第6話 王都に到着
一悶着あったが、なんと日暮れ前に王都に到着した。イヴは俺のポケットに居る。
「止まれ。王都になにようだ?」
兵士の格好をした人に呼び止められる。門番かな?
「行商でヴニアの街からここ王都に向かう途中に賊に襲われました。主人だった者を殺されたて次は私達の番という所に、グリズリーに襲われてたこの方が来て、賊達はグリズリーに殺されました。私達は法に乗っ取り、残ったこの方を主人としてグリズリーの撃退に成功し、今に至ります」
イリムが説明する。
「話に矛盾はないが…何か証拠はないだろうか?それでは君が賊でない保証がない」
そうだよな…それだけ聞いたら俺が賊の一味で、奴隷を奪って街に売りに来たって見られても仕方ないよな。でも証拠か…
「ご主人様、グリズリーの死体があるよ」
おっ!成る程!
俺はアイテムポーチからグリズリーの死体を取り出す
真っ二つのグリズリーが目の前に出現した。
「なんだ!真っ二つじゃないか!どんな倒し方をしたんだ!」
門番さんが驚いてる。
「私達が真っ向から挑んでもグリズリーには勝てませんから、そこのアラクネの糸をトラップに用いました。まさか真っ二つになるなんて私達も驚いています。それだけグリズリーの突進が強力だったという事です」
うん、下手に嘘つくより正直に喋っちゃった方が矛盾なくていいよね。
門番さんが黙って何か考えている。
「他に外傷が見当たらないから大勢で囲って倒した後切り裂いたとかもないんだろうな…そもそも並の武器じゃ切り裂けないか…鋸で切断したにしても切り口が綺麗すぎる…はぁ本当みたいだな…いささか信じられないが…」
なんとか信じて貰えそうだな。
「行商人は奴隷商の様で持ち物はある程度私が貰い受けましたがよろしかったですか?」
「構わない。それが法律だ。そうじゃなければ誰も賊退治などしなくなるだろう」
各人が賊退治を率先してやるようにする為の処置だったのか。成る程なぁ〜
「ありがとうございます。あと奴隷商の馬車が徒歩で5時間ほどの場所にあります。確認していただければ」
「分かった。今日は今から行っても日が暮れてしまうから明日確認する者を出す」
「了解しました」
「悪いが身分証になる物はあるか?」
「それが、グリズリーから逃げるのに必死で手荷物を捨ててしまったので…この娘達は奴隷だったのでありません」
流石に異世界から来ました。とか言えないよな。逆に疑わしい。
「そうか…じゃコッチに名前を書いてくれ」
紙を渡される。和紙の様な柔らかそうな紙だ。羊皮紙ではないんだな。
「イリム頼むよ」
「はい」
実験したが俺はこの世界の文字が書けない。そして読めない。会話は出来るのに…商売やるなら致命的じゃないか?俺外国語とか苦手だったから覚える自信ないぞ…
が、幸いイリムが読み書きが出来た。この世界の識字率は3人に1人くらいだそうだ。人族は殆どできて、魔族はあまり出来ないそうだ。特にゴブリンやオークなど知能が低い連中は出来ないのが当たり前らしい。俺ゴブリンと一緒か…
書き終えて門番さんに紙を渡す。
「トールと言うのか…よし、通っていいぞ」
「ありがとうございました。あ!良ければ宿を紹介して頂けませんか?魔族の奴隷でも部屋に入れてくれる所がいいのですが」
「王都は魔族差別はないのだが…個々人は別か、奴隷なら尚更外に出すのが一般的なのかもな…だと、ここから真っ直ぐ行くとライカンスロープって宿がある。コボルトやケットシーを雇ってる宿だから大丈夫だろ」
「ありがとうございます」
ライカンスロープか…狼男の事だよな確か。この世界の亜人事情は複雑でよく分からないなぁ。魔族だけど。
