第90話 作戦
よくよく考えたら現在の戦力なら3万の軍隊くらい殲滅するのは容易い事だ。
神獣一体で街を壊滅出来る戦力を誇る。それが五体………過剰戦力だろう。
ただし、古い勇者がいなかった場合に限る。十数人いると思われる古い勇者達だが、前回帝国に侵入した時も一人しか現れなかったし余り表には出したくない事が伺える。
また、前回帝国に侵入した事から帝国は今回も警戒はしているはずだ。だから古い勇者が前線に来ている可能性はあっても二、三人ってところだろう………
だから、今回はちょっと欲をだしても良いんじゃないだろうか?
「イヴ、……………………って、メッセージを頼んだ」
「畏まりました」
コレで大丈夫だ。
「さぁ皆んな作戦を立てるぞー」
「先輩、さっきと違ってシリアス抜けたっすね?」
「だって、3万くらいシルヴァ達だけでも十分だろう?」
「そうっすけど……過去の勇者がいたらどうするっす?」
「妾が相手をしよう」
「複数いたらヒトミさんだけじゃ確実じゃないっすよ……」
「妾が信じられないと?」
「そ、そうじゃないっすよ⁈か、確実にするためっす!」
「まぁ複数いても二、三人だと踏んでるよ。一人に対して二人で挑んでもらいたい」
「………不服じゃ。一対一でやらせてはいけくれんのか?」
「俺は誰も欠けて欲しくないんだよ。安全に行けるならそれに越した事はない。俺の予測が外れて複数いた場合は、神獣達には一人に一体で、それでも余る場合はヒビキ、クーロン、イリム、アテナ、リリス、アンガス、ゲッコー、カナデ、デュランハン達、ヴァルキュリア達にワルキューレ達が二、三人組んで対応して欲しい。無理はするな」
「「「はい!」」」
「神獣達が古の勇者の相手に抜けれないようなら軍隊は俺たちの受け持ちだ。その場合は兵器類を解放する!」
大型のレールガンに魔石を動力にしたガトリング、機関銃類に戦車も用意してある。なにより店の屋上より発車出来るミサイルを準備した。
「……………殲滅戦になるじゃないっすか」
ヒビキが青い顔で呟く。まぁ思うとこがない訳じゃないが……攻めて来たのはあっちだからな。手心加えて此方に被害があったら目も当てられないだろう。
「この戦の状況次第だが、そのまま転移で帝国に攻め入る。例の手筈は大丈夫か?シルヴァ、オルム」
「あぁ我等が頼めば断られる道理はないからな」
「然り」
「了解だ」
「トールさん………」
カナデが俺を呼ぶ。
「勇者達は……」
心配してるのは勇者達、カナデのクラスメイト達の事だ。彼等はヒビキ同様、帝国に騙されている可能性が高い。一緒に殲滅してしまうのは余りに不憫だ。
「大丈夫だ……手は打った。そろそろ…………」
「来たわよ」
背後から突然声をかけられる。
金髪碧眼の白いドレスを着て何処か神秘的な雰囲気を醸し出している美女………ロスディアだ。
「神を呼びつけるなんて………いい度胸してるじゃない」
「それに応えるなんて女神ロスディア様は懐が深いですね。普通じゃありませんよ」
ニヤリと笑みを浮かべるロスディア。
「ふふふ……相変わらずと私の扱いに長けているわね」
「恐れ入ります」
普通が嫌いなら普通じゃないはお好きですよね?
「その通りなのよ」
「ですから伝わりませんって……」
相変わらずと心読んでくるなこの神は。
「神だからね」
「………話、進めてもいいですか?」
ロスディアと話をすると何故こうも進まないんだろう?
