第89話 開戦
一週間ほど前、帝国より宣戦布告が成された。
そこから怒涛の勢いで王国に攻め入り、今は王都の目と鼻の先に陣を引いている。
帝国と王都の間にあった村や町の住人は既に避難済みだ。例のごとくビオトープに仮住まいを建設し今はそこにいてもらっている。
「さて………策はありますかレオさん」
「………想像よりも早すぎる。俺には正直打つ手がない」
王国兵は村や町の人々を逃す時間を稼ぐ為、再三攻めて来た帝国軍とやり合っていた。
地の利が此方にあるとは言え、流石に消耗が激しい。
しかも帝国軍の先発隊はカナデの同級生達、つまり勇者達だ。カナデやヒビキ程じゃないにしろ一年近く訓練された異世界人は並みの戦力ではなかった。
「では、私が出ましょう」
「……………」
レオさんは何も言わない。そりゃそうだ。どんなに戦力を囲っていても、その頭たる俺はただの商人。人を殺めた事もない素人なのだ。
「………すまん」
「今更なに言ってるんですか。半分は私の責任なんですから」
レオさんは優しい。なんだかんだ言っても俺なんか気遣ってくれるんだから。
だからこそ甘えちゃいけない。半分……いや、帝国との戦争は大半、俺の責任なんだから。
「では、行ってきます」
「武運を祈る」
レオさんに背を向け、軽く手を仰ぎ別れる。
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スクランブル食堂にて
「みんな!もう知ってると思うが、帝国軍がもう目と鼻の先まで迫って来ている!」
食堂にて全従業員に通達する。
「王国軍は既に再三、帝国軍に挑み消耗しきってしまった。あとこの国を守れるのは俺たちしか残されていない!」
ただの商人が何言ってんだって話だが事実なんだから仕方ない。
「明日の戦闘に俺たちも参戦する事となった!」
皆んなが息を飲む。本当に皆んなには悪いと思う。
「本当に皆んな悪いと思う。俺たちの経営理念は『笑顔のために』。その理念に反するだろう戦争に参加して欲しいと言ってるのだから」
死ぬかも知れない。そんな場所に向かわせようとしているのだから。でも言えない。言って仕舞えば何かが崩れる気がするから。卑怯だが、理念を言い訳にさせてもらう。
「だが、ここで俺たちが出なくてはもっと多くの笑顔が失われてしまう!だから俺は行こうと思う!」
俺がそう声をかけると…………
「私はトール様に従うのみです」
イリムが声を上げる。
「薬品部は魔術の鍛錬もしてきたぞ」
続いてリリス。
「ははぁ!僕も役に立てると思うよ!」
アテナまで。
「武器、防具の整備はわしらに任せろ!」
頼もしいなゴードン。
「戦時に必要な雑貨は揃えておきました」
抜かりないなゲッコー。
「酒造班全員トール様に命を捧げております!」
ちょっと重いよウォッカ。
「食料………任せる………」
頑張って喋ったなリュアス。
「炊き出しは私達が!「やるなのー」「だねー」「ですー」」
戦闘には連れて行けないってか行かないが、炊き出しは助かるよサリア&シルキーズ。
「食料補充はマリーとリュアスさんに任せますので、俺はお伴します」
助かるよアンガス。
「当然、我等も行くぞ」
「暴れらるんのか?」
「以前の黒衣の奴は妾の獲物じゃ!」
「我等と対等に戦える者が居るのか?面白い!」
「マスコットじゃないんだからね!」
シルヴァ、ソン、ヒトミ、オルム。君達が居なきゃ勝てないよ。モチ………いつのまにツンデレになったんだ?
「コクさんコクさん。俺たちのコンビネーションを見せる時が来たっす!」
「うむ、よかろう。足を引っ張るなよヒビキ」
いつの間にそんな仲になったんだヒビキ、クーロンよ。
「がんばろうねミッシェルちゃん」
「えぇ、蹴散らしましょうカナデちゃん」
遠足に行くんじゃないからな?
「店長!戦争終わったら店再開しますよね?俺たちまだやりたい事残ってるんで、速攻終わらせますよ!」
戦闘種族は頼もしいなミスト。その後ろでワルキューレ、ヴァルキュリア達が頷く。生産大好きな戦闘種族って………
「本国と事を構えるのは複雑ですが……私も、私の野望の為に微力ながらお力添え致しましょう」
野望って………モフモフですよね?リリアーナ皇女の後ろでヘレンとゴメスが頷く。
誰一人怯えて居る者はいなかった。本当にありがたい。
………改めて見るとウチも大所帯になったな。最初は6人から始まったのに今はもう200人近い。
だが対するは帝国軍3万。王都の人口の半分以上になる……………
あれ?古い勇者が出張っていなけりゃ簡単に勝てるんじゃないかこれ?




