第85話 決戦!
「よく逃げずに来たな」
獣王が言い放つ。
「そりゃ、決闘断って闇討ちされるのは怖いですからね」
「よく言う。あのダンジョン内で……いや、そとでも神獣を従えている者を闇討ちでどうにか出来るものかよ」
おや?気づいていらっしゃったか。
「いやいや、常に控えさせている訳じゃありませんよ?」
「フェンリル様の眷属……シャドウウルフは影に潜む」
流石狼人。知っていたか。
「では、イリムがウチにいても安全だと理解して頂けましたか?」
「それとこれとは別だ。頭で理解できても心が納得せん」
「えぇ、だと思います。ですので逃げる訳には行かないのです」
「食えぬ奴だ」
「商人とはそう言う人種ではないですか?」
「はっ!確かにな」
言葉を幾らか交わした後、お互いに構えをとった。
俺の装備はいつものガントレットに脛当てを追加したスーツ姿。ノーネクタイだ。
対するガルフィンはショートソード二刀流。此方も軽装で動きやすさ重視と言ったところか…
「それでは、ルールをご説明いたします」
ミッシェルが説明に入る。
「勝敗の条件は、相手の降参もしくは気絶です。、場外に落ちた場合も負けとなります。後相手を殺害した場合も負けとなりますが、故意でなく勝敗が決まったあとに衰弱死した場合これに入りません。当大会では医療班に力を入れております。即死、部位欠損以外はなんとかしてみせましょう!私がやるわけじゃありませんが。また、目潰し、金的などの急所攻撃も禁止致します。更に武器は刃を潰した物をご利用下さい。防具の持ち込みは制限いたしません」
う〜ん。もうちょっとなんとかならなかったんだろうか?事故死は仕方ないって言ってるように聞こえるんだけど?
「それでは……両者構え!」
ミッシェルから号令が聞こえる……
「始め!」
カーン!
ゴングが鳴り響いた!
瞬間!ガルフィンが距離を詰めてきて、剣で一閃!俺の首を狙ってきた!
ガン!
鈍い音がした。俺はガントレットで受け止めたのだ。
ガン!ガン!ガン!
連続して繰り出されるガルフィンの斬撃!それを俺はガントレット、脛当てを駆使してさばいている。
ガン!ガン!ガガガン!ガガガガガン!
ガルフィンの斬撃は更に速度を上げていく!
見えているのか?いえ、見えませんよ?ならば何故捌けるのか………
「超高速の獣王ガルフィン様の攻撃を防戦一方ながら見事に防いでいる我らが店長!店長は一体いつの間にこれ程まで腕を磨いていたのか⁉︎」
「先輩はたまに筋トレしてたくらいのイメージしかないっすね。俺もびっくりっすよ」
「私は筋トレしていた事実にもビックリだー」
失礼な。筋トレくらいするぞ。ゴメスとやった時に流石に反省して若干トレーニングはしてたんだよ。
ガン!ガガン!
ガルフィンの斬撃は未だ続く。
「むう…………」
ガルフィンが一旦距離をとった。
「まさか、こうまで決まらないとは思わなかったぞ……」
「お褒めに預かり光栄です」
「だが……守ってばかりでは勝てぬぞ⁉︎」
ガルフィンが一直線に俺に向かい飛び込んできた!
ここだ!
俺はガルフィンの攻撃をかわし、カウンターに蹴りを当てる!
「震脚!」
ドゴン!
轟音が響きガルフィンが数メートル吹き飛ぶ!
吹き飛ぶが何とかリング内で耐えたようだ……ちょっと驚きだが、片膝をつき、それなりのダメージが伺える。
「グハッ」
血を吐くガルフィン。
「こ、これはフェンリル様の……」
「降参しませんかガルフィン様?」
「人風情がフェンリル様の!」
「あ、私は人族ではありませんよ?」
「な⁉︎」
名前 トール・マツモト
性別 男性
種族 ダンジョンマスター
種族 ダンジョンマスター
ダンジョンを統べる種族。ダンジョンを想像し、生けるものに試練を課す種族。眷属とした者の力を使う事が出来る。不老。
これが俺の力の秘密だ。
特に、『眷属とした者の力を使う事が出来る』の一文だ。
ガルフィンが言ったように、先程の攻撃、またソンに打った『震拳』や『震脚』はシルヴァの能力だ。
ついでにガルフィンの攻撃を凌いでいた仕組みは、ヒトミの第六感とモチの危機察知能力で察知して、ソンの反射神経で捌き、オルムの柔軟性で吸収、それでもダメージが通ればクーロンの自己回復能力で回復していたのだ。
これに気が付いたのはゴメスとやり合った後、キュアに回復魔法の礼を言いに行った時だ。キュアの話では、回復魔法をかける前から俺の体は回復を始めていたと言う。今思えばヒュドラの回復力だったのだろうが、当時クーロンはまだ、ただのヒュドラだったから今ほど回復力が高くなかったのだ。
で、イリム達も進化したばかりだったので、俺は俺の種族が気になり、イヴに調べてもらったらこうなってた訳だ。
ダンジョンマスターって………職業じゃないんだな。人間やめてたよ俺……っとか当時は思った。
だがまぁ、そんな都合がいい訳がなく落とし穴はあった。眷属の能力は使えるが、筋力や魔力が上がる訳じゃなかったのだ。
だから凌ぐは凌いだけど、ガルフィンの斬撃を凌ぐたび、ぶっちゃけちょー痛かったのだよ!オルムの柔軟性、クーロンの自己回復ざなかったらやってられないよマジで!
斬撃も見えないしさ!勘頼りだよ!ちょーこえーんだよ!もうやけだよ!
いや、一応使えるか実験はしてたんだけど…安全策講じた実験と実践は違うといいますか……怖いんだよ。
まぁそんな訳で降伏勧告してる訳ですよ。
「神獣の力を携えたダンジョンマスターか………」
いや、力って筋力は上がってないよ?魔力もないから、クーロンみたいに全属性としんどくて無理だよ?ギリ一発ソンの雷帝の拳を使えるかな?その後魔力枯渇で倒れるけど。
「………ふん!」
気合いで立ち上がるガルフィン……
「ガルフィン様が立ち上がったーー!」
ミッシェルが場を掻き立てる。イヤやめて欲しい。なんども言うけど筋力は上がってないのだよ。クーロンの自己回復があっても、そう何度も『震脚』は使えないのだ。
「……………」
立ち上がったはいいが、剣で支えていないと今にも倒れそうだ。
「無理しないほうが宜しいのでは?」
一応聞いてみる。
「ふん!お前とてフェンリル様の技をそう何度も使えまい。足を引きずっているのが何よりの証だ」
「いや、まぁそうなんですが………」
「ならば!」
再びガルフィンが剣を振りかざした。
俺はガントレットで剣を弾き、反対の手をガルフィンの腹部へ押し当てる。
「両手、両足、一発づつなら問題ないんですよ……『震拳』」
ドゴン!
その場で崩れ落ちるガルフィン。ゼロ距離で振動だけを喰らわせればそうなる。
「それまで!勝者トール!」
審判をしていた騎士により俺の勝利が告げられる。
すみませんガルフィンさん。強くないとは言いましたが、弱いとは言ってないんですよ。スクランブル基準じゃホントに強くないんですよ俺は………
そう思いなが意識を手放した。




