第91話 出陣
戦場は王都から少し離れた平原。
迫るは帝国軍3万の軍勢。
いっそこの平原をダンジョン化できればどれほど楽だろうか。しかし、残念ながら複数ダンジョンを創る事は出来ず、スクランブルからこの平原までをダンジョン化するには王都もダンジョン化しなくてはならないのでやめた。
戦時中なら頼もしいかも知れないが、戦争後に必ず危機感を持つ者が現れる。それを回避する為だ。
だから今日持って来ている兵器は魔石を動力にしているものばかりだ。
スクランブルから打てるミサイルは別。今日撃ち尽くすので在庫は残さない。それくらいは許容してもらおう。200人で3万に挑むのだから。
「さぁ出陣だ!」
「「「おーー!!」」」
俺はみんなに声掛ける。
その掛け声を合図にしたかのように、帝国の先陣が一斉に此方に向かって来た。
異世界の勇者達、カナデのクラスメイトだ。
一人一人の戦闘力が高いからだろう、巻き込まれない様に帝国の兵士達は動かず、勇者達だけが此方に向かって来た。
「ロスディア様、手筈通りにお願いします」
「分かったわ」
ロスディアは俺たちの陣から出て勇者達の前に立ちはだかる。
勇者達は一人……いや、一柱突出したロスディアを、見た目美しい女性にしか見えないロスディアに一斉に攻撃を仕掛ける。
いくらなんでも異様じゃないか?此処に来るまで何度も戦闘があったにしろ、平和な国で育った学生達がなんの躊躇もなく、全員でロスディアに斬り掛かっていくなんて………操られてる?
ロスディアは平然な顔をして手をかざすと、見えない壁が勇者達の攻撃を阻んだ。
「…………」
しかし、勇者達は無言でロスディアの生み出した壁に幾度となく攻撃を加える。
斬撃を飛ばす者、打撃で破壊を試みる者、魔法を使う者………結果ロスディアには届いていない。
「煩わしいわね」
ロスディアは呟く。
「異世界より来た人の子よ。我はロスディア、混沌を司る原初の神なり。神に手を出し罪……償えよ」
え?ロスディアさん?殺しちゃダメですよ⁉︎
ロスディアのセリフが物騒で不安を覚える。
ロスディアの周りの空間が歪んだ。
グニャっと、見てると酔いそうだったが直ぐに元に戻った。
勇者達は一人を除いて全員が地に伏している。空間を歪めて意識を刈り取るとか、どんな状態になったんだ?見た感じ勇者達に外傷はなさそうだが………
ロスディアはその残った一人を空中に浮かべた。
漆黒の衣を着た者………古の勇者だ。
勇者達が正気に見えなかったのは古の勇者が操っていたのだろう………魅了とか洗脳のギフトか?神からもらう恩恵なのに物騒なギフトがあったもんだ。
ロスディアは空中に浮かべた古の勇者を…………潰した。
血肉が飛び散り、ロスディアに降り注ぐ。
次に当たりが光に包まれる。光が収まった時には倒れていた勇者達はいなかった。
事が済み、ロスディアが此方に戻って来る。帝国軍は事態の異常さに呆気にとられ動けない様だ。
「一人は約束の範囲外みたいだったから処分したわよ。彼奴陰湿でムカついたから」
その程度の理由で命を散らすのは神だからだろうか。古の勇者が不憫に思うが、魅了、洗脳能力で何をしたのか想像すると、自業自得にも思える。
「貴方が想像した三倍はえぐい事やってたわよ彼奴」
断罪は仕方なしだなそれは。
「じゃあ、私の分は済んだから帰るわね。後は貴方達で頑張りなさい」
「助かりました。ありがとうございますロスディア様」
俺は礼を述べてロスディアを見送る。
「そうそう………帝国の…帝都と争うなら私は完全に中立の立場を取らせてもらうわよ」
それは………そういう事なのだろう。
「畏まりました」
「気づいてはいるようね」
「まぁヒトミに聞いていましたから」
「あはは、成り上がりの神獣もやるものね」
成り上がりの神獣ね〜
「私はそう言うの好きよ。決められたレールよりはみ出し自分でレールを敷いていく存在。それを創るのが私の仕事だもの」
進化を促すダンジョンを創るのがロスディアの仕事だっけか。まぁヒトミは成功事例って事だな。
でもレールの無い世界で例えても周りに伝わらないと思う。
「細かい事は気にしないの。それじゃあね」
ロスディアは去って行った。
徒歩で………
うちの店来る時もいつも入り口から入って着てたな。どっかに住んでる?いや神界への入り口があったりするのだろうか?なんで転移しないんだろう?
「マスター。あれはギャグの一種のようなものですから深く考えては行けません。『歩くんかい!』ってツッコミを入れてあげると喜びます」
イヴが教えてくれた。そういやイヴも俺の考えてる事分かるんだっけか。俺は分からないのに不公平じゃね?
「マスター、今はその様な事を考えている場合ではないかと進言します」
それもそうだ。
「勇者達は女神ロスディアの力により異世界に帰った!残りは帝国軍のみ!皆んな力を貸してくれ!」
「「「おーー!!」」」
「行くぞ!」
戦闘が始まる。




