第88話 表彰式
さて、表彰式が始まる。
舞台には正装したレオさんが上がり、優勝者、仮面の少女カナン、隣に準優勝スクルドが並ぶ。
「第一回スクランブル杯、優勝者カナン!貴殿は今大会にて優秀な実績を収めた事をここに称する。受け取りたまえ」
真面目な口調のレオさんはどこか違和感があり、ついつい口元が緩んでしまいそうだ。
「また、その勇猛を讃え、我が騎士団に迎えたいと思うがどうだろう」
「光栄に思います。………しかし、辞退させて頂きます」
まぁそうだよな〜
「………理由を聞いても?」
「私は既に所属している組織がございますので」
「それは………帝国か?」
「いえ……」
仮面の少女が、その仮面をとった。
「私は勇者ヒビキの妹カナデと申します。所属はスクランブル食品部門です!」
いやはやバレバレですよね。
ってな訳で今大会は準決勝以降身内しかいなかった訳ですよ。流石スクランブル杯。スクランブルの人員しかいない大会になってしまいました。
「……………」
「当然複勝も入りませんよ?必要な物は頼めば作って頂けそうですし」
レオさんがなんとも複雑そうな顔をしている。
まぁそりゃそうだよな。期待しついた騎士団員は本戦に1名しか参戦出来ず、その一名もゲッコーに倒されている。5名……いや、カナデを入れて6名しか参戦しなかったウチのメンツで上位総なめしてればね〜
でも、言い訳させてくれ。ウチのメンツはそれこそ寝てる時もダンジョンで過ごしているんだ。普段の生活だって怠けてなければ多少筋肉はつく。更にノーマルダンジョンが出来てから休日訓練する者も出始めていた。あと俺のギフトで更に成長効率も上がっている。週一しか来ない騎士団が勝てるはずがないのだ。
ちなみに、イリム、アテナ、リリスの強さはヒビキよりも上になっている。参加しなかった進化組もアンガスやゲッコークラスの実力はあるのだ。
ヒビキも最近はレジェンドヒュドラ形態のクーロンと模擬戦してるし、Sランクに片足突っ込んでるんじゃないか?
「トールさーん!やりましたよー!」
優勝カップを携えカナデが俺に向かって手を振っているので、軽く手を振って返す。
「貴殿の店は化け物の巣窟か?」
隣にいたガルフィンさんが俺に話しかける。
「私が強くないと言った意味が分かりましたか?」
「あぁ、最初は俺を倒しておいて嫌味かと思っていたが、アレを見たらな………」
ウチの基準で俺は強くない。戦闘能力は下から数えた方が圧倒的に早い。だって俺には俺のギフトの恩恵がないのだから!
「トールさん!私やりましたよー」
表彰式が終わってカナデが駆け寄ってきた。
そんなカナデに俺はチョップをお見舞いする。
「あ、痛!な、なにするんですか〜」
不満そうに抗議するカナデ。
「お前な〜出るなって言ったろ?」
「だってー………」
俺はカナデに出場は見合わせるように言ってあったのだ。帝国から掻っ攫ってきた勇者が出場とかシャレにならないし、ヒビキの立場も店の中ならいいとして国的には微妙だ。解説にしたのは少しでも立場が国に浸透してくれればと言う思いもあった。
「私だけ自由に出来ないのも我慢の限界だったんですよー……」
「まぁ気持ちは分かる。リリアーナ皇女も同じだろ?」
「皇女様は生き生きと事務仕事してるじゃないですか〜私のギフトは戦闘向きだし……」
決勝戦でカナデが使った光る剣や盾、あれの事だろう。
「私のギフトは『クラフト』。魔力でその場限りの道具を作製する能力…」
その場限りのってのが厄介だな。長く使う道具なら普通に作ればいい。急に物が必要になった時くらいしか用途が思いつかないな……カナデがやったみたいに戦闘向きなのだろうか?
まぁともあれ………
「過ぎた事をこれ以上とやかく言うつもりはないよ。優勝おめでとうカナデ」
そう言って頭を撫でてやると、満面の笑みなるカナデ。まぁ後のことはなるようにすればいい。
「リリアーナ皇女……いるのか?ここに?」
ガルフィンさんが問いかける。
やべ、いるの忘れてた。
「……内密にお願いします」
「もう何があっても驚かないと思ったのだが……」
なんかすみません。
こうして初の武闘大会は幕を閉じた。
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それから一ヶ月………
「トール……来たぞ」
「そうですか………」
帝国が攻めて来た。




