第77話 スライム
スライム……それは勇者殺しの魔物。
過去の勇者達がいた世界ではスライムは弱いらしいんだが、この世界のスライムは弱くない。それはCランク階層にいることからも明らかだろう。そうした勇者達の先入観からスライムに殺される勇者が多かった為にそう呼ばれるようになったらしい。
まず、スライムに物理攻撃は効かない。打撃は通じず、刺突は貫通してもノーダメージ。切り裂けば裂けるが、もともと分裂で増える生き物の為に二匹になるだけだ。ちょっと小さくはなるが、倒せる訳じゃない。
なら魔法でって過去の勇者は言ったらしい。だが考えてみろ。水、風、土は魔法と言っても物理ダメージなんだ。水で貫く、風邪で裂く、岩で潰す、そんなの効くわけがない。
凍らせて砕く事は出来るが、溶けたらまた行動したと記録にはある。
唯一、雷と炎だけがスライムを倒せる手段なんだ。電撃だと体を維持できなくなるようだ。炎は、まんま燃やし尽くせるみたいだ。
因みに、各属性耐性を持ったスライムもいる。特にヒートスライムとボルトスライムは弱点が減るのでBランクの魔物になる。会いたくねぇな。
さて現実に戻ろうか…今、俺たちは重戦士と騎士のパーティ。魔法使いはいない。火魔法、雷魔法の使い手も、道具もない………
よって……逃げる!
そう結論づけ、退却の合図をだし後ろを向くと………
「挟まれた……」
後ろにもスライムがいた……マジかよ。
「こ、国王様…」
騎士達が訴えるような目で俺を見てくる。
……仕方ないか。
「全員、転移魔道具を使用し脱出しろ!」
俺が声をかけると一斉に転移魔道具を発動し、その場を離脱した。
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〜〜トール視点〜〜
レオさんが帰ってきた。レオさんと一緒に行った兵士以外はまだ戻ってきていない。てっきり一番最後までいると思ったのに予想外だ。何かあったかな?
「トール!スライムがいるなんて聞いてないぞ!」
あ〜スライムで詰んだのか。
「そりゃCランクの魔物ですものいますよ。定番でしょ?」
「全くお前ら異世界人はあんな凶悪な魔物を軽く見やがって!」
「いやいや、この世界をゲームか何かと勘違いしたような連中と一緒にしないでください。私はスライムの特性を承知した上で採用してますからね?」
「は?」
「スライムでしたら私でも倒せますし」
「そりゃお前は雷魔法が使えるだろうが……」
「いえいえ、魔法なんて使いませんよ。私魔力少ないですし。スライムなんてこれで十分です」
そう言って俺はポケットからオイルライターを取り出し、火を付けて見せる。
「スライムって、よく燃えますよね〜」
物理無効のスライムだが、小さな種火でも引火すると凄く燃えるのだ。オイルライターに火を付けて投げ込めば一体は確実に灰にできる。
ただ……
「くれ!」
「銅貨50枚です」
「スライムなんて素材残らないんだ!大赤字じゃねぇか!」
流石レオさん。冒険者の感覚を持っていらっしゃる。Bランクからしか黒字にならないと言った理由がコレだ。
スライムを倒すのにいちいち銅貨50枚のオイルライターを使っていては赤字になる。何故なら燃え尽きて素材が残らないからだ。
スライムゼリーなんて素材はこの世界に存在しない。スライムの核なんてものもない。この世界でスライムは一銭の得にもならない魔物なのだ。
瓶に捕獲すれば燃料として優秀だけど、代わりがないわけじゃないので、そこまで高くない。また、生きている状態なので、危険もある。
因みにCランク階層の宝箱には最低銀貨10枚の魔道具が入っているが、見つけたとしても割に合わないくらいスライムに遭遇してるはずだ。
まぁちょっと助言するけど……
「松明を何本かアイテムバックに持っていくとちょっとはコスト抑えれますよ?まぁ兵士さんの訓練には向かないと思いますが」
「ん〜それでも採算が……訓練にもならんし……」
スライムは冒険者にとってよっぽど避けたい魔物なんだな〜。なんでも食べるからゴミ処理にピッタリなんだけどな〜
そうそう、このスライム達は進化も早いみたいで、オープンまでに既に何体かは進化して違う階層にいる。また、食べてきたもので進化先も違うのか進化も多種多様だ。
ストーンスライム
土耐性持ちだが、硬いくなった代わりに脆くなった。進化したのに特性が死に弱くなった変わり種スライム。石って最早スライムじゃなくないか?近類種にスチールスライムやシルバースライムなんかもいるらしい。ぜひアダマンタイトスライムを見てみたい。タングステンでもいい。
ファングスライム
獣系魔物を沢山吸収したスライム。口があり牙がある。耳と尻尾もあるが、切ってもまた生える。噛まれると痛いが溶解されるよりマシ。
リーフスライム
緑色の粘菌だな。いや、あれキノコだからちょっと違うのかな?花粉を飛ばして寄生できるらしい。怖い。胞子じゃないの?
アクアスライム
水耐性持ちスライム。だから何?って思ったが、水中で生活できるらしい。水の中でスライムに襲われたら最悪だ。
ウィンドスライム
風耐性もちスライム。どうやって進化したかは謎。浮けるらしい。
ヒートスライム、ボルトスライムはいなかった。弱点属性あって進化が難しいらしい。Aクラスの魔物にほいほい進化されても困るので、まぁいいや。
そんな感じでウチのスライムについてレオさんと話していたら他の兵士達も戻ってきた。みんな満足そうな顔をしている。
実際魔物との実践訓練なんて遠征しなきゃ出来なかった上に、ウチのダンジョンより遥かに危険度が高い。日帰りでしかも安全に訓練が出来、更に成長度が高いダンジョン。一石三鳥ならそんな顔にもなるか。
レオさんも今日は帰る事にしたらしい。ベテラン兵士さんを揃えればBランク階層にも行けるだろうし、そっちでやってほしい。
レオさんを見送り、営業に戻った。




