第86話 あとは観戦しよう!
朝日に照らされ俺は目を覚ました。
隣には輝く銀髪の美女が横になっている。その頭に付いている耳を撫で俺は考えていた。
寝すぎた…………
多分朝だよな?予選終わっちゃった?ウチから出場した奴等は無事か?
暫くして銀髪の美女……イリムが目を覚ました。
「おはようイリム」
瞬間イリムが抱き付いて来た。優しく頭を撫でてやる。
「心配かけた」
「ご指示通りお目覚めの際いるように致しました!」
涙を浮かべ語るイリムを再度抱きしめる。
その後、イリムから大会の様子を聞いた。予選どころか本戦も終わっていた。つまり俺は丸一日寝ていたらしい!
まじかー。ソン一発撃った時は平気だったんだがな……『震拳』の乱用は控えよう。だが、今回は他にも色々技能を使ったのが原因だろう。やはり俺は強くないようだ。無理はやめよう。
ウチから出場したのは5人。アンガス、ゲッコー、スクルド、フリック、ビルド。ウルド、ノルン、ミストは出場しなかった。
昨日?の本戦でゲッコー、フリックは二回戦敗退、ビルドは準決勝敗退、アンガスも準決勝でスクルドに敗れたそうだ。
で、本日は決勝戦。スクルド対ビルドに勝った仮面の少女の対決となる。奇しくも女性対決となった。
仮面の少女の事をイリムに聞くが、詳しい事は分かっていないそうだ………ただ、双剣で戦うスピード重視の剣士という事だった。
不特定多数を招くので帝国の潜入を拒む為にも出場者の身元は明確にしてってレオさんに頼んだのに、出場者の質を下げるからと却下された。観客はチケット購入した人なら入れるんだから意味ないだろとか言われるし、ならチケットの購入者が本人か身分証を確認してっと言ったが、身分証を市民全員が持ってるわけじゃないと言われ、そこで諦めた。何言っても聞かない気がしたし。
愚痴っても仕方ないか………俺はイリムと大会会場へ向かうことにした。
大会会場には既に多くの観客で埋め尽くされている。出店は賑わい、会場は活気で賑わっている。
商人としてこの活気は好ましい。仕事している時に味わう活気は俺のテンションをマックスにしてくれる。
しかし………
今はどっちかって言うとオフモード。短気な俺は渋滞と混雑が発狂するほど嫌いなのだ。待つと言う作業が死ぬほど嫌いだ。
関係者入り口から中に入る。
来賓用の客席には既にレオさんがいた。となりにはガルフィンさんも……
「おートール。やっと目が覚めたか?」
「えぇお陰様で、ご心配お掛けしました」
「いや、別段心配してた訳じゃねぇんだがな」
そう言い放つレオさんの隣でガルフィンさんが立ち上がり、此方にお辞儀をする。
「トール殿、先日は失礼した」
「いえいえ、頭を上げて下さい獣王様。王族に頭を下げられるとか生きた心地がしませんから」
「フェンリル様を始めとする神獣様方の主人殿が何を申しますか!貴方は獣人族にとって神にも近しい存在なのです!」
「それなら決闘いらなかったですよね?」
「いや………それは………恥ずかしながら決闘後に知りまして……大変申し訳ありません!」
再びガルフィンさんが頭を下げる。
「いやいや、ですから頭を上げてくださいって!……それで…イリムの事なのですが…」
「はい……正直、連れて帰りたい気持ちはあります」
「私は嫌ですよ」
「あぁわかってるよ。本人もこう言っておりますし、連れて帰えっても王族の柵があります。しかし、此処ならば神獣様方の庇護もありますので安心出来るかと……改めてイリムをお願いできますか?」
「喜んでお引き受けいたします」
あーやっと、了解を得る事が出来た。
「ただし!」
へ?
「ただし、イリムに手を出したなら………」
「お父様……もう手遅れですよ?」
「なんだと⁉︎」
「申し訳ない。既にそう言う関係です。お義父さん」
「お義父さんなど呼ぶな!せめて私を倒して……いや、既に倒されていたか……くっ!トール殿に手を出してはフェンリル様の怒りを……あーどうしてくれよう!」
「もの凄い葛藤のなか恐縮ですが、賭けを清算させて頂いてもよろしいですか?」
そう、賭けの清算が残っていた。ガルフィンさんが勝った場合はイリムを連れて帰る。俺が勝った場合はイリムの願いをきく。だ。
「婚姻を認めろなど言うまいな………」
それもありだが………
「イリムが決める事ですので」
「………」
「母の………王国と獣王国の国境付近の森に私と母の住んでいた村の跡地があるはずです……そこで、母の、村の人達の弔いをお願いします。もう、一年半も経ってしまいましたが……」
「分かった………必ずすると約束しよう」
うん、なんかそうなる気がしていた。弔いには俺も参加しよう。会った時はないが、ミーシャさんにイリムの事を大切にすると誓いを立てに行こう。
だからレオさん。声を出さないのはいいんですが、笑ったり泣いたり百面相やめましょうね。貴方王族なんですから。




