第79話 ギルドのお仕事
「いらっしゃいませ、本日は当ギルドへどの様なご用件でしょうか」
「登録と求人をお願いしたくて、お伺い致しました」
「ありがとう御座います。では、此方のシートに必要事項をご記入の上、再度お持ちください。代筆は必要でしょうか?」
「いえ、大丈夫です」
「畏まりました。ではお願い致します」
成り行きで請け負う事になってしまった商人ギルドのギルドマスター………くっそ忙しい。
人員は国で祭事や外交を担当していた文官20名を借り受け、それぞれ受付、会計、倉庫管理、情報管理に回した。その全ての最終チェックが俺の仕事だ。
スクランブルも人員が足りてない状態だから、こちらにまわす事も出来ず日々四苦八苦している。星曜日だけは休む!と強く言った為、定休日に出来たが、週休2日にしたい所だ。
現在、王都での商店、職人の登録状況は三割と言った所だろうか?うん、上々だな。現在はまだ登録は義務じゃないので、税の収集は国が管理している。いつか完全委任されるようだが、俺の任期中には勘弁願いたい。
「トール殿、ご無沙汰しております」
声を掛けてきたのはエドガーだ。久しぶりだな。
「ご無沙汰です。エドガーさん」
「どうですか?忙しそうですな」
「えぇお陰様で、いつでも代わりますよ」
「あははは、それはご勘弁願いたい」
たわいもない挨拶を重ねる。
「で、本日はどのようなご用件でしょうか?」
「えぇ、農家を紹介して頂きたくて」
「農家を?食品の扱いを始めるのですか?」
エドガーは衣料品を主体にしている商人だが、骨董品や武器、防具など金になる物を手広く扱っていた。しかし、食品はやってなかったはずだ。
「いえ………トールさんならば話しても良いんですが、内密にお願いできますか?」
「えぇ、顧客情報を守るのも仕事ですから………」
「実は……アラクネの集落を発見したのです…」
「⁉︎」
アラクネの集落……魔王の国、魔国にしかないとされていたアラクネの集落を見つけたのか⁉︎
アラクネは希少価値の高い魔族だ。それはアテナが奴隷だった時に言われた解放の価格からも伺える。購入価格で白金貨にはなる。売却価格が10分の1だったとしても1人最低金貨10枚、日本円にして1000万円………エドガーまさか……
俺は軽くエドガーを睨む…
「か、勘違いしないでくださいね。無理矢理捕まえたりしてませんからね!」
それを聞くと俺は表情を和らげる。
そもそも、並みの冒険者ではアラクネ複数相手に無双する事は出来ない。彼女達はトラップの名手だ。
それにアラクネは女性しかいない種族の為、男性に積極的だ。種を貰うために懸命に尽くすと言われている。集落に踏み入った男性を虜にして一生涯出さない為に………
そんな集落だから外に露見しないのだった。
「トール殿が奴隷に良い感情をお持ちでないのは存じておりますから、その様な話は致しませんよ」
「別に奴隷自体は必要な物と認識していますよ。私が嫌いなのは違法奴隷です」
必要悪な奴隷を完全否定出来るほど俺は出来ていない。だが、無理矢理はダメだ。いや、そそるけどね……そそられるが、それ以上に胸糞悪くて耐えられない。
コレが何にも知らない他人ならいいとか思えないのが俺だ。自分がされて嫌な事は他人にしてはいけない。そう思う。
「話が逸れましたな。それでアラクネ達と交易をする為に食料品が必要なのですよ」
アラクネと交易か。素晴らしいな。基本集落に籠っているアラクネ達に金で交易は無理だったのだろう。エドガーが得意な衣料品はアラクネ達自ら作れるだろうし、そうすると食料品か家具類になる。家具は人とアラクネでは使い勝手が事なるだろうから、必然的に食料品になる訳か………
「なるほど……男の奴隷を買って交換とか考えなかったのですか?」
こっちの方が喜びそうな気もするんだが?
「いえ…………最初はそうしたんですよ……ですが、次に集落に着いた時に奴隷が干からびていたんですよ……いえ、死んではいませんよ。なんか幸せそうな顔してたんですが、ガリガリに痩せてました………」
あぁ〜なんか大変なんだな……
「分かりました。農家を紹介しましょう」
「ありがとうございます……しかし、良いのですか?」
「何がです?」
「私がアラクネの衣料を扱う事ですよ。スクランブルとぶつかるのを覚悟していたのですが……」
「何をおっしゃいますか、競争こそ経済を発展させる唯一の手段じゃないですか。別に私の専売特許という訳じゃありませんし、アラクネの集落を探し当てたエドガーさんの努力の成果ですよ」
「そう言って頂けると幸いです」
「それにウチのアテナは進化していまして、普通のアラクネには出せない色付きの糸で衣料品を作れます。まだまだ私に一日の長があります」
「なんと……追いつけたと思ったのですが…」
「まだまだ、とは言え、集落と交易が出来るのであればエドガーさんの方が圧倒的に在庫量を得られるでしょう。糸さえ確保出来れば、既存の服飾技術でより良い物が出来るかも知れませんね」
「えぇ、スクランブルにはない販売ルートも私にはありますから無駄にはしませんよ」
「おぉそれはうかうかして入られませんね。お互い切磋琢磨いたしましょう」
「えぇ」
「ではエドガーさん。ご紹介しますので此方へ」
そう言ってエドガーを案内して他の職員へ任せた。
いや、商人とはお互いを蹴落とすのではなく、競争しお互いを高め、時に協力し、時に戦う。そういう関係でありたいものだ。
六月から投稿を二日に一回にしたいと思います。
いえ、ネタが思い……いやいや、仕事が大事な時期に入りまして、ちょっと昇進かかってるので勉強しようと思います。
楽しみにして頂いてる方々には大変心苦しいのですが…私の昇進=ネタが増えるでもあるので、何卒ご了承ください。
筆が乗った時は連日投稿いたします。