「私だからね」
「……………で、話なんですが」
「無視⁉︎」
「人にこう言う扱いにされる神も普通じゃないと思いますよ?話を進めましょう?」
「なんか納得が………」
「嘘は言ってませんよ」
「それは分かってる………いいわ、要件を言いなさい」
「ありがとうございます。ロスディア様は私をこの世界に読んだ女神様で間違いありませんよね?」
「えぇ、そうね」
「では、送り返す事は出来ますか?」
「出来るわ。でも貴方を送り返す気はないわよ。勿体無い」
「拉致監禁に近い扱いを受けたと思うんですが……まぁ今回は関係ないですね。私自身もこの世界が好きなので、それはいいです」
「じゃあ、誰を?」
「帝国に召喚された勇者達を返して欲しいんです」
「……………私にとってメリットは?」
「異世界より魔王と戦う為に召喚された勇者、それが騙されて戦争の鉄砲玉に使われようとしている。それを見兼ねた女神が勇者達を送り還し救済。なんて筋書きなら信仰の対象として十分だと思うんですが?」
「そうね……神の制約でこの世界の生物に干渉は出来ないけれど、異世界の勇者を送り返すだけなら問題ないわね………」
「何より、ダンジョンマスターのお願いで簡単に動く女神………普通じゃありませんよね〜」
ピクッとロスディアが反応した。
「そ、そうかしら?」
「えぇ、表向きは先に述べた通りの印象をこの世界の住人に与える事になると思います。後者は神々と、ここに居る私達だけの秘密。普通じゃないですよね?神が降臨した本当の理由は私のお願い。文献にも残しません。普通じゃないですよ〜」
「ふふふ…」
「ははは…」
「「ふはははは」」
ロスディアと笑い合う。
「良いわね〜相変わらずだわ。乗ってあげる」
「ありがとうございます」
「ただし!」
ロスディアが真剣な顔つきになり告げる。
「そこの勇者二人はダメよ」
ヒビキとカナデを指し言い放つ。
「何故ですか?」
「二人は他の雑多と違って勇者としてこの世界に選ばれてる。勝手に送り返したら私が恨まれちゃうわ」
誰にとは言わないが、それを司る神も居るんだろう。
二人の方を見る。
「俺は帰る気はないっすよ。まだまだ贖罪を返してないっす」
「私は………」
ヒビキの覚悟は決まっていたようだ。まだそんなに思い詰めていたのかと思わなくもないが、それだけの事をしてしまったのだからな………この場合は助かったが。
カナデはまだ女子高生だ。出来るならカナデは返してやりたかったが……
「トールさんは帰れなくていいの?」
「俺はさっきも言った通りこの世界が好きになったんだ。この世界でやれる事を全部やらないと帰りたいとは思わないかな?」
イリム、リリス、アテナの事もあるし………残して帰るとか選択肢にないんだよ。
「じゃあ私も大丈夫。だから……責任とってねトールさん」
「へっ?」
「ロスディア様。私も大丈夫です」
「ちょ、カナデさん?どう言う意味だ?」
「分かったわ。じゃあ今すぐ送り帰す?」
なんか話が進んでいく。
「い、いえ、今は相手を引き付けたいので、明日の開戦前にお願いします」
と、とりあえずロスディアに答えなければ。
「分かったわ。じゃあ明日また来るわね」
そう言ってロスディアは姿を消した。
「じゃー解散!明日は大変な1日になるから皆んな鋭気を養ってね!」
カナデが号令をかける。
それ俺の仕事………
「先輩………妹泣かせたら先輩でも許さないっすよ」
「お前は妹がこんなハーレム野郎にとられていいのか?」
自分で言うのもアレだが、俺は嫌だぞ?妹とか分からんが、娘が居たとしてそんな奴好きになったら全力で暗殺する。
「先輩だから……いいっす」
「何処からその信頼が来るのか分からんが、カナデが悲しまないよう努力はする」
カナデが別な恋を見つけるよう頑張ろう。それでダメなら……責任とりますか……
「イリムはいいのか?」
「カナデさんの目は大丈夫です。アテナみたいな興味本意なら敵対しますが。あ、アテナは種族的に仕方ないと思いますので許容範囲です」
うん、よく分からない。
難しい事は後にしよう。先ずは目の前の戦争を終わらせてからだ!




