧告も無視するまま、やがて疲労と流行り風邪にやられ、朦朧とする意識の下出社途中に……。

 少し思い出すだけでも後悔の念がジワリジワリと身を焦がすようでいてもたってもいられなくなる。ただ幸運なことに彼には二度目のチャンスが与えられた。それが何者によってもたらされたのか、彼にはどうでもよかった。この人生こそは自分のために……そう思うことで、彼は所謂異世界転生と言う荒唐無稽な現実から目をそらすのに成功した。

 今世では恵まれている。彼はしみじみとそう思う。

 記憶はいつも敵だが、知識はいつも味方だった。孤児院で生まれたとき、成長の度合いに合わせず披露する彼の知識は、周囲の大人を驚愕させた。

 やがて、旅の魔術師に見初められ師事すること10年。

 魔術師の所有する大店を任せられるほどに、成長した。


 “ナギノ魔具店”


 彼が、4代目経営者兼筆頭魔装化魔術師を務めるこの店は新都の中では群を抜いて激務である。

 しかし、前世の記憶を辿れば地盤が固まっている業務の遂行など彼にとっては激務と言うに憚られる物だ。今日も彼はにこやかに出勤し、通常業務をこなしつつ後進の育成に励むつもりであった。あったのだが……。


 豪華と言うに不足ない応接間は落ち着いた色で統一されモダンな雰囲気を醸し出している。あくまで派手すぎず下品にならぬように細心の装飾が施された応接間は、通常筆頭魔装化魔術師の顧客を対応するためだけに作られた部屋だ。通常のスタッフがオープンスペースの作業場しか持たないのに対し、ここは高額な商品を取り扱うが故の配慮だ。

 そんな応接間で目の前に三種類の魔具を広げ、茫然自失とする彼に三人組の女性のうち一人がにこやかにほほ笑みかける。


 「シグレ……ごめんなさい。壊しちゃいました。修理お願いします。」

 

 紅髪に紅玉の瞳、酷く胸元が露出される服装が彼女の豊満な肉体を惜しげもなく披露している。彼女はアニメや漫画でよく見るお願いのポーズでかわいらしくお願いするが、彼……シグレはこめかみを痙攣させるに留まるのがやっとであった。日本人のサービス精神を忘れない事も彼が4代目に就任してからやや業績を伸ばしている要因の一つだ。“お客様は神様です”の精神は異世界でも通じる。彼は心の中でそう数度呟くことで平静を取り戻そうとした……が、女性の二の句でその努力も水泡に帰した。


 「14回目だから割引き×14でタダとかできない?」


 血管の切れる音が確かに聞こえた。三人組のうち発言者以外の二人は距離を取る。


 「テンメェェ!!くたばれぇぇ!!このクソあまがぁぁぁ!!!」


 ナギノ魔具店にけたたましい怒号が響くが、従業員たちの手は一瞬止まっただけで、あきれ顔で再び作業に戻る。その呆れがシグレに対してなのか、女性に対してなのかはわからないが。

2話ずつの投稿です。


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