第84話 開会式
「トール様!何故あの様な約束をしたのですか⁉︎」
「何故って、あのまま断ったら闇討ちとか怖いじゃないか」
正式な決闘なら誇りたい獣王は約束を守るだろう。
「大丈夫だ。負けないから」
「そんな……勝ち負けはいいんです!トール様がまた……」
「俺はイリムがいない方が嫌だからな」
「え?」
「また倒れるかも知れないが、ちゃんと勝つから起きた時にいてくれよ」
「…………はい!」
若干目に涙を浮かべながらイリムが返事をする。
「ヒューヒュー。お暑いね〜」
とても……とてもいいシーンにレオさんが茶化してきたので2人で睨む。
「おぉ怖!そんなに怒るなって。しかし、嬢ちゃんがサーシャの娘とわなぁ〜誰かに似てんなとは思ってたけども」
「レオパルド陛下は母をご存知なのですか?」
「もう20年以上前になるかな〜ガルとサーシャとあと1人と俺で冒険者パーティを組んでいたんだよ」
獣王と旧知の仲ってそう言う事か……
「まぁ数年で解散しちまったがな。サーシャとガルが付き合いだしたのは俺と別れてからだ。だがまぁ、ガルは当時既に婚約者を決められていてな、抵抗も虚しく王になる為に引き裂かれた訳だ。子供まで居たのは初めてしったが」
「王の座を辞退する事は出来なかったんですか?妻子を捨ててまでならなくてはならないものなのですか?」
俺には理解出来ない。
「………まぁそう思っちまうよな。だが、王ってのは思ってるより自由がない職業なんだぜ。かりにサーシャを側室に迎えてもサーシャは重圧で可笑しくなってしまっていただろうよ……」
なんだかんだで、立派に王を務めるレオさんの言い分だ。そうなのだろうよ……
「だから普通ならイリム嬢ちゃんを迎えるなんて言わなかっただろうが……サーシャが死んだとなっちゃな……」
死なせてしまうよりは近くに置いた方がマシって事か……サーシャさんの分までって事で熱くなってしまったのだろう。たが………
「気に入りませんね。今更じゃないですか?」
「あぁ今更だな。ガルに同情はするが賛同はできねぇ」
「えぇ」
「だが、ガルは当時ですら抜きん出た戦闘能力を持っていた。老いたとは言え獣人は鍛錬を怠る事はないだろう……勝てるのか?」
「勝ちますよ」
天地がひっくり返るほど無理があろうが、気持ちで負けなければ絶対はない。
「頑張れよ……」
「えぇ」
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大会当日。
「さーやって参りました王国主催の武道大会!その名も……スクランブル杯!進行はスクランブル警務部主任、私ミッシェルと…かつて王国の村を潰して廻っていた勇者ヒビキ!」
「ミッシェルさん!その紹介酷いっす!今はスゲー後悔して反省してるんすか勘弁して欲しいっす!」
「を解説に招いてお送りいたします!」
おぉ………大丈夫かミッシェル。いきなり地雷踏み抜いたぞ?観客もドン引きだ……ってかヒビキは出ないんだな……
「ところでヒビキさん、勇者なのに大会に出場しなくてよかったんですか?なんですか?勇者の誇りですか?奢っているんですか?」
「ミッシェルさん……ほんとすみません……虐めないで下さい……」
「やだなぁ。同じ職場の仲間じゃないですか虐めるなんて人聞きの悪い。可愛がりですよ?で、どうなんです?」
「今大会では熟練者よりも新規精鋭を求めた大会っす。ある程度名が知られてる方は出場出来ないんすよ。当然スクランブルの神獣様達も出場出来ないっす」
「なるほど、なるほどーよく分かりました。ありがとうございます!」
ミッシェル……キャラが可笑しいぞ?ド◯とかやらせ過ぎたのかな?
「さてさて、ヒビキさんの言う通り、この大会では新規精鋭の開拓を目的としていますので、ある程度名の知れた猛者は出場できませーん!実際ある程度をわかりやすく言うと、Aランク冒険者並みの知名度です!飽くまで知名度!隠れた猛者はいるかも知れない!気を抜かずに挑んでくれ!」
ノリノリのミッシェルが更に続ける。
「今大会は本日に予選、明日に本戦、明後日に決勝戦を予定しているぞー!予選はAからHのブロックに別れて総当たり戦をしまーす!各ブロックで最後まで立っていた2名が本戦に進めます!今大会の応募者数は………なんと256名!各ブロック32名の総当たり戦って訳だ!熱くなれや!
本戦に進んだら今度は各ブロック通過者16名によるトーナメントになります!くじ運とか考えるなよ………予選での実力を加味してどう組み合わせたら面白くなるか、当店の頭脳イヴ様がトーナメント表を作るぞ!みんな!予選で出し惜しみするとトーナメントでうかっり優勝候補と一回戦に当たってしまうかもだぞ!
最終日、決勝戦はゆっくり休養して頂いてから全力で臨んでもらいます!ここまで来たらあと一歩!優勝者には副賞で当店の商品好きなものをなんでも一つだけプレゼントだ!今ならゴードンさんの新作魔剣もゲット出来ちゃう⁈店長太っ腹!……え?いや、太ったとかそう言う意味じゃありませんよ、ホント、店長、スレンダーですから、ホントですよ?いやー店長!睨まないでー!」
いや、見てすらいないからな……ミッシェル…ノリノリで盛り過ぎじゃないだろうか。ちょっとなんかやらかしそうで不安なんだが……
「なお、優勝商品は騎士団無条件入団らしいですよ?」
おいおい、副賞煽っといて優勝商品で落とすのか……
「ここで、本大会開催国並び開催責任者としましてレオパルド陛下よりご挨拶ならび開会宣言を頂きます。陛下、お願いいたします」
「うむ………って、おい!ミッシェル!ウチのチビ達が懐いてるからって調子に乗るなよ!騎士団入団がオマケにしか聞こえねぇじゃねぇか!後で裏に来い!」
ミッシェルが「ヒャー」とか言ってるが、これレオさんの仕込みだよな……いくらミッシェルでも国王陛下に無礼は言わない……と思う。
アイスブレイクって話法がある。初めに相手の緊張を解し、意見を言いやすくする話法。
……………考え過ぎか?
「では、改めて、今大会が開催される事を心から嬉しく思う。出場は日頃の鍛錬の成果を十二分に発揮し、悔いの残らぬよう挑んで欲しい!ここに第一回スクランブル杯の開催を宣言する!」
レオさんが堂々と開催宣言をした。
「なお、熟練者の大会が秋に行われるとか行われないとか?優勝、準優勝者はそれに予選なしで出れるとか出れないとかとか?」
「ミッシェル!」
「ヒャーごめんなさい!」
100%宣伝だな………
「気を取り直しまして、まずデモンストレーションと致しまして、元Aランク冒険者、獣王ことガルフィン様と、当店スクランブル店長、トール様による試合を行います!拍手を!」
会場から大きな拍手が聞こえる。
さぁ勝負時間だ!
俺はリングへと歩き出した。




