第64話 漆黒の人物
〜〜ヘレン視点〜〜
勇者様達がゴメスを救出に向かって暫くたった。まだ勇者様達は戻って来ない。
「ヘレンさんは、兄さんの事、好きなんですか?」
勇者様が帝国を抜けた後で召喚された勇者のカナデが聞いてきた。このカナデ、勇者様の実の妹君らしい。ご兄妹で勇者とは流石です勇者様!失礼のないようにしなくては、、
「はい、このヘレン!勇者様の事を誰よりも愛しております!」
隠す必要などない!私は勇者様を愛していることを誇っている!
「わぁーお!情熱的ですね。でも本当に兄さんでいいんですか?」
「あんな愛らしい方は他にいらっしゃらない!」
「あはは、兄さんが愛らしいかーヘレンさん変わってるとか言われません?」
いくら妹君とはいえ失礼ではないだろうか?
「私は応援しますよ。いずれは義理のお姉さんですね。私の事はカナデと呼んでください。そう言えば兄さんの事は名前で呼ばないんですか?」
「え?」
「いえ、ですから名前で……」
「そんな…私なんがが恐れ多い……」
「えぇ〜そこでヘタレちゃうんですか?いずれは結婚するんでしょ?」
「結婚…………」
あぁなんて素晴らしい響きだろう……
光悦に浸っているとクーロン・コク殿から邪魔がはいる。
「談笑に花を咲かせてる処で申し訳御座いませんが……お客様のようです…」
コク殿が示す方を見ると漆黒の衣を纏った人物が立っていた。
すると、コク殿が輝き出し、元のレジェンドヒュドラの姿になった!
「く、クーロン殿⁉︎何を⁉︎隠密活動中ですよ⁉︎」
「ま、魔物⁉︎」
あ、カナデに説明してませんでした。
「お前ら!躊躇してる余裕はねぇぞ!あれはヒトミの姉さんがかけた認識阻害魔法を無視して俺たちを見てやがる!」
赤い頭のクーロンが答える。セキだろう。確かにヒトミ殿の魔法を無視している。
漆黒の人物は此方を見ていたかと思うと、次の瞬間に消えた!
ドコーン!
刹那にセキの首が落ち轟音が響く!
「セキーー!」
ライ、コク、シキが漆黒の人物に攻撃しようとするが簡単にかわされてしまった。漆黒の人物は次にカナデに攻撃しようとするも、フウ、セイに阻まれた。
その間、ハクがセキを回復させる。流石回復力の高いヒュドラの上位種だ。心配したが大丈夫そうだ。
「ヘマしちまった」
セキが呟く。
漆黒の人物の攻撃はなおも続くが、セキの首を落とした時のような攻撃はしてこない。何か条件があるのだろうか?
「ヘレン!カナデ!」
その時勇者様が宿舎から戻ってきた。
〜〜ヒビキ視点〜〜
状況は最悪っす。Sランクの魔獣であるクーロンが見るからに押されてるんすから……少なくても攻撃してきてるあの人物はSランク冒険者以上の戦闘力を持ってるって事っす。今の俺じゃ歯が立たないと思うっす。
ガキン!
目の前に漆黒の人物がナイフを振りかざし立っていたっす。そのナイフをヒトミさんが爪で防いでくれてたっす。
やべー全然みえなかったっすよ……
ヒトミさんが漆黒の人物を蹴り飛ばし追撃をする為駆け出した!漆黒の人物も迎え撃つ!
嘘だろ………ヒトミさんと打ち合えるとか人間じゃねぇっす!
勿論肉眼じゃ見えねぇっす。あれ、ドラゴン○ールの戦闘シーンみたいに轟音だけが響いてるっす。
「勇者様!」
ヘレンとカナデが駆け寄ってくるっす。
「あいつ、何者っすか⁈」
あんな奴が帝国にいるなんて知らなかったっすよ。勇者召喚とかいらなかったんじゃないすか?
「わからないです。しかし、先程まではまだ肉眼で見れる動きでした。見えない動きは最初だけで……」
ふむ、何か条件があるのかも知れないっすね…
ドコーン!
轟音が響く。
流石に幾度となく響く轟音に宿舎から兵が出てきたっす。ヒトミさんのヒュノプスもこの轟音には勝てなかったっすね。いや、むしろ今までよくもったっす。
兵がゾロゾロと出てくると、何故か漆黒の人物は動きを止めたっす。
「舐めておるのか?」
ヒトミさんの鋭い一撃が漆黒の人物を捉えたっす!
しかし、その攻撃を漆黒の人物は半身捻ってかわすと静かに闇に紛れ消えていったっす。
増援が来たのに何故?身内にも正体をあかせない暗部なのか……はたまた別の組織の人間なのか………
「まつのじゃ!」
「ヒトミさん!今は撤退が先っす!」
漆黒の人物を追おうとするヒトミさんを制止し、逃げる事を伝えたっす。これ以上騒ぎになるのは避けた方がいいっす。
「くっ」
渋るヒトミさんに頼み再度魔法で気配を消し、掘った穴から外に出てスクランブルへ転移するっす。
この世界に来て二度目の命の危機だったっす。
一度目の命の危機はシルヴァさんに初めてあった時っす。




