第82話 武道大会?
「ト・ー・ル・ー♪」
うわ………レオさんがご機嫌でやって来た。すげー嫌な予感がするんだけど……
「武道大会の季節だな」
「はい?」
「武道大会の季節だな」
「いや、聞こえてますから繰り返さないで下さい。去年そんな事やりましたっけ?」
「いや、やってないぞ」
「え〜と………一からやり直しを要求します」
「武道大会やろうぜ?」
「意味が分かりません」
「楽しそうだろ武道大会」
「生憎私は武闘派ではないもので」
「つれねぇな〜トール。なぁやろうぜ?」
「確認です。開催地は王都ですか?」
「ああ」
「会場は?」
「ここ」
「それは……作れと?」
「今から会場の土地確保して建設始めても間に合わないじゃないか。トールなら一瞬だろ?ビオトープだっけか?あそこスゲー広いんだろ?ダメか?」
「ダメかってか、やれる、やれないで聞かれればやれますけど…何故突然武道大会なんです?」
「兵士達もお前さんトコのダンジョンで随分地力をつけて来たからな、ここらで腕試しをしてみたいんだ。それに魔物ばかり相手にしているから対人戦も想定しておきたい」
王国の兵士達はアレからも順番にダンジョンに入り地力上げていた。今ではBランク階層、無理すればAランクにも届きそうだ。まぁ無理はさせないけどな。
「あと、他国に武力を示す狙いもある。帝国との仲違いもあるし、他の国がこのゴタゴタを狙って来ないとも限らないからな」
レオさんがしたいだけかと思ったが、意外と国王様らしい考えがあったのか。
「でも、逆に他国の精鋭を無条件に国内に入れてしまう口実になりませんか?」
他国に示すと言うのだから、何らかの形で招くのだろうし……
「正規に招待した場で謀反を起こせばその国は他の国からも信用を失い狙われるだろう。うち以外全ての国が内通してれば別だが、ありえない」
人族至上主義と魔族の国、獣王国とかエルフやドワーフの国が手を組むかって言ったら無理だろうな。
「って事は獣王国なんかも招待するつもりですか?応じますかね?」
「獣王とは旧知の仲でな。大丈夫だろう」
獣王国は魔族でも獣人にくくり栄えてる国だ。人族に排他的と聞いたが……旧知の仲?まぁレオさんならあり得るか。獣王って響きがレオさんと気が合いそうな気がする。むしろレオさんより知的だったりして……
「で、本音は?」
「俺がやりたい」
コレがレオさんだよな。
「むしろ今までなんでやらなかったんですか?」
「サイアスに止められてたんだよ。『そんな己が国の武を誇示する大会なんて野蛮です!戦争の火種になったらどうするんですか⁉︎』ってな。今は逆に抑止する為だから渋々了承してたぜ」
悪い顔で笑うレオさん。サイアスさんの苦労が眼に浮かぶようだ……
「トール様、レオパルド様、コーヒーが入りました」
リリアーナ皇女がやって来た。皇女様に給仕させる俺……偉くなったもんだな。
「すみませんリリアーナ皇女様」
「いえ、私が好きでやっていますので。城と違い自由に出来て楽しいんですよ」
「そう言って頂けると幸いです」
「おう!リリアーナ、ありがとな。しかし、やっぱそうだよな〜王族ってのは肩がこっていけねぇ」
レオさんは肩が凝るような事してるのか?
「はい、しかしレオパルド様はもっとサイアス様に感謝したほうがよろしいと思いますよ」
「ガハハ、ちげぇねぇ」
そこ笑うとこなんだ……王族のブラックジョークは心臓に悪い。いや、2人ともいい人だから大丈夫だと思うんだけど、なんだかんだ王族の威圧感はあるんだよね…
「ところでレオパルド様、先ほどのお話を少し聞かせて頂いておりましたが、そのお話はスクランブルと商人ギルドへの依頼と受け取ってもよろしいですか?」
「お?おぅ………」
「でしたら当然依頼料を頂けるのですよね?」
「あ…あぁ……」
「まさか無給でやれと?場所は兎も角、材料費や建設費を出せと?」
「いや……その……」
「建設費はトール様のお力で安く出来ますが、材料費は無理ですよ。また、武道大会を開催するにあたり、大会運営に携わる人々の手配、その人件費はどうお考えですか?」
「……………」
「トール様、会場設立に必要な材料費はどれ位掛かりそうでしょうか?」
「規模にもよりますが……各来賓の席、及び出場者控え室、回覧席、軽食売り場、管理スタッフ控え室、更衣室など必要ですよね?」
「あぁ………」
土壁で作るなら安いが、武道大会では強度も必要だろう……鉄筋コンクリート造りでするなら……
「白金貨6枚くらいですかね?」
「は?」
「せっかくなので私の世界の建築様式を使い、5万人収容規模で考えると材料費で白金貨6枚ほどかと思います」
国立競技場などが2500億とか掛かるんだから6億なら激安だと思うんだけど?
「ちょ、ちょっと待て……」
「待ちません。レオパルド様、それに人件費、運営費込みで白金貨15枚で全てを請け負いましょう。如何ですか?」
「……サイアスに相談してから」
「サイアス様が許可するとでも?」
「……………」
「スクランブルや商人ギルドだけでは人手が足りませんので、このお話は冒険者ギルドへも持ち込みます。それも踏まえての提示料金です」
「……もう少しなんとか………」
「いくらならレオパルド様の裁量で動かせますか?」
「白金貨3枚……」
「話になりませんね。私どもも慈善団体ではありませんので」
「まて!分かった!白金貨10枚なんとかするから!」
「白金貨12枚です。それ以下にはなりません」
「………分かった」
「言質は頂きましたが、今書類を作成して参りますので暫しお待ち下さい」
「はい………」
そう言い残し店長室を後にするリリアーナ皇女。
「トール……リリアーナに何したらああも強かになるんだ?」
「私も知りたいですよ」
いや、マジすげーと思ったよリリアーナ皇女。何が彼女を変えたのだろうか?
「昔は皇帝の野郎より俺に話を聞きにくるような可愛い娘だったのに……」
それは人種差別する父親より、レオさんの方がマシだと思われたんだと思う。
「強いてあげるなら帝国とのいざこざが無くなったらギルドマスターの椅子をどうかと話はしましたね」
「リリアーナがギルドマスター?」
「はい、人族至上主義の撤廃を訴えると乗り気でしたよ」
商人ギルドの仕事じゃないと思うけど。
「商人ギルドでか?」
「まぁギルドが大きくなれば国への影響力は半端ないですからね。現にレオさん、今いいようにあしらわれてましたよ」
「……………トール」
「はい?」
「俺の即位中はお前さんがギルドマスターでいてくれ」
「お約束は出来かねますね」
「リリアーナ怖いんだよ」
「気持ちは分かりますが、諦めて下さい」
「くぅ〜」
暫くしてリリアーナ皇女が書類を作成して持ってきた。それによく目を通しサインするレオさん。
一応書類はよく読む事を進めた。ウチの方針からしてお客様が不利になる契約はしないはずだが、なんらかの不利益になる事が書いてないか確認する事は大事だ。
まぁレオさんには食えない商人との交渉の勉強だと思ってもらおう。
武道大会は一月後、それまでに全てをウチと商人ギルドで用意すると宣言したら、レオさんは笑顔を取り戻した。
お金は失ったが、レオさんは欲しいものを手にしたのだ。
さぁ忙しくなるぞ!