因みにケットシーやコボルトと獣人の違いは主に顔だ。獣人は人に近い顔で耳や尻尾があるのに対して、ケットシーやコボルトはまんま二足歩行の猫と犬だ。王都に来る途中にコボルトがいたから聞いてた。
しばらくして二階建ての宿が見えて来た。コレが門番さんが言ってた宿だろう。
「こんにちは」
「いらっしゃいませニャ」
ケットシーが出迎えてくれる
「四名で一人はアラクネだけど大丈夫?」
「大きい部屋なら大丈夫ですニャ。今は空いていますから運がいいですニャ」
「奴隷でも?」
「私も奴隷ですから問題ないですニャ。ここの御主人はお優しいのニャ」
ほぉ。気が合いそうだな。
「じゃ大部屋でコッチの女性達を、俺を一人部屋で一泊お願いします」
「畏まりましたニャ。食事はどうするニャ?」
「四人分お願いするよ」
「承りましたニャ。では全部で銀貨3枚と銅貨90枚ニャ」
「金貨でもいい?」
「お釣りがないから遠慮してほしいニャ…」
ケットシーが困った様に言う。そりゃ100万円渡されたら俺でも困る。銀貨あるかな?
アイテムポーチに銀貨4枚をイメージして取り出す。よかったあった。
「なんとかあったよ」
「銀貨4枚お預かりしたニャ銅貨10枚お釣りニャでは、部屋にご案内するニャ」
ケットシーの案内でまず大部屋に向かう。
「一緒の部屋でもよかったんだよご主人様?」
アテナがニヤニヤしながら言ってくる。
「バカ!アテナ、主人殿にその気がないないいじゃないか。挑発するな!」
リリスが焦ってる
「早いか遅いかですよリリス」
イリムは冷静だ、
「まだ会ったばかりだから、そんな気になれないよ。それにそんな気になっても強要はしないって言ったろ?信じてくれよリリス」
「し、しかし、今主人殿がそう言っていても、その時強要されれば私達は逆らえないから…」
「そりゃ心配か〜ん〜でも信じて貰うしかないかな?」
「そうですね。契約書など作成しても、守らなければ意味はないですからね。奴隷との契約を破っても罪に問われないですから」
「僕は気にしないから使ってくれていいよ?」
「だから、今はそんな気ないって。そんな気分になった時はアテナにお願いするよ」
膝から上はあるから、出来るっちゃ出来ちゃうんだよな。
「了解したよ!」
「私も今は主人殿を信じよう」
落ち着いてイリム達が部屋に入るのを見送る。
「ご飯の時間に呼びに来ますニャ」
続いて俺は一人部屋に案内される。まぁイヴがいるから話相手には困らないんだけど…
ポケットからイヴを出しテーブルに置く
「なんかスゲー色々あったけど、まだ一日もたってないんだよな…」
「そうなのですか?端末の情報によるとマスターは異世界からいらっしゃったんですね?」
「そうだぞ。いきなりグリズリーとか襲われて、奴隷を三人も連れてく事になって、更にダンジョンマスターになっちまったよ」
「申し訳ございません」
「せめてないから謝るなよ。此れから宜しくな」
「こちらこそお願い致します。それで、この端末のお陰で、マスターの世界の道具も作る事が出来そうです」
「マジか⁉︎でも、そんなにデータ入ってないだろ?」
「履歴と言うのですか?履歴を遡ってマスターが過去に調べた物は大抵分かります。端末にデータが残ってなくとも、そこは私もダンジョンコアですから。ちなみにマスターの性癖も分かりますよ」
「は、恥ずかいのでやめてください!」
やべ…イヴに頭上がらないじゃないかコレ…
「イリムさん達がマスターと関係を持ったらコッソリアドバイスするつもりです」
画面に(笑)ってでてるぞチクショー
暫くイヴと話したらケットシーがご飯を知らせに来たので向かう事にした。
ご飯が終わったら明日のことを話して寝るか…